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失踪宣告

このページの最終更新日 2016年1月14日

▼ 失踪宣告とは

不在者の生死が不明である場合、その者の元の住所を中心とする法律関係はどうなるか。生死不明であるかぎり不在者を生存しているものとして扱うとなると、その者をめぐる法律関係が一向に進展しない。いつまで経ってもその者についての相続が開始しなかったりするが、これは残された関係者にとっては不都合な事態である。

そこで、民法は、不在者の生死不明の状態が一定期間継続した場合に、家庭裁判所の宣告によってその者を死亡したものとみなす制度を設けている(30条~32条)。この宣告を失踪宣告と言う。

〔参考〕認定死亡  失踪宣告と類似した制度として、戸籍上の制度であるが、認定死亡がある。水難・火災などの事変があった場合において、死体が発見されたなどの確証はないが、周囲の状況からみて死亡が確実視されるときは、その取調べにあたった官公署が死亡と認定して市町村長に報告する(戸籍法89条参照)。これによって戸籍上、したがって実際上も、死亡したものとして扱われる。

▼ 普通失踪と特別失踪

● 失踪宣告の要件

家庭裁判所は、不在者の生死不明の状態が一定期間継続した場合に、利害関係人からの請求にもとづいて、公示催告の手続きを経た後に失踪の宣告をする(民法30条、家事審判規則39条)。

(1) 失踪期間

失踪宣告の要件として、ふつうの場合は生死不明の状態が7年間継続することが必要である(30条1項)。この場合を普通失踪と呼ぶ。

しかし、戦地に臨んだり、沈没した船舶に乗っていたりした場合のように、死亡する確率が非常に高い危難に遭遇した場合には、生死不明の期間は危難が去った後から1年でよい(同条2項)。死亡の蓋然性が大きいので、比較的短い期間で足りるとしたのである。この場合を特別失踪または危難失踪と呼ぶ。

(2) 請求権者

家庭裁判所の失踪宣告は、利害関係人からの請求を待ってなされる(30条1項)。ここに利害関係人とは、失踪宣告を求めるにつき法律上の利害関係を有する者である(大決昭7.7.26)。不在者の配偶者や推定相続人、生命保険金の受取人などがこれにあたる。なお、検察官は請求権者に含まれない。

● 失踪宣告の効果

(1) 死亡擬制

失踪宣告を受けた不在者(失踪者)は死亡したものとみなされ、その結果、婚姻の解消や相続の開始、保険金請求権の発生などといった死亡にともなう効果が発生する。

死亡とみなされる時点は、普通失踪の場合は失踪期間満了時、すなわち、生死不明の状態が7年経過した時点である。これに対して、特別失踪の場合は、危難が去った時(失踪期間起算時)に死亡したものとみなされる(31条)。

(2) 失踪者が生存していた場合

失踪宣告は、従来の住所を中心とする法律関係につき死亡を犠牲するものにすぎない。したがって、もし失踪者がどこかで生存していたとしても、失踪宣告によって失踪者本人の権利能力が消滅するわけではなく、失踪者が別の住所においてした法律行為は有効である。

しかし、失踪者が元の住所・居所に帰ってきたとしても、当然には失踪宣告の効力は消滅しない。元の住所を中心とする権利義務関係を復元するためには、失踪宣告の取消しが必要である。

● 普通失踪と特別失踪の比較

以上述べたように、失踪宣告には普通失踪の場合と特別失踪(危難失踪)の場合との2種類があって、それぞれ要件および効果が異なる。両場合における要件・効果の違いを表にしてまとめると、次のとおりである。

  普通失踪 特別失踪(危難失踪)

要件(失踪期間)

生死不明の状態が7年間継続 危難が去った後1年間生死不明

効果(死亡擬制時)

失踪期間満了時に死亡したと擬制 危難が去った時点で死亡したと擬制

▼ 失踪宣告の取消し

● 失踪宣告の取消しの効果

失踪者が生存していたとき、あるいは、死亡と擬制された時期と異なる時期に死亡していたことが判明したときは、本人または利害関係人は、家庭裁判所に対して失踪宣告の取消しを請求することができる(32条1項前段)。

(1) 失踪宣告の取消しの遡及効とその例外

失踪宣告の取消しがなされると、失踪宣告による効果、すなわち失踪者の死亡にともなう効果ははじめから生じなかったことになる(遡及効)。しかしそれでは、失踪宣告を前提として利害関係に入った者が不測の損害を被ることになるので、失踪宣告の取消しは宣告後・取消し前に「善意でした行為」の効力には影響しないと定められている(同項後段)。

たとえば、不在者Aについて失踪宣告がなされてBがAの不動産を相続した後に、Bが第三者Cにその不動産を譲渡した場合を考えてみる。その後Aについての失踪宣告の取消しがなされると、AからBへの相続も生じなかったことになるから、Bは不動産については無権利者であり、また、Cへの所有権移転も生じなかったことになる。しかし、BC間の不動産譲渡が「善意でした行為」であったときには、その譲渡行為は失踪宣告の取消し後も効力を有する。

(2) 「善意でした行為」の意味

「善意でした行為」の意味が問題になるが、この点に関して判例は、その行為が契約であるときは当事者双方(上例のBC)が善意であることが必要であるとする(大判昭13.2.7)。これに対して学説では、取引の安全を図る観点から、契約の相手方(上例のC)が善意であればよいとする見解が有力である。

いずれにしろ、失踪宣告を直接の原因として権利を取得した者(上例のB)が善意であるだけでは、契約当事者は当然には保護されない。直接の取得者は、失踪宣告に対する信頼にもとづいて権利を取得したわけではないからである。

● 現存利益の返還

(1) 返還義務

失踪宣告を直接の原因として財産を取得した者(相続人や保険金受取人など。直接取得者からの転得者は含まれない。)は、失踪宣告の取消しがあると、その取得した財産(相続財産や保険金)を不当利得として返還しなければならない(703条・704条)。ただし、その返還義務の範囲は、現に利益を受ける限度に限られる(32条2項但書)。

「現に利益を受ける限度」とは、利益が残っている範囲でという意味である。利益がもとの形のままで残っている場合だけでなく、その価値が形を変えて残っている場合をも含む。たとえば、得た金銭を生活費として支弁していた場合は、それによって本来の財産からの支出を免れたことになるから、利益は残存していると言える。「利益の存する限度」(現存利益)という表現もこれと同じ意味である(703条参照)。

 取消し

(2) 32条2項の位置づけ

通説は、32条2項は703条と同じことを規定したにすぎず、直接取得者(受益者)が悪意の場合には704条が適用されるとする(悪意者排除説)。もし32条2項に悪意者が含まれるとすれば、同規定は703条・704条の一般原則に対する特別規定という位置づけになる。

● 民法32条1項後段の身分行為への適用

失踪宣告を受けた者Aの配偶者Bが失踪宣告後(死亡による婚姻解消後)に第三者Cと再婚していた場合、その失踪宣告が取り消されると婚姻をめぐる法律関係、とくにBC間の婚姻関係はどうなるか。

① 民法32条1項後段の適用を肯定する説

身分行為の場合にも32条1項後段の適用を肯定して、BC双方が善意であるかぎり、宣告取消しによってもAB間の婚姻(前婚)は復活せず、BC間の婚姻(後婚)は有効のままであると解する説である。BかCの少なくとも一方が悪意であった場合には、同規定は適用されず、前婚復活により重婚状態が生じ、後婚についての取消原因となる(732条・744条)。(前婚についても離婚原因となりうる。770条1項5号参照)

② 常に後婚を有効とする説

身分行為について32条1項後段の適用を否定する見解である。当事者の意思を尊重して、宣告取消しによっても前婚は復活せず、常に後婚は有効であるとする。

問題演習(国家試験過去問題)

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 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(掲載予定)

 正解

(掲載予定)

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