ホーム > 民法総則 >  > 住所・不在者

住所・不在者

このページの最終更新日 2016年1月13日

▼ 住所・居所・仮住所

● 住所―生活の本拠

法律上、住所は、一定の効果と結びついている。たとえば、不在・失踪の標準(25条・30条)や弁済の場所(484条)、相続開始の場所(883条)は住所である。また、住所は、裁判管轄を決定する標準ともなる(民事訴訟法4条など)。

民法上、各人の生活の本拠がその者の住所であるとされている(22条)。生活の本拠は、各人の生活関係の中心となる場所であって、本籍地や住民登録地とは必ずしも一致しない(実質主義)。

民法上の住所の概念は、私法関係だけでなく、公法関係にも一般的に妥当する。住所の概念が問題になるのは、むしろ公法的な法律関係においてである。判例には、公職選挙法上の住所や農地法上の住所について問題となったものがある(最大判昭29.10.20―茨城大学星嶺寮事件、最判昭26.12.21)。

〔参考〕住所の概念をめぐる問題

(1) 定住の意思の要否

まず、住所を認定するのに、定住の事実が客観的に存在すれば足りるか(客観説)、それとも、それに加えて定住の意思が必要か(主観説)という問題がある。学説においては、外部から認識しにくい意思を要件とすると取引の安全を害するという理由で客観説が有力である。判例は、住所かどうかを客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かによって判断する傾向にある(たとえば、最判平9.8.25)。

(2) 住所の数

次に、人の住所は一つに限られるか(単一説)、それとも複数認めうるか(複数説)という問題がある。同一人であっても生活関係に応じて住所が異なることを認める複数説が支配的見解である。しかし、判例は、その人の全生活の中心が住所であるとし、生活場面ごとに住所を分けて認定することを認めない(最判昭35.3.22―公職選挙法上の住所に関するもの。現在、選挙権を有する者の選挙区は、住民基本台帳(住民票)をもとに作成される永久選挙人名簿によって決定される。)。もっとも、単一説の建前をとりながら、実質的には複数説に近い判断をしているとの指摘もある。

〔参考〕法人の住所  法人の住所は、その主たる事務所または本店の所在地である(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律4条、会社法4条など)。自然人の住所と異なり、法人の住所は一義的に法定されている。

● 居所―住所の補完

民法は、①住所が知れない場合(住所がない、または不明の場合)や、②日本に住所を有しない場合に、居所を住所とみなすと規定する(23条)。居所とは、多少の期間継続して居住するが、生活との関連が住所というほどには密接でないような場所をいう。

〔参考〕法例や遺言の方式の準拠法に関する法律によって準拠法の決定基準が当事者の住所とされている場合には(住所地法主義)、居所ではなく外国の住所が基準となる(23条2項但書)。

● 仮住所―住所の仮設

当事者は、取引をする際に、便宜上、住所以外の場所を基準地として選定することができる。これを仮住所と言う。仮住所は、その取引関係においては住所とみなされる(24条)。

▼ 不在者の財産管理

住所の効果の一つとして、不在者の財産管理に関する制度がある。

従来の住所または居所を離れて容易に帰ってくる見込みがない者を不在者と言う。長期間海外に滞在したり、行方不明になったりした者がその例である。不在者が財産を管理する者を置いておらず、また不在者に法定代理人もいないような場合に、不在者がそれまでの住所・居所に残していった財産をどのように管理するかが問題となる。

これに対する措置として、家庭裁判所が不在者の財産管理に関与するための制度が設けられている(25条~29条、家事審判規則31条以下)。

(1) 財産管理人の選任

不在者が管理人を置いていないときや、不在者が置いた管理人(委任管理人)の権限が消滅したときは、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずる(25条1項)。具体的には、財産管理人の選任をする。家庭裁判所が選任する管理人(選任管理人)は、法定代理人である。

命令後に本人が管理人を置いたり、死亡したりしたときなどは、家庭裁判所は、管理人等の請求により命令を取り消さなければならない(同条2項、家事審判規則37条)。

(2) 選任管理人の監督

選任管理人は、不在者の財産に関して民法103条に規定する行為(財産の保存・利用・改良)のほか、それを超える行為が必要なときには、家庭裁判所の許可を得てその行為をすることができる(28条前段)。

選任管理人と不在者との関係は委任に準じるが(家事審判法16条)、家庭裁判所の監督に服する(27条1項3項・29条)。

(3) 不在者が生死不明の場合の委任管理人の監督・改任

不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が不明であるときは、本人による監督ができないため、家庭裁判所による関与が必要になる。この場合、委任管理人は選任管理人とほぼ同様の監督に服する(27条2項3項・28条後段・29条)。

また、家庭裁判所は、利害関係人等の請求により、管理人を改任することもできる(26条)。

問題演習(国家試験過去問題)

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 債務者Aがその財産の管理人を置かないで行方不明になった場合において、家庭裁判所は、Aの債権者Bの請求により、Aの財産の管理について必要な処分を命ずることができる。(司法平22-2-ア改)正

(2) 家庭裁判所が選任した不在者の財産の管理人は、不在者を被告とする土地明渡請求訴訟の第一審において不在者が敗訴した場合、家庭裁判所の許可を得ないで控訴をすることができる。(司法平26-3-ウ)正

 正解

(1) 正  (2) 正

民法総則のカテゴリー

法人法律行為意思表示代理無効と取消し条件と期限期間時効

コメント

 ご意見・ご感想は、掲示板をご利用ください。

サイト内検索

条文・判例リンク

スポンサードリンク

更新情報(Twitter)