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成年被後見人

このページの最終更新日 2016年1月11日

【目次】

後見開始の審判

〔参考:市町村長申立て〕

成年被後見人の行為能力

成年被後見人の保護者

成年後見人/成年後見人の権限と義務

後見開始の審判の取消し

問題演習

コメント

▼ 後見開始の審判

家庭裁判所による後見開始の審判を受けた者を、成年被後見人と言う(8条)。

(1) 審判の要件

後見開始の審判は、認知症・知的障害・精神障害などの精神上の障害により事理を弁識する能力(判断能力)を欠く常況にある者について、一定の者が家庭裁判所に請求することによって行われる(7条)。未成年者も、審判の対象となる(同条の申立人を参照)。

事理弁識能力を欠くとは、具体的には、日常の買い物すら1人でできないような精神的状態である。「常況」、つまり通常そのような状態であるということであるから、ときどき判断能力を回復するようなことがあっても、判断能力を欠いている状態が通常であるような場合には審判を行ってよい。

7条の法文上は「審判をすることができる」と規定されているが、審判の要件が備わっているかぎり、家庭裁判所は必ず審判をしなければならないと解されている。

関連事項

(2) 審判の申立人

後見開始の審判の申立人は、本人(意思能力を回復しているとき)、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人または検察官である(7条)。

〔参考〕市町村長申立て

市町村長も後見開始の審判の申立てをすることができる(老人福祉法32条、知的障害者福祉法28条、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律51条の11の2)。保佐開始の審判および補助開始の審判の申立てに関しても同様である。

(3) 審判相互の関係

後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人または被補助人であったときは、家庭裁判所は、その本人にかかる保佐開始の審判または補助開始の審判を取り消さなければならない(19条1項)。

関連事項

(4) 成年後見の登記

後見開始の審判がなされると、法務局の後見登記等ファイルに記録する方法で登記される(後見登記等に関する法律4条)。

関連事項

▼ 成年被後見人の行為能力

(1) 原則

成年被後見人が法律行為(取引)をした場合、つねに取り消すことができる(9条本文)。たとえ保護者(成年後見人)の同意を得て行為した場合であっても同様である。成年被後見人は、判断能力を欠く常況にあるので、保護者の同意どおりに行動することを期待できないからである。取り消すことができる者(取消権者)は、成年被後見人本人(とその承継人)および成年後見人である(120条1項)。

関連事項

(2) 例外

例外的に、日用品の購入などの日常生活に関する行為については、成年被後見人であっても行為能力を有する(9条但書)。つまり、成年被後見人が法律行為の時点で意思無能力でないかぎり、完全に有効な法律行為となる。これは、自己決定の尊重を理由とする。

身分行為についても、意思能力を回復した状態であれば、成年被後見人が単独で行うことができる。婚姻、協議離婚、認知、遺言などに関して規定がある(738条・764条・780条・962条など)。これは、本人の意思を尊重すべきであるという理由による。

▼ 成年被後見人の保護者

1 成年後見人

成年被後見人には、その保護者として法定代理人である成年後見人が付けられる(8条)。家庭裁判所は、職権で成年後見人を選任する(843条)。成年後見人は複数人選任することができ、法人(信託銀行など)も成年後見人になることができる(同条参照)。

家庭裁判所は、必要があると認めるときは、一定の者(成年被後見人、親族、成年後見人)の請求により、または職権で、後見監督人を選任することができる(849条)。

関連事項

2 成年後見人の権限と義務

(1) 成年後見人の権限

成年後見人は、次のような権限を有する。なお、前述したように、成年後見人は同意権を有しない。

① 成年被後見人を代理して財産上の法律行為をする権限(代理権)(859条1項)

② 成年被後見人のした法律行為を取り消す権限(取消権)および追認する権限(追認権)(9条・120条1項)

成年後見人は包括的な代理権を有するが、居住用不動産の処分(売却、賃貸、抵当権の設定など)をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない(859条の3)。本人の生活に与える影響が大きいからである。この規定は、保佐・補助の場合にも準用される(876条の5・876条の10)。

関連事項

(2) 身上配慮義務

成年後見人は、その事務を行うにあたって、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況(身上)に配慮すべき義務を負う(858条)。

▼ 後見開始の審判の取消し

民法7条に定める原因(精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にあること)がなくなった場合、家庭裁判所は、一定の者(本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、検察官)の請求にもとづいて後見開始の審判を取り消さなければならない(10条)。

保佐開始の審判または補助開始の審判がなされた場合にも、後見開始の審判は取り消される(19条2項)。

関連事項

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 未成年後見人が選任されている未成年者については、後見開始の審判をして成年後見人を付することはできない。(司法平18-20-3)

(2) 成年被後見人が建物の贈与を受けた場合、成年被後見人は、当該贈与契約を取り消すことができない。(司法平18-20-1)

(3) 成年被後見人が日常生活に関する行為以外の法律行為を行った場合、あらかじめ当該法律行為について成年後見人の同意を得ていたときでも、成年被後見人は、当該法律行為を取り消すことができる。(司法平18-20-2)

(4) 成年被後見人が、後見人の同意を得ずに電気料金を支払った行為は、取り消すことができない。(司法平20-3-2)

(5) 契約を締結した成年者がその後に後見開始の審判を受けたとき、成年後見人は、その契約の当時、既にその成年者につき後見開始の事由が存在していたことを証明して、その成年者のした契約を取り消すことができる。(司法平24-2-2)

(6) 成年被後見人が日常生活に関する行為をすることができる場合、成年後見人は、成年被後見人の日常生活に関する法律行為について成年被後見人を代理することはできない。(司法平26-3-イ)

(7) 成年後見人は、成年被後見人の意思を尊重しなければならないが、成年被後見人の財産に関する法律行為を代理するに当たって、成年被後見人の意思に反した場合であっても、無権代理とはならない。(司法平23-4-ア)

(8) 被補助人について後見開始の審判をする場合、家庭裁判所は、その者に係る補助開始の審判を取り消さずに後見開始の審判をすることができる。(司法平24-1-エ)

 正解

(1) 誤  (2) 誤  (3) 正  (4) 正  (5) 誤  (6) 誤  (7) 正

(8) 誤

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