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制限行為能力者の相手方の保護

このページの最終更新日 2016年1月12日

▼ 制限行為能力者と相手方の利害調整

行為能力の制限を理由とする取消しは、取引の相手方の主観的態様(知・不知や不注意の有無)にかかわらず認められる。そして、制限行為能力者は、取引が自己に有利と考えたときはそのまま行為の効果を主張し、不利と考えたときには取り消して無効を主張することができる。このように、制限行為能力者制度によって制限行為能力者の財産は強力な法的保護を受けられるが、その反面、取引をした相手方が一方的な犠牲を強いられることになる。

取り消すことができる行為の相手方を保護するための一般的な制度としては、法定追認(125条)や取消権の行使期間の制限(126条)がある。しかし、これだけでは相手方保護のための方策として不十分である。

そこで、民法は、制限行為能力者保護と相手方保護との調整を図るため、①制限行為能力者の相手方の催告権(20条)と、②制限行為能力者が詐術を用いた場合の取消権の否認(21条)という二つの制度を設けている。

 取消し

▼ 制限行為能力者の相手方の催告権(20条)

● 相手方の不安定な地位を解消するための手段

制限行為能力者が保護者の同意なしに単独でした行為は、一応は有効であるが、制限行為能力者側から取り消されるとはじめにさかのぼって無効になる。したがって、その行為を取り消すことができる間は、法律関係は不確定な状態のままである。そして、制限行為能力者と取引をした相手方にとっては、いつ制限行為能力者側から行為を取り消されるかわからないのであるから、法律関係が定まらず不安定な地位に置かれることになる。

そこで、民法は、制限行為能力者の相手方がその不安定な地位を解消するための手段として、相手方に催告権というイニシアチブを与えている(20条)。

● 催告の効果―法律関係の早期確定

制限行為能力者の相手方は、制限行為能力者側に対して、1か月以上の期間を定めて、取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答するように催告することができる(20条)。

相手方が指定した期間内に制限行為能力者側からの返答があった場合は、法律関係はそのとおりに確定する。だが、返答がなかった場合には、20条に定める基準にしたがって追認または取消しがなされたものとみなされる。このように、催告によって法律関係を早期に確定することができる。

 取消し

● 催告の相手方と催告の効果

相手方の催告に対して制限行為能力者側からの返答がない場合における効果は、次のように、誰に対する催告であるかなどによって異なる。

(1) 単独で追認することができる者に対して催告した場合

行為能力を回復した本人や、②制限行為能力者の法定代理人保佐人または補助人に対して催告して期間内にこれらの者が確答を発しなかった場合には、行為を追認したものとみなされる(20条1項・2項)。なお、本人の行為能力が回復した後にその保護者であった者に対して催告しても、その催告は無効である。

(2) 単独で追認することができない者に対して催告した場合

③「特別の方式を要する行為」(法定代理人が単独で同意を与えることができない行為、864条参照)について期間内に方式を具備した旨の通知を発しない場合や、④被保佐人または被補助人に対して追認を得るように催告して期間内に追認を得た旨の通知を発しない場合には、行為を取り消したものとみなされる(20条3項・4項)。なお、未成年者や成年被後見人に対して催告することはできない(98条の2参照)。

催告の相手方 返答がなかったときの効果
単独で追認することができる者(上述①②の場合) 追認したものとみなされる(20条1項・2項)。
単独で追認することができない者(上述③④の場合) 取り消したものとみなされる(同条3項・4項)。

▼ 詐術を用いた制限行為能力者の取消権の否認(21条)

制限行為能力者が取引の相手方を騙して自らが行為能力者であると相手方に誤信させたような場合にまで、制限行為能力者を保護する必要はない。それゆえ、民法は、行為の際に詐術さじゅつを用いた制限行為能力者はその行為を取り消すことができないと規定している(21条)。

本条適用の要件は、次のとおりである。

① 行為能力者であることを信じさせるためであること

② 詐術を用いたこと

③ 相手方が詐術によって行為能力者であると誤信したこと

(1) 行為能力者であることを信じさせるためであること

自らが行為能力者であると相手方に信じさせようとした場合だけでなく、保護者(法定代理人など)の同意を得たと信じさせようとした場合にも本条が適用される(大判大12.8.2)。

(2) 詐術を用いたこと

本条にいう「詐術」とは、年齢を証明する書類を偽造してそれを提示するなど積極的に術策を弄する場合だけにかぎらず、制限行為能力者が自らを行為能力者である(あるいは、制限行為能力者ではない)と相手方に誤信させるような発言をする場合を含む(大判昭8.1.31―「自分は相当の資産信用を有するので安心して取引してほしい」旨の陳述は、自らが能力者(行為能力者)であると言うのと異ならないから、詐術を用いた場合に該当する)。

単なる黙秘は詐術にあたらない。しかし、判例は、無能力者(制限行為能力者)であることを黙秘していた場合であっても、それが無能力者の他の言動とあいまって、相手方を誤信させ、または誤信を強めたときは詐術にあたるとする(最判昭44.2.13―単に準禁治産者であることを黙秘していた場合は詐術にあたらない)。

(3) 相手方が詐術によって行為能力者であると誤信したこと

詐術の結果として相手方が誤信するにいたったことが必要である。相手方の誤信を惹起させた場合だけでなく、誤信を強めた場合をも含む(上掲最判昭44.2.13)。

相手方が制限行為能力者であると知っていた場合には、相手方保護の必要がないので、本条は適用されない。したがって、この場合には、詐術を用いた制限行為能力者であっても自らがした行為を取り消すことができる。

 取消し

問題演習(国家試験過去問題)

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 1.選択問題

Aは、Bとの間で、B所有の不動産を代金1000万円で購入する旨の契約を締結した。この事例に関する次のアからエまでの各記述のうち、誤っているものはどれか。

ア.Aが契約時に未成年であった場合、Aが成年に達した後、BがAに対して1か月の期間内にAの行為を追認するか否かを確答すべきことを催告し、Aがこの期間内に確答を発しなかったときは、Aの行為を追認したものとみなされる。

イ.Aが被保佐人であった場合、BがAに対して1か月の期間内にAの保佐人Cの追認を得るように催告し、Aがこの期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、Aの行為を取り消したものとみなされる。

ウ.Aが本人Cを無権代理して契約を締結した場合、BがCに対し、相当の期間を定めて、その期間内にAの行為を追認するか否かを確答すべきことを催告し、Cがこの期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされる。

エ.Aが成年被後見人であった場合、BがAの成年後見人Cに対して1か月の期間内にAの行為を追認するか否かを確答すべきことを催告し、Cがこの期間内に確答を発しなかったときは、Aの行為を取り消したものとみなされる。

 1.ア  2.イ  3.ウ  4.エ  5.誤っているものはない

(平成19年司法試験短答式民事系第3問)

 2.正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 被保佐人が取り消すことができる行為を行った場合、その相手方は、被保佐人に対して、保佐人の追認を得るべき旨の催告をすることができるが、保佐人に直接追認するか否かの回答を求める催告をすることはできない。(司法平20-3-5)

(2) 行為能力の制限を理由に取り消すことができる行為について、制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者となった後、その者に対し、1か月以上の期間を定めて、その期間内に追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、その場合に、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなされる。(司法平25-3-1)

(3) 被保佐人の締結した契約について、相手方が被保佐人に対して1か月以上の期間を定めて、保佐人の追認を得るべき旨の催告をしたにもかかわらず、被保佐人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、以後、その相手方は被保佐人が締結した契約であることを理由に契約を取り消されることはない。(司法平22-4-ア)

(4) 制限行為能力者の行為を追認するかどうかの催告に対し、法定代理人が定められた期間内に追認拒絶の通知を発し、期間経過後に到達した場合、追認したものとみなされる。(司法平23-2-イ)

 正解

1.4

2.(1) 誤  (2) 正  (3) 誤  (4) 誤

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