ホーム > 民法総則 >  > 被保佐人


被保佐人

このページの最終更新日 2016年1月11日

【目次】

保佐開始の審判

〔参考:「審判をすることができる」の意味〕〔参考:市町村長申立て〕

被保佐人の行為能力

民法13条/保佐人の同意を要する行為(13条1項各号)

被保佐人の保護者

保佐人/保佐人の権限と義務

保佐開始の審判の取消し

問題演習

コメント

▼ 保佐開始の審判

家庭裁判所による保佐開始の審判を受けた者を、被保佐人という(12条)。

(1) 審判の要件

保佐開始の審判は、精神上の障害により事理弁識能力(判断能力)が著しく不十分である者について、一定の者が家庭裁判所に請求することによって行われる(11条本文)。

事理弁識能力が「著しく不十分である」とは、日常の買い物程度は単独で行うことができるが、民法13条1項に列挙されているような重要な取引については単独で適切に行うことができないような精神状態をいう。補助開始の審判における要件との違いは、補助の場合には単に「不十分である」と定められている点にある。

なお、7条に規定されている原因がある者(精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある者)については、保佐開始の審判をすることができない(11条但書)。

〔参考〕「審判をすることができる」の意味

民法11条は「審判をすることができる」と規定するが、文言どおり裁量的な意味(必ずしもしなくてよい)であるのか、それとも必要的な意味(要件を満たすかぎり必ずしなければならない)であるのかについて議論がある。判例は、旧11条(準禁治産宣告)に関してであるが、必要的な意味であると解する。補助開始の審判ついても、保佐と同じように「審判をすることができる」(15条1項本文)と定められているので、同様の問題が生じうる。

関連事項

(2) 審判の申立人

保佐開始の審判の申立人は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人(未成年後見人・成年後見人)、後見監督人(未成年後見監督人・成年後見監督人)、補助人、補助監督人または検察官である(11条本文)。

〔参考〕市町村長申立て

市町村長も保佐開始の審判の申立てをすることができる(老人福祉法32条、知的障害者福祉法28条、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律51条の11の2)。後見開始の審判および補助開始の審判の申立てに関しても同様である。

(3) 審判相互の関係

保佐開始の審判をする場合において、本人が成年被後見人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人にかかる後見開始の審判または補助開始の審判を取り消さなければならない(19条2項)。

関連事項

(4) 保佐の登記

保佐開始の事実は、法務局の後見登記等ファイルに記録する方法で登記される(後見登記等に関する法律4条)。

関連事項

▼ 被保佐人の行為能力

1 民法13条

被保佐人が一定の財産行為をするには、保佐人の同意を得なければならない。民法13条1項の各号が保佐人の同意を必要とする行為を定める。保佐人の同意を要する行為の範囲は、家庭裁判所の審判によって13条1項所定以外の行為にまで拡大することができる(同条2項本文)。

被保佐人の行為能力の制限は広範囲にわたるが、成年被後見人の場合とは異なり、被保佐人が保佐人の同意を得たうえで自ら法律行為をすることを前提としている。それゆえ、保佐人には当然には代理権が与えられていない(876条の4参照)。

被保佐人が保佐人の同意(またはこれに代わる家庭裁判所の許可)を得ずにこれらの行為をした場合、その行為を取り消すことができる(同条4項)。取消しできる者(取消権者)は、被保佐人(その承継人)および保佐人である(120条1項)。

なお、成年被後見人と同様に、日常生活に関する行為については、被保佐人が保佐人の同意なしに単独ですることができる(13条1項但書・2項但書)。自己決定の尊重を理由とする。

関連事項

2 保佐人の同意を要する行為(13条1項各号)

民法13条1項が列挙する行為は、次のとおりである。

① 元本の領収または利用(1号)

元本とは、使用の対価として収益を生じる財産をいう。預金や貸金、不動産の賃貸などがこれにあたる。なお、9号参照。

② 借財または保証(2号)

時効完成後に債務を承認することは、新たに債務を負担するに等しい行為であるから、「借財」にあたる(大判大8.5.12)。

③ 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為(3号)

有価証券(株式など)の売買は、これに含まれる。

④ 訴訟行為(4号)

相手方が提起した訴えに対して応訴する(被告になる)場合には、保佐人の同意を要しない(民事訴訟法32条1項)。

⑤ 贈与、和解または仲裁合意(5号)

贈与を受けることは、不利益にならないので、これにあたらない。

⑥ 相続の承認・放棄または遺産分割(6号)

⑦ 贈与の申込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申込みの承諾または負担付遺贈の承認(7号)

⑧ 新築、改築、増築または大修繕をする契約(8号)

⑨ 602条に定める期間を超える賃貸借(9号)

反対解釈すると、602条に定める期間内の賃貸借であれば、同意は不要である。この意味で、9号は1号の例外規定である。

▼ 被保佐人の保護者

1 保佐人

被保佐人には、保護者として、保佐人が付けられる(12条)。保佐人の選任は、家庭裁判所が職権で行い、後見と同様に複数人選任することができ、法人も保佐人になることができる(876条の2第1項・第2項)。

家庭裁判所は、必要があると認めるときは、一定の者(被保佐人、親族、保佐人)の請求により、または職権で、保佐監督人を選任することができる(876条の3第1項)。

2 保佐人の権限と義務

(1) 保佐人の権限

保佐人は、次のような権限を有する。なお、保佐人は、当然には代理権を有しない。

① 被保佐人が13条1項所定の法律行為を行う場合に同意を与える権限(同意権)(同条1項2項)

② 被保佐人が保佐人の同意を得ずにした法律行為を取り消す権限(取消権)および追認する権限(追認権)(13条4項・120条1項・122条)

③ 特定の法律行為について被保佐人を代理する権限(代理権)(876条の4)

家庭裁判所は、一定の者(11条本文に規定する者、保佐人、保佐監督人)の請求により、特定の法律行為(13条1項所定の行為に限らない。)について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる(876条の4第1項)。被保佐人本人以外の者の請求によりこの審判をする場合には、自己決定の尊重のため、本人の同意が必要とされる(同条2項)。

関連事項

(2) 同意に代わる許可

保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる(13条3項)。

(3) 身上配慮義務

保佐人は、保佐の事務を行うにあたり、被保佐人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態および生活の状況に配慮すべき義務を負う(876条の5第1項)。

▼ 保佐開始の審判の取消し

民法11条本文に定める原因(精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分であること)がなくなった場合、家庭裁判所は、一定の者(本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、検察官)の請求にもとづいて保佐開始の審判を取り消さなければならない(14条1項)。

13条2項(同意権の拡張)の審判の全部または一部だけを取り消すこともできる(14条2項)。

後見開始の審判または補助開始の審判がなされた場合にも、保佐開始の審判は取り消される(19条)。

関連事項

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 被保佐人は、保証契約を締結する前にその行為をすることについて保佐人の同意を得たときは、自己の判断でその保証契約の締結を取りやめることはできない。(司法平25-2-エ)

(2) 被保佐人が、保佐人の同意を得ずに、貸付金の弁済を受けた行為は、取り消すことができる。(司法平20-3-3)

(3) 被保佐人が、貸金返還請求の訴えを提起するには保佐人の同意を要するが、被保佐人を被告として提起された貸金返還請求訴訟に応訴するには保佐人の同意は要しない。(司法平18-20-4)

(4) 被保佐人が保佐人の同意を得ることを要する行為をその同意を得ないでした場合には、保佐人は、その行為を追認することはできるが、その行為を取り消すことはできない。(司法平21-1-4)

(5) 保佐人の同意を得なければならない行為について、被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず保佐人が同意をしないとき、被保佐人は、家庭裁判所に対し、保佐人の同意に代わる許可を請求することができる。(司法平24-1-ウ)

(6) 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。(司法平26-1-エ)

(7) 被保佐人と契約を締結しようとする者は、家庭裁判所に対し、利害関係人として、被保佐人に十分な判断能力があることを理由に保佐開始の審判の取消しを請求することができる。(司法平25-2-オ)

 正解

(1) 誤  (2) 正  (3) 正  (4) 誤  (5) 正  (6) 正  (7) 誤

▼ コメント

 このページの内容に関するご質問やご指摘などをご自由に書き込むことができます。また、掲示板のほうにも、本サイトへのご意見・ご要望をぜひお寄せください。

コメントをお書きください

コメント: 1
  • #1

    追加 (日曜日, 10 1月 2016 09:59)

    平成11年改正による変更点
    ・(11条関連)保佐開始の審判(準禁治産宣告)の対象から「浪費者」を除外。
    ・(13条関連)1項3号の「重要な動産」を「重要な財産」に変更(有価証券も含まれるようになる)、6号に「遺産の分割」を追加。
    ・(120条関連)1項に同意権者を追加(従来議論のあった保佐人の取消権が明文化された)。
    ・(876条の4)保佐人に対する代理権付与が認められるようになった。

サイト内検索

サイト内検索

スポンサードリンク