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代理行為

このページの最終更新日 2016年2月14日

【目次】

顕名

1 顕名主義の原則

〔参考:商事代理における特則〕

2 顕名の方法

3 顕名がない場合

〔参考:民法100条と商法504条の違い〕

代理行為の瑕疵

1 民法101条の内容

2 代理行為と詐欺・強迫

【図:代理行為と詐欺】

代理人の能力

代理行為の効果

問題演習

コメント

▼ 顕名

1 顕名主義の原則

代理人が本人のためにする法律行為を代理行為と言う。

代理人が相手方との間で代理行為をするとき、たとえ代理人が本人に効果を帰属させる意思(代理意思)を有していたとしても、それを表示しなければ、相手方としては法律行為の行為者(代理人)を当事者であると認識するのがふつうである。

そこで、そうした誤解を防ぐために、民法は、法律行為の効果を本人に帰属させるための要件として、代理人が「本人のためにすることを示して」意思表示することを要求している(99条1項)。これを顕名主義と言う。

本人のためにすることを示す必要があるのは、代理行為としての意思表示をする者である。能働代理においては代理人であるが、受動代理においては相手方である(同条2項)。

〔参考〕商事代理における特則

民法上、顕名主義が原則とされているが、商行為の代理(商事代理)においては顕名主義がとられていない。すなわち、代理人が本人のためにすることを示さないで行為しても、その効果が本人に帰属する(商法504条本文)。もっとも、相手方が代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、相手方は代理人に対して履行の請求をすることもできる(同条但書)。

関連事項

2 顕名の方法

顕名、すなわち、本人の代理として意思表示することを示すための方法は種々ある。

(1) 代理人である旨の表示

顕名の方法のなかでも明確なのは、「A代理人B」または「A会社代表取締役B」という肩書を相手方に対して表示することである。

また、代理人である旨を明示しなくても、意思表示全体を解釈して代理人としての行為であると認めることができるのであれば、顕名の要件を満たすものと解されている(大判明40.3.27―「押野鉱山出張所主任」の肩書)。

(2) 署名代理

実際の社会生活においては、代理人が自己の名を示さずに、契約書などに本人の氏名だけを記すことが広く行われている。これを署名代理と呼ぶ。たとえば、親権者が契約者欄に子である未成年者の名義を記載することがこれに当たる。

署名代理においては、本人の氏名が相手方に対して表示されているので、相手方が法律行為の効果の帰属主体を誤るというおそれはない。しかし、代理行為である旨の表示がない以上、相手方において行為者である代理人を契約者に記された本人であると誤認したのであれば、そのことが相手方の期待に反する結果になるということも十分ありうる。

そのため、署名代理を顕名の方法として認める範囲が問題となるが、一般に、親権者が意思能力のない未成年者の名義で取引すること(大判大9.4.27)や、代表者が会社名だけを記して取引することは、顕名の要件を満たすものと考えられている。

関連事項

3 顕名がない場合

(1) 原則

顕名がなければ、相手方は法律行為の行為者(代理人)が当事者となると考えるのがふつうである。そこで、相手方の信頼を保護するために、代理人が本人のためにすることを示さずにした意思表示は代理人自身のためにしたものとみなされる(100条本文)。

代理人は法律行為の効果の帰属主体を代理人自身ではなく本人であると認識しているとすると、代理人の意思表示は効果帰属主体に関する錯誤によるものと言うこともできる。しかし、民法100条が代理人自身の行為であると擬制しているので、代理人が錯誤による無効(95条)を主張することは許されない。

(2) 例外

ただし、相手方において代理人が本人のために意思表示することを知り、または知ることができたときには、例外的に本人に効果が帰属する(同条但書)。このような場合にまで、代理人の犠牲において相手方の信頼を保護する必要がないからである。

この場合、代理の効果を主張する者(本人または代理人)が相手方の悪意または有過失についての主張・証明責任を負う。

〔参考〕民法100条と商法504条の違い

民法100条と商行為の代理に関する商法504条とを比べると、原則(顕名主義)と例外(非顕名主義)が逆になっている。実体法的には同じ内容を規定したにすぎないように見えるが、訴訟法的に見ると相手方の知不知・過失の有無の証明責任が逆になるという相違がある。すなわち、民法100条の場合には相手方の悪意または有過失の証明責任を負うのは代理の効果を主張する側であるのに対して、商法504条の場合には相手方が善意かつ無過失であることの証明責任を負う。

関連事項

▼ 代理行為の瑕疵

1 民法101条の内容

一般に、意思表示(法律行為)の効力は、意思の不存在・詐欺・強迫や、善意・悪意、過失の有無によって影響を受ける。そして、代理行為も法律行為であるから、これらの事実(瑕疵)の影響を受けることになる。問題となるのは、誰を基準にそれらの事実の有無を判断するかである。民法101条がこの問題について規定する。

(1) 原則

代理において法律行為をするのは代理人であるから、意思表示の効力に影響を与える事実の有無は、原則として代理人について判断する(101条1項)。

たとえば、代理人が要素の錯誤にもとづいて意思表示をした場合には、代理行為は無効となる。重過失の有無も代理人について判断する。これに対して、本人が錯誤に陥っていた場合には、それは代理人ではなく本人の事情であるから、代理行為の効力には影響がない。ただし、その錯誤が相手方の詐欺によるものであったときは問題である(後述)。

(2) 例外

代理人が本人の指図にしたがって委託された法律行為をした場合は、本人は、自ら知っていた事情または過失によって知らなかった事情について、代理人がその事情を知らなかったという事実を主張することができない(101条2項)。

たとえば、本人が特定の家屋の購入を代理人に委託した場合において、本人がその家屋に瑕疵があることを事前に知っていたのであれば、たとえ代理人がそのことについて善意・無過失であったとしても、本人は相手方(売主)に対して瑕疵担保責任(570条)を追及することはできない。

2 代理行為と詐欺・強迫

(1) 相手方による詐欺

代理人の意思表示が相手方の詐欺(または強迫)によるものであった場合(下図の①)、代理人がした意思表示は詐欺(強迫)を理由として取り消すことができる(96条1項)。ただし、その取消権は本人が取得するのであって、代理人が自らがした意思表示を取り消すには、取消権行使について権限を有していることが必要である。(代理人独自の取消権はない。)

本人の代理権の授与行為が相手方の詐欺によるものであった場合(下図の②)、まず代理権授与行為を取り消すことが考えられるが、代理人が善意であるために(96条2項参照)それができないときはどうなるか。

民法101条の規定にしたがうと、代理人の意思表示には瑕疵がないのであるから代理行為は有効であり、相手方は本人に対してその権利を主張することができることになる。しかし、このようなケースは相手方と代理人との間の通謀によることが多いであろうから、本人の犠牲のもとに相手方を保護するのは不当である。信義則上、相手方は本人に対して代理行為の有効性を主張することはできないと考えるべきであろう。

(2) 代理人による詐欺

代理人が相手方に対して詐欺を行った場合(下図の③)において、判例は、101条1項を適用することによって、本人の知・不知を問わず、相手方は行為を取り消すことができるとする(大判明39.3.31)。

また、本人が代理人に騙されて代理人を介して契約を締結した場合(下図の④)は、第三者による詐欺(96条2項)として扱われ、相手方が詐欺の事実を知っているときにだけ本人は契約を取り消すことができるとしている(最判昭47.9.7)。

(3) 本人による詐欺

本人の相手方に対する詐欺の結果として代理人と相手方との間で代理行為が行われた場合(下図の⑤)、形式的には第三者詐欺(96条2項)であるから、代理人が詐欺の事実を知らないときには、相手方は行為を取り消すことができないことになる。しかし、それでは詐欺をはたらいた本人が保護されることになり不当である。

このような場合には、代理人と本人とを一体として捉えて96条2項を適用せず、相手方は代理人の知・不知にかかわらず行為を取り消すことができると解するべきである。

【図】代理行為と詐欺
【図】代理行為と詐欺

関連事項

▼ 代理人の能力

代理人には、行為能力は不要である(102条)。つまり、代理人が制限行為能力者であったとしても、代理行為の効力には影響しない。本人は、代理人の行為能力の制限を理由として、代理人がした行為を取り消すことができない。

その理由は、本人があえて制限行為能力者を代理人に選任した以上、代理人の行為によってもたらされる不利益は本人が負うべきだからである。また、そのように解しても、代理行為の効果はすべて本人に帰属するのであるから、代理人である制限行為能力者はなんら不利益を受けないのであるから問題ない。

法定代理の場合にも、民法102条が適用されるとするのが通説である。もっとも、未成年者については、法定代理人になることができない旨が個別に規定されている(833条、847条1号、867条1項など)。法定代理人について行為能力を要求する説もある。

なお、代理人には行為能力が不要であるが、意思表示を行う以上、意思能力は必要である。

関連事項

▼ 代理行為の効果

代理行為の効果(権利義務)は、すべて直接に本人に帰属する(99条1項)。法律行為の当事者としての地位が本人に帰属するので、そこから生じる取消権や解除権などもすべて本人が取得する。たとえば、代理人が相手方の詐欺または強迫によって代理行為をした場合、代理人ではなく本人が取消権を取得する。

代理権がないのに代理人と称して法律行為をしたり、代理人が代理権の範囲を越えて法律行為をしたりした場合は、無権代理となる。

代理人が代理行為をする際に不法行為を行った場合は、本人が使用者責任(715条)を負うことがあるが、これは代理の効果として不法行為責任を負うものではない。

関連事項

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 代理人に対して意思表示をした者が、本人に対する意思表示であることを示したときは、代理人において本人のために受領することを示さなくても、その意思表示は本人に対して効力を生ずる。(司法平24-4-ア)

(2) Aの代理人として土地を購入する権限を与えられたBが、Aのためにすることを示さずにCとの間で甲土地の売買契約を締結した場合、BがAのために売買契約を締結することをCが知ることができたときは、AC間に売買契約の効力が生ずる。(司法平27-3-オ)

(3) 意思表示の効力がある事情を知っていたことによって影響を受けるべき場合、その事実の有無は、本人の選択に従い、本人又は代理人のいずれかについて決する。(司法平24-4-ウ)

(4) Aの代理人として土地を購入する権限を与えられたBが、CのBに対する詐欺により、Aのためにすることを示してCとの間で甲土地の売買契約を締結した場合、Aは、その売買契約を取り消すことができない。(司法平27-3-ウ)

(5) 未成年者は代理人になれない。(司法平20-2-ア)

(6) 委任による代理人は、未成年者でもよいが、未成年者のした代理行為は、その法定代理人が取り消すことができる。(司法平23-4-オ)

 正解

(1) 正  (2) 正  (3) 誤  (4) 誤  (5) 誤  (6) 誤

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