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無権代理と表見代理

このページの最終更新日 2015年12月15日

▼ 無権代理制度

● 無権代理とは

代理権を有しない者が他人の代理人として法律行為をすることを無権代理と言う。代理人と称して行為した者が当初からなんらの代理権を持たない場合だけでなく、行為前には代理権が存在したが行為時には消滅していた場合や、代理人がその権限の範囲外の行為をした場合も無権代理に含まれる。無権代理に対して、代理権が存在する場合を有権代理と言う。

〔参考〕無権代理という語には、広狭二義がある。広義では、およそ代理権が存在しない場合を意味し、後述する表見代理が成立する場合を含むが、狭義では、表見代理が成立しない場合だけを意味する。

● 無権代理の効果

代理権を持たない者(無権代理人)が代理人として行った法律行為(無権代理行為)の効果は、本人に帰属しないのが原則である(113条1項)。また、無権代理人には本人に法律行為の効果を帰属させようとする意思があるから、無権代理人にも効果が帰属しない。

もっとも、無権代理行為の効果が本人に帰属しないとされているのは、本人の利益を保護するためである。本人が行為(契約)の効果が自身に帰属することを認めているのであれば、あえてそれを否定する理由がない。それゆえ、本人が無権代理行為を追認した場合には、本人にその効果が帰属するものとされている(113条1項)。ただし、単独行為の無権代理については、別に考慮する必要がある(118条参照)。

本人が追認をしない場合、本来、相手方が取りうる手段としては、無権代理人に対して不法行為による損害賠償責任(709条)を追及するぐらいしかない。しかし、それだけでは相手方保護には不十分であり、取引の安全を害するので代理制度自体に対する信用が損なわれることになる。そこで、民法は、相手方の信頼ないし取引の安全を保護するために、相手方が本人や無権代理人に対して責任を追及することができるような制度ないし規定を用意している。

無権代理の場合に本人および相手方がなしうる手段をまとめると、次のようになる。

【本人がすることができる手段】

① 無権代理行為の追認(113条1項)

② 無権代理行為の追認拒絶(同条2項参照)

【相手方がすることができる手段】

① 表見代理の主張(109条・110条・112条)

② 催告(114条)

③ 契約取消し(115条)

④ 無権代理人の責任の追及(117条)

〔考察〕無権代理行為の効果を「無効」ということがあるが、一般の法律行為の無効のように効力が完全に否定されるのではなく、本人による追認または追認拒絶があるまで本人への効果帰属が不確定の状態にあるにすぎない。それゆえ、無権代理行為の効果を不確定無効などと呼ぶことがある。

● 契約の無権代理と単独行為の無権代理

民法は、無権代理行為が契約であるか単独行為であるかによって異なる扱いをしている。契約が無権代理によってなされた場合は、113条から117条の規定が適用される。これに対して、単独行為の無権代理の場合には、原則としてこれらの規定は適用されない。つまり、本人の追認が認められず、確定的に無効となる。単独行為について本人の追認を認めてしまうと、相手方にとって不意打ちになるおそれがあるからである。また、受動代理の場合には、相手方の意思表示を受けた者が一方的に無権代理人としての責任(117条)を負わされることになって適当でない。

例外的に、単独行為時において、相手方が無権代理人が代理権を有しないで行為をすることに同意するか、または代理権を争わなかったときには、113条から117条の規定が準用される(118条前段)。

受動代理の場合において、相手方が無権代理人からの同意を得て単独行為をするときも同様である(同条後段)。

▼ 表見代理

● 表見代理とその種類

無権代理の場合において、相手方が本人に対して責任を追及することができる場合として、本人が追認する場合のほかに、表見代理が成立する場合がある。

表見代理とは、無権代理の場合において、無権代理人が代理権を有すると信じて取引した相手方を保護するために、一定の要件の下で、代理権が存在したのと同様の責任を本人に負わせる制度である。一般に、表見代理は、無権代理の一種であると解されている。

表見代理には、本人の外観作出への関与の仕方に応じて、次の三つの種類がある。いずれの場合にも、相手方が代理権の不存在について善意無過失であることが要件とされる。

① 代理権授与の表示による表見代理(109条)

② 権限外の行為の表見代理(110条)

③ 代理権消滅後の表見代理(112条)

〔考察〕表見代理規定の重畳適用  一つの表見代理規定の適用だけでは本人に責任を負わせることができない場合に、他の表見代理規定を重畳的に適用することによって本人に責任を負わせることがある。これを表見代理規定の重畳適用と呼ぶ。民法110条の表見代理が成立するためには基本代理権の存在を必要とする。しかし、判例は、基本代理権が存在しない場合であっても、109条や112条との重畳適用によって表見代理が成立することを認める(最判昭45.7.28―109条と110条の重畳適用、大連判昭19.12.22―110条と112条の重畳適用)。

● 表見代理の根拠・要件

表見代理は、代理権が存在しないのにもかかわらず、本人に責任を負わせるものであるが、その実質的根拠ないし要件となるのは、次の二つである。

① 相手方の外観信頼

あたかも代理権があるかのような外観が存在し、相手方がその外観を信頼した場合には、その相手方は保護されるべきである。ただし、どのような外観であってもよいというわけではなく、信頼を保護するに値するような外観であることが必要である。具体的には、相手方が代理権が存在しないことについて善意・無過失であることが要求される。

② 本人の帰責性

本人に責任を負わせる以上、本人側にそれ相応の事情(帰責事由ないし帰責原因)が存在しなければならない。すなわち、本人がなんらかの仕方で真実に反する外観の作出に関与していることが必要である。

〔考察〕表見代理の理論的根拠は、一般に権利外観理論であるとされる。権利外観理論(表見法理)とは、権利者が真実に反する外観を作出した場合、その外観を信頼した者を保護するため、権利者に対して外観どおりの責任を負わせるという法原則である。権利外観理論は、私法上のさまざまな規定の背後に存在する原則であり(特に商事法に多い)、表見代理制度はその一つの現れないし適用であるとされている。

● 表見代理の効果

表見代理の効果は、3類型のいずれも同じである。

相手方が表見代理の成立を主張して本人に対して履行の請求をしてきた場合、相手方の主張が認められたときは、本人は代理行為の効果が自己に帰属することを拒むことができない。しかし、その反面、相手方に対する権利をも取得する。すなわち、代理権が存在した場合と同様の効果が生じる。

表見代理が成立する場合に無権代理人の責任を追及することができるかという問題がある。無権代理人の責任を表見代理が成立しない場合の補充的な責任であるとする見解(補充的責任説)と、両者はたがいに独立した責任追及の手段であるから、相手方はどちらの手段によるかを選択できるとする見解(選択責任説)とがある。判例は、後者の見解をとり、無権代理人は表見代理の成立を抗弁として117条の責任を免れることはできないとしている(最判昭62.7.7)。

問題演習(国家試験過去問題)

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(掲載予定)

 正解

(掲載予定)

民法総則のカテゴリー

法人法律行為意思表示代理無効と取消し条件と期限期間時効

コメント

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コメント: 1
  • #1

    追加 (土曜日, 12 12月 2015 00:26)

    自称代理人が代理権がないことを知っていたかどうかにかかわらず、無権代理となる。自己契約および双方代理(108条参照)、代理権濫用も無権代理の一場合である。

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