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権利能力

このページの最終更新日 2017年5月5日

【目次】

権利能力とは

1 意義

〔参考:民法上の「人」〕

2 権利能力平等の原則

自然人の権利能力

1 権利能力の始期

2 胎児の権利能力

3 権利能力の終期

〔参考:認定死亡〕

外国人の権利能力

同時死亡の推定

問題演習

コメント

▼ 権利能力とは

1 意義

権利能力とは、権利・義務の主体となることができる資格を言う。「権利」能力というが、義務を負担する能力をも含んでいる。

民法は社会生活を権利・義務の関係としてとらえるから、権利の主体となることができなければ取引を主体的に行うことができない。取引の世界に参加するためには、権利能力という資格が必要である。

人間は権利能力を有するので取引に参加することができる。しかし、人間以外の動物は権利能力を有しないので取引に参加することはできない。(どんなにかわいいペットであっても、その法的地位は「物」である。)

権利能力は、個人(自然人)に対して認められるだけでなく、一定の団体に対して与えられることもある。団体(法人)の権利能力は「法人格」と呼ばれることもある。

〔参考〕民法上の「人」

民法上「人」という語が用いられるときは、自然人だけでなく法人を含む意味であることが多い。たとえば、「代理人・本人」(99条)、「保証人」(446条1項)、「譲渡人」(467条1項)など。

もっとも、民法第1編第2章の標題「人」や、「相続人」(第5編)のように、自然人だけを指す意味で用いられることもある。

関連事項

・自然人以外の権利の主体について  法人とは

・物とはなにかについて  民法上の物

2 権利能力平等の原則

個人は、すべて平等に完全な権利能力を有する。すなわち、年齢や性別、身分、知的能力のいかんにかかわらず、すべての個人はあらゆる権利の主体となることができる。このことを権利能力平等の原則と呼ぶ。

この原則は、民法には明確に規定されていない。しかし、民法3条1項が「私権の享有は、出生に始まる」と規定していることから、民法はこの原則を当然の前提としているものと解される。

▼ 自然人の権利能力

1 権利能力の始期

法律学では、生身の人間(個人)のことを自然人と呼ぶ。

自然人の権利能力の始期は出生である。すなわち、自然人は、出生と同時に権利能力を取得する。民法はこのことを、「私権の享有は、出生に始まる」と表現している(3条1項)。

(1) 出生の時期

いかなる事実をもって出生とするかという問題がある。

民法上、胎児が母体から全部露出した時をもって出生であると解されている(全部露出説)。(これに対して、刑法上の判例・通説は、胎児が母体から一部でも露出した時点で人となると解する。)

(2) 出生の届出

出生があったときは、その事実を14日以内に市町村長に届け出なければならない(戸籍法49条)。

もっとも、出生の届出がなされなかったとしても、胎児が出生によって権利能力を取得することに変わりはない。

出生の事実は、ふつう戸籍の記載によって証明される。しかし、戸籍の記載と異なる事実を主張・立証することも可能である(大判大11.1.16)。

2 胎児の権利能力

人は出生によって権利能力を取得するのであるから、まだ生まれてくる前の胎児には権利能力が認められないのが原則である。

そうすると、たとえば、父親の死亡する前に生まれた胎児は、父親の死亡によって相続が開始する(882条参照)前にすでに権利の主体として存在しているので、父親の財産を相続することができる(887条1項)。

しかし、父親の死亡後に生まれた胎児は、相続開始の時点では権利の主体として存在していないため、父親を相続することができない。

(1) 「生まれたものとみなす」規定

このように、権利能力の始期の原則(3条1項)にしたがうかぎり、胎児は生まれてくる時期が少し早いか遅いかによって相続できたり相続できなかったりすることがある。

しかし、出生の時期が早かったか遅かったかというのは、偶然そうであるにすぎない。そのような偶然の事情によって、権利を取得できるかどうかが左右されるのは不合理である。

相続にかぎらず、不法行為による損害賠償請求や遺贈についても同様の不合理が生じうる。

そこで、民法は、不法行為による損害賠償請求相続遺贈に関して、胎児はすでに生まれたものとみなすという規定を置いている(721条・886条・965条)。このような出生の擬制によって、出生前の胎児であっても、出生後の胎児と同様にその利益が保護されることなる。

もっとも、胎児が死産したときには、これらの規定は適用されない(886条2項)。

(2) 「既に生まれたものとみなす」の意味

「既に生まれたものとみなす」の具体的な意味については争いがある。

① 停止条件説(人格遡及説)

胎児は、胎児である間はまだ権利能力がなく、生きて生まれたときにはじめて相続開始や不法行為の時点にまで遡って権利能力が認められると解する説である。

判例は、この考え方に立つ(大判昭7.10.6―阪神電鉄事件)。

この説に立つと、生まれる前の胎児はまだ権利の主体ではないのであるから、胎児に代理人をつけることはできないことになる(前掲大判昭7.10.6)。

② 解除条件説(制限人格説・人格消滅説)

胎児である間でも問題となる法律関係に関するかぎりにおいて権利能力が認められるが、胎児が死んで生まれたときには権利能力がはじめからなかったことになると解する説である。登記実務の立場である。

この説に立つと、生まれる前の胎児であっても権利の主体となることができるので、胎児に代理人をつけることが可能となる。

この説は、胎児の権利を保全するためにも、法定代理人を置くべきであると主張する。もっとも、現行法上、胎児のための法定代理を認める規定は存在しない。

関連事項

・代理とはなにかについて解説  代理とは

・停止条件と解除条件について  条件とは

3 権利能力の終期

自然人の権利能力の終期は死亡である。すなわち、自然人の権利能力は、死亡と同時に消滅する。そして、自然人は、死亡以外の原因によって権利能力を失うことはない。

民法上、人の死亡には、一定の効果が結び付けられている。最も重要な効果は、相続の開始である(882条)。そのほかの効果として、婚姻関係が終了したり、契約関係が終了したり(599条・653条等)する。

人が死亡したときは、その事実を知った時から7日以内に市町村長に届け出なければならない(戸籍法86条)。戸籍に死亡が記載されても、それと異なる事実(死亡日時が異なるなど)が証明されたときには、法律関係はその事実にもとづいて処理される。

なお、失踪宣告を受けた者は死亡したものとみなされる(31条)。

〔参考〕認定死亡

死亡の届出をするには、診断書または検案書を添えて提出しなければならない(戸籍法86条2項)。しかし、水難や火災などに遭って死亡したことは確実視されるが死体が見つからないような場合には、これらの書類を提出することができない。

このような場合には、事変の取調べをした官公署が死亡地の市町村長に死亡の報告をすることになっており(同法89条)、それによって戸籍に死亡の記載がなされる。これを認定死亡と呼ぶ。

認定死亡による戸籍の記載は死亡の事実を証明するものとなりうるが(最判昭28.4.23)、それと異なる事実を主張・立証することも可能である。

関連事項

・失踪宣告制度について解説  失踪宣告

▼ 外国人の権利能力

外国人とは、日本の国籍を有しない者のことを指し、無国籍者を含む。

外国人も原則として日本国民と同様に権利能力を有するが、法令または条約による禁止・制限が認められている(3条2項)。

法令による制限の例として、土地所有権(外国人土地法1条)、日本の船舶の所有権(船舶法1条)、日本の航空機の所有権(航空法4条)、鉱業権(鉱業法17条)、国または公共団体に対する損害賠償請求権(国家賠償法6条)、特許権(特許法25条)、著作権(著作権法6条)などがある。

条約による制限の例は、まだ存在しない。

関連事項

・外国法人について  法人とは

▼ 同時死亡の推定

複数人が続けて死亡した場合、その死亡の時期の先後関係が後の法律関係に大きな影響を与えることがある。

たとえば、資産家Aとその子Bが同じ災難に遭遇して両者ともに死亡したという事例を考えると、AとBのいずれが先に死亡したかによって相続関係が異なってくる。

AがBより先に死んだ場合には、まずAの財産が子Bに相続された後に、Bの死亡によりBの配偶者などの相続人に(Aの財産がBを介して)相続される(890条)。

それとは逆に、BがAより先に死亡した場合には、もしAにB以外の子がいればその者はAの財産を相続することができるが(887条1項)、Bの配偶者はAの財産を手に入れることができなくなる。

もしAとBの死亡の時期の先後関係が明らかにできないとなると、死亡後の法律関係を確定することが不可能になり、相続をめぐる紛争を解決することができない。その結果、事実上、相続財産を先に占有した者が利益を得ることになる。なぜなら、占有の正当性を肯定することはできないが、逆に正当性を否定することもできないからである。

そこで、民法は、数人の者が死亡した場合においてこれらの死亡の時期の先後関係が明らかでないときには、これらの者は同時に死亡したものと推定することとした(32条の2)。同時に死亡した者どうしは、互いに相続人にはならず、それらの者の間の遺贈も効力を生じない(887条・994条参照)。

上述の事例では、BはAを相続することができないから、Aの財産はBの配偶者の手には渡らないことになる。

同時死亡の推定は、あくまで推定にすぎないのであるから、死亡の先後関係を証明することによってこれをくつがえすことができる。

また、この推定は、飛行機事故のように数人が同一の原因によって死亡した場合だけにかぎられず、まったく別の場所で別の原因によって死亡したような場合であっても適用される。

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(掲載予定)

 正解

(掲載予定)

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