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制限行為能力者制度

このページの最終更新日 2017年5月7日

【目次】

制限行為能力者制度とは

〔解説:成年後見制度〕

〔参考:制限行為能力者であることを理由とする制限〕

制限行為能力者の種類

【表:制限行為能力者の種類】

制限行為能力者制度の限界

〔考察:日常生活に関する行為〕

問題演習

コメント

▼ 制限行為能力者制度とは

制限行為能力者制度は、年齢および判断力の程度を基準として、画一的に一定範囲の者の行為能力(取引を行う資格)を制限する制度である。行為能力を制限された者を制限行為能力者と呼ぶ。

制限行為能力者であるとされた者は、行為能力が制限された範囲内において自己の判断で取引を行うことができない。そこで、その者の利益を図るために保護者が付けられる。

保護者は、制限行為能力者自らがする取引に助力し、あるいは、制限行為能力者を代理して取引を行う。そして、制限行為能力者が保護者の関与なしに単独で取引した場合には、保護者にはその取引の効力を否定する権限(取消権)が与えられる。

制限行為能力者制度の目的は、①取引上の判断能力が不十分な者のために適切な取引が行われるようにして、その者の財産の減少を防止すること、および、②取引の相手方の警戒・予防を容易にすることよって取引の安全を図ることにある。

〔解説〕成年後見制度

行為能力に関する制度は、精神上の障害(知的障害・精神障害・認知症など)がある者の支援というより広い枠組みの一環として捉え直すことができる。そのような枠組み全体を指して成年後見制度と呼ぶ。

成年後見制度は、行為能力の制限にとどまらず、法定代理や任意後見契約に関する制度をも含む。

また、成年後見制度は単なる未成年者を対象としないが、精神上の障害のある未成年者であれば支援の対象となりうる。

〔参考〕制限行為能力者であることを理由とする資格制限

次にかかげるような特定の職業や営業においては、制限行為能力者(とくに成年被後見人および被保佐人)であることが欠格事由として法定されている。

 専門的資格を必要とする職業(弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士、弁理士、医師、歯科医師、薬剤師、社会福祉士、教員など)

 免許・登録を要する営業(風俗営業、古物営業、警備業、一般労働者派遣業、薬局など)

 株式会社の取締役や監査役(会社法331条1項2号・335条1項)、一般社団法人等の役員(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律65条1項2号)

かつて成年被後見人に関しては選挙権・被選挙権がないとされていたが、平成25年の公職選挙法改正により、選挙権・被選挙権を有することになった。なお、運転免許に関して制限行為能力者であることを理由とする制限はない。

関連事項

・行為能力とはなにかについて  意思能力と行為能力

・制限行為能力者の相手方の保護について  制限行為能力者の相手方の保護

・精神上の障害ある者を保護するための民法上の制度  成年後見制度

▼ 制限行為能力者の種類

民法は、制限行為能力者の種類として、未成年者成年被後見人被保佐人および被補助人の4つの類型を定めている。

各々の類型ごとに想定される判断能力の程度が異なっており、それに応じて行為能力が制限される範囲にも広狭がある。

なお、被補助人は、必ずしも行為能力を制限されるとはかぎらない。(補助人の同意を要する旨の審判を受けた場合だけにかぎられる。17条1項。)

制限行為能力者の種類を表にして比較すると、次のようになる。

【表】制限行為能力者の種類

  未成年者 成年被後見人 被保佐人 被補助人
要件 20歳未満の者(4条参照) 精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある者(7条) 精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分である者(11条) 精神上の障害により事理弁識能力が不十分である者(15条)
能力の範囲 特定の行為以外は単独でできない(5条・6条) 日常生活に関する行為を除くすべての財産行為ができない(9条) 13条1項所定の行為だけ単独でできない(13条) 同意権付与の審判を受けた行為だけ単独でできない(17条)
保護者 法定代理人(親権者または未成年後見人) 成年後見人 保佐人 補助人
保護者の権限 同意権・代理権・取消権 代理権・取消権 同意権・取消権、付加的に代理権 同意権・取消権または代理権

関連事項

・未成年者についての解説  未成年者

・成年被後見人についての解説  成年被後見人

・被保佐人についての解説  被保佐人

・被補助人についての解説  被補助人

▼ 制限行為能力者制度の限界

制限行為能力者制度については、以下のような問題点のあることが指摘されている。

① 行為能力規定は身分行為に適用されない

婚姻や遺言などのような身分上の行為については、できるかぎり本人の意思を尊重すべきである。したがって、身分行為については、一般に行為能力の規定は適用されず、制限行為能力者であっても、意思能力があるかぎり、単独で有効に行うことができる。

たとえば、成年被後見人の婚姻には成年後見人の同意が不要であるとされ(738条)、また、未成年者や成年被後見人は単独で認知することができるとされている(780条)。そのほかにも、家族法(民法第4編・第5編)において民法総則の行為能力規定とは異なった内容の規定が置かれている(例、遺言に関する961条・962条)。

② 取引の安全を害する蓋然性が大きい

制限行為能力者を行為能力者であると信じて取引をした相手方は、たとえそう誤信したことについて不注意がなかった場合であっても保護されない。制限行為能力者制度は、制限行為能力者を保護するために取引の安全を擬制にするものである。

相手方に催告権を与えること(20条)や制限行為能力者が詐術を用いた場合に取消不可能とすること(21条)で取引の安全にもある程度は配慮しているが、決して十分であるとは言えない。

〔考察〕日常生活に関する行為

取引の性質上、行為能力の有無を問題にすべきではない場合がある。

取引のなかには、電車・バスの利用やコンビニでの商品購入などのように、利用購入者の行為能力を事前に調査することが困難であったり、事業者側から行為能力の制限を理由に取引を拒絶されると日常生活の遂行に支障をきたしたりするようなものも存在する。

このような日常生活のために必要な取引に関しては、行為能力を制限することが弱者を保護することにならない。

そこで、民法は、自己決定の尊重という理由にもとづき、日用品の購入その他日常生活に関する行為について成年被後見人などの行為能力を認めている(9条但書・13条1項但書)。

③ 積極的に財産を得ることを支援するものではない

制限行為能力者制度は、判断能力の不十分な者が財産を失うことを防止するものにすぎず、財産を持たない者を積極的に支援するものではない。

それについては、たとえば、制限行為能力者の労働条件を保護するために社会法による規制を設けるなど、制限行為能力者制度とは別の政策的な措置を講じる必要がある。(未成年者につき労働基準法56条以下参照)。

関連事項

・身分行為について  法律行為とは

・制限行為能力者の相手方の保護について  制限行為能力者の相手方の保護

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 未成年者は、遺言をすることができない。(司法平22-1-エ)

(2) 成年被後見人が認知をする場合、成年後見人の同意は不要である。(司法平24-1-イ)

(3) 成年被後見人がした遺言は、成年後見人が取り消すことができる。(司法平26-1-イ)

 正解

(1) 誤  (2) 正  (3) 誤

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