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意思能力と行為能力

このページの最終更新日 2017年5月6日

【目次】

判断力が不十分な者を保護する制度

意思能力とは

1 意義

2 意思無能力による無効の法理

行為能力とは

1 意義

〔考察:意思能力と行為能力との関係〕

2 行為能力制度の必要性

問題演習

コメント

▼ 判断力が不十分な者を保護する制度

すべての個人(自然人)は、平等に権利能力を有し、権利を取得したり、義務を負担したりすることができる。

しかし、個人が実際に経済活動をする局面では、すべての個人を法的に全く平等に取り扱ってよいというわけにはいかない。子供や精神的な障害のある者のように、取引行為を行うための十分な判断能力を有しない者も現実にいるのであり、そのような弱者を保護するための法的な配慮が必要になるからである。

民法は、取引行為の効力が維持される(有効である)ための条件として、その行為について行為者に十分な判断力があることを要求する。そして、判断力の不十分な者がした取引行為の効力を否定することによって、そのような弱者を(取引から生じる義務に拘束されないという意味で)消極的に保護している。意思能力と行為能力という二つの制度がそれである。

意思能力行為能力は、ともに判断力が不十分な者を保護するための制度であるが、個人の判断力の有無を決定するしかたがそれぞれ異なる。

意思能力においては、事案・行為ごとに個別具体的に判断力の有無を見定める。

これに対して、行為能力においては、個別の事案とは切り離して、年齢や審判の有無といった形式的な基準によって画一的に取引をする資格を制限する。

関連事項

・権利能力の平等について  権利能力

▼ 意思能力とは

1 意義

人が自らのした行為によって法的に拘束されるのは、その行為が自らの自由な意思決定にもとづくものであることを根拠とする。

そして、自由な意思決定にもとづく行為であると評価するための前提として、行為者に自らの行為の結果を判断することができるだけの精神的能力が備わっていることが要求される。

この、自らがした行為の結果を判断することができる精神的能力のことを意思能力と呼ぶ。(一般には、7歳から10歳くらいの精神的能力であると言われている。)

意思能力があるか否かは、個別の事案ごとに具体的に判断される。

通常の状態では正常な判断力がある者でも、飲酒や薬物の服用によって意思能力を欠くような状況が生じることがありうる。

2 意思無能力による無効の法理

意思能力を欠く者(意思無能力者)がした取引行為(法律行為)は無効である(大判明38.5.11)。

意思無能力による無効は、民法にその旨の規定は存在しないが、私的自治の原則(人は、自らの自由な意思によらなければ法的に拘束されることはない)の帰結として解釈上認められているものである。

意思無能力者保護の観点から、取引をした意思無能力者以外の者がこの無効を主張することはできないと解されている(取消的無効)。

関連事項

・法律行為とはなにかついて  法律行為とは

・取消的無効について  無効

▼ 行為能力とは

1 意義

人は、生まれてから数年の間はまだ判断能力がなく、心身が成長するにつれて判断能力が身についていく。そして、およそ取引行為を行うに足りる判断能力が備わる時期は人によって差がある。

けれども、民法は、そのような個人差を考慮することなく、判断能力がある者とない者とを一定の年齢(20歳)を基準に一律に分け、その年齢に達しない者(未成年者)について単独で取引行為をすることができる能力なしい資格を制限している(4条・5条)。

この、単独で完全に有効な取引行為(法律行為)をすることができる能力ないし資格のことを行為能力と呼ぶ。また、未成年者のように、行為能力が制限された者を制限行為能力者と呼ぶ。

制限行為能力者には、未成年者のほかに、成年被後見人、被保佐人、被補助人がある。これらの者は、家庭裁判所の審判によって定められる(8条・12条・16条)。

このように民法は、年齢や家庭裁判所の審判といった形式的な基準によって一定範囲の者を定め、それらの者の行為能力を制限する。

もっとも、制限行為能力者の種類によって行為能力の制限の程度に差がある。

〔考察〕意思能力と行為能力との関係

行為能力制度の保護対象には、幼児のように意思能力が認められない者だけでなく、成年に近い未成年者のように一般に意思能力は認められるが判断能力が不十分である者も含まれる。

また、精神上の障害によって意思能力を欠くか、そのおそれがある者であっても、家庭裁判所の審判を受けないかぎり行為能力が制限されることはない。

このように、意思能力と行為能力とでは、それぞれの制度によって保護される対象範囲に違いがある。

関連事項

・未成年者について  未成年者

・制限行為能力者制度について  制限行為能力者制度

2 行為能力制度の必要性

行為能力ないし制限行為能力者という制度が必要とされる理由として、一般に次の二点が挙げられる。

① 意思無能力者の保護(証明責任の軽減)

意思能力を欠く行為を無効とすることによって意思無能力者を保護することができるが、行為当時に意思能力がなかったことは、それを主張する者(行為者ないし表意者)が証明しなければならない。

しかし、行為をした後になって、実は行為当時に自分には意思能力がなかったことを主張したいと思っても、その事実を証明するのは決して容易なことではない。

そこで、個々の行為ごとに判断力の有無を決める方法ではなく、あらかじめ判断力が不十分な者を画一的に定めておき、それらの者がした行為の効力を一律に否定するという方法によって容易に保護することができるような制度が要請される。

② 取引の安全の確保

一度取引が成立した後になって行為者に意思能力がなかったと判断されるとその取引は無効となるのであるから、取引の相手方は不測の損害を被るおそれがある。(このように、取引の相手方を不安定な状態に置くことを、「取引の安全を害する」と表現する。)

そこで、取引を単独で行う資格がない者を画一的に定めておき、相手方がそれを容易に知りうるような方法を用意しておくことが必要となる。

それによって、取引の相手方に警戒を促すことができ、相手方は後日に取引の効力を否定されないように保護者の同意を得るなどの予防措置を講ずることができるようになる。

関連事項

・制限行為能力者制度について  制限行為能力者制度

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 意思能力が欠けた状態で契約を締結した者は、後見開始の審判を受けていなくても、その契約の無効を主張することができる。(司法平25-2-ア)

 正解

(1) 正

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