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心裡留保

このページの最終更新日 2015年9月18日

【目次】

意思の不存在

心裡留保とは

心裡留保の意思表示の効力

1 原則

2 例外

3 第三者との関係における効力

民法93条の適用範囲

〔考察:民法93条ただし書の類推適用〕

問題演習

コメント

▼ 意思の不存在

意思の不存在(意思の欠缺けんけつ)とは、表示行為に対応する内心的効果意思がないことを言う(101条1項参照)。意思の不存在は、意思と表示の不一致と言い換えることができる。民法は、意思の不存在として、心裡留保(93条)・虚偽表示(94条)・錯誤(95条)の三つの場合を規定している。

民法は、意思主義の立場を基本として、意思の不存在の場合に意思表示の効力を無効とする(93条但書・94条1項・95条本文)。しかし、取引の安全を保護する必要がある場合には、意思表示を有効としたり、無効の主張を制限したりしている(93条本文・94条2項・95条但書)。

関連事項

▼ 心裡留保とは

意思表示をする者(表意者)が表示行為に対応する内心的効果意思(真意)のないことを知りながら意思表示を行うことを心裡留保しんりりゅうほと言う(93条)。たとえば、内心では贈与するつもりがないのに、「これを君にあげる」と申し出るような場合である。心裡留保は、表意者が相手方と通謀せずに単独で行う虚偽の意思表示である(単独虚偽表示)。この点で、相手方との通謀を要件とする民法94条の虚偽表示(通謀虚偽表示)と異なる。

関連事項

▼ 心裡留保の意思表示の効力

1 原則

民法93条本文は、表意者が真意でないことを知ってしたときであっても、意思表示はその効力を妨げられないと規定する。すなわち、心裡留保の意思表示は原則として有効である。

表示行為に対応する内心的効果意思が存在しない場合であるから、意思主義の立場に立つならば、意思表示を無効とするべき場合であるように思われる。しかし、表示行為に対する相手方の信頼を保護する必要があるし、また、表意者には真意でないことの自覚がある以上、そのような表意者を保護する必要がないと言える。そのため、民法は、心裡留保の意思表示を有効として、表示行為(表示上の効果意思)どおりの法律効果が生ずることとしている(表示主義)。

関連事項

2 例外

心裡留保の意思表示は原則有効であるが、相手方が心裡留保であることを知っていたか(悪意)、または、知ることができた(有過失)ときは、意思表示は例外的に無効となる(93条但書)。相手方が悪意または有過失であるような場合にまで、表意者を犠牲にして相手方を保護する必要はないからである。

相手方が悪意または有過失であることについては、表意者側がその立証責任を負う。すなわち、表意者は、心裡留保を理由として意思表示の無効を主張する際に、相手方が悪意または有過失であったことを証明しなければならない。

3 第三者との関係における効力

意思表示の当事者間の関係では心裡留保の意思表示は例外的に無効とされる場合があるが、その場合に第三者に対する関係でも意思表示の無効を主張することができるだろうか。たとえば、ある者Aがその所有する土地をBに売却して、さらにBが第三者Cにその土地を譲渡したが、その後、表意者であるAが心裡留保を理由としてBに対して自己の意思表示の無効を主張した場合、AはCに対しても無効を主張することが可能であろうか。

民法上、心裡留保に関してこのような場合を扱う規定がないので問題となるが、学説は、民法94条2項の類推適用によって、心裡留保による無効は善意の第三者に対抗することができないと解している。心裡留保の意思表示をした表意者の落ち度(帰責性)を重くみて、外観を信頼した第三者を保護すべきであることをその理由とする。

関連事項

▼ 民法93条の適用範囲

心裡留保に関する民法93条は、契約の意思表示だけにかぎらず、合同行為単独行為の意思表示についても適用がある。もっとも、相手方のない単独行為の場合には、意思表示の相手方が存在しないのであるから、同条ただし書が適用される余地はない。

婚姻や養子縁組などの身分上の法律行為(身分行為)については本条の適用がなく、真意がない意思表示は常に無効とされる(最判昭23.12.23)。身分上の行為については、表意者本人の意思を最大限に尊重するべきであって、財産法に関する通則的な規定である本条を適用すべきではないからである。

なお、団体法上の特則によって、基金・株式の引受け・割当てにかかる意思表示については、民法93条ただし書(および94条1項)の適用が排除されている(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律140条1項、会社法51条1項等)。

〔考察〕民法93条ただし書の類推適用

判例は、民法93条ただし書を、いわゆる代理権濫用の場合に類推適用する。すなわち、本来であれば本人の利益をはかるべきである代理人が、自己または第三者の利益をはかる意図をもって代理権の範囲内の行為を行った場合において、相手方がその意図を知りまたは知ることができたときにかぎり同規定を類推適用して、本人は相手方に対して代理行為の無効を主張することができるとする。判例上、問題となった例として、会社の主任が横流しによって差益を得る目的で、会社名義でその権限に属する商品仕入れの取引を行った事案(最判昭42.4.20―93条ただし書を類推適用して会社本人の責任を否定)、および、親権者が第三者の利益をはかるために未成年の子を代理して子所有の土地を第三者の債務の担保に供した事案(最判平4.12.10―一般論として93条ただし書の類推適用を肯定したが、当該事案の解決としては代理権の濫用がなかったとした。)などがある。

関連事項

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 表示と内心の意思とが異なる意味に解されることを表意者自身が知りながらそのことを告げないで意思表示をした場合、それがたとえ婚姻に関するものであっても、意思表示の相手方を保護するため、その意思表示は無効とならない。(司法平19-1-4)

(2) 心裡留保の場合、相手方が表意者の真意を知らなかったとしても、知らないことについて重大な過失がなければ、その意思表示は有効である。(司法平20-30-イ)

(3) Aの代理人であるBは、その代理権の範囲内でAを代理してCから1000万円を借り入れる旨の契約を締結したが、その契約締結の当時、Bは、Cから借り入れた金銭を着服する意図を有しており、実際に1000万円を着服した。この場合において、Cが、その契約締結の当時、Bの意図を知ることができたときは、Aは、Cに対し、その契約の効力が自己に及ばないことを主張することができる。(司法平27-2-3)

 正解

(1) 誤  (2) 誤  (3) 正

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