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意思表示の到達

このページの最終更新日 2015年9月22日

【目次】

意思表示の効力発生時期

1 原則―到達主義

〔考察:立法趣旨〕

2 例外―発信主義

3 発信後の表意者の死亡・行為能力喪失

公示による意思表示

〔参考:民法98条の定める手続き〕

意思表示の受領能力

問題演習

コメント

▼ 意思表示の効力発生時期

1 原則―到達主義

意思表示を相手方に伝達する方法には、電話や面談のように即時に伝わる方法と、郵便のようにすぐには伝わらない方法がある。前者の方法による意思表示を対話者に対する意思表示(対話者間における意思表示)と呼び、後者の方法による意思表示を隔地者に対する意思表示(隔地者間における意思表示)と呼ぶ。

意思表示の伝達は、【表白発信到達(受信)→相手方の了知】といったプロセスをたどるが、隔地者に対する意思表示は表白から了知までの間にタイムラグがあるので、どの時点で意思表示の効力が発生すると考えるべきかが問題となる。この問題について民法は、意思表示が「相手方に到達した時からその効力を生ずる」と定める(97条1項)。このような立場を到達主義と呼ぶ。

到達とは、社会通念上、意思表示が相手方の勢力範囲に置かれること、すなわち、相手方が了知できる状態に置かれることを言う。相手方が意思表示を知りうる状態にさえなれば(郵便受けに入れるなど)、現に相手方がそれを知らなくても到達があったと言える。必ずしも相手方本人が受け取る必要はなく、相手方の親族や同居人であってもよい(最判昭36.4.20)。郵便物の受取りを拒否しても到達があったとされる(大判昭11.2.14)。また、受取人が不在であっても、不在配達通知書から郵便物の内容が推知できるときには、遅くとも留置期間が満了した時点で到達したものとされる(最判平10.6.11)。

〔考察〕立法趣旨

民法が到達主義を採用したのは、契約の解除のような単独行為の場合を主に想定しているように思われる。単独行為は、表意者の一方的な意思表示で成立する。そのため、その発信以前に効力を生ずるとすると、なんらかの事情で通知が相手方に届かなかったときは、相手方は単独行為のなされたことを知ることができず、相手方にとって不意打ちになる。しかし、相手方の了知まで必要であるとすると相手方有利に偏りすぎる。そこで、両者の中間点である到達時に効力が発生するとした。

2 例外―発信主義

契約の申込みに対する承諾については、例外的に意思表示の効力発生時期が発信の時とされている(526条1項)。これを発信主義と呼ぶ。民法が契約を成立させる意思表示である承諾について発信主義を採用したのは、契約が成立する時期を到達時点にするよりも発信時点に早めるほうが取引を迅速に行うことができるからである(承諾の意思表示の発信と同時に履行に着手することができる)。

3 発信後の表意者の死亡・行為能力喪失

表意者が意思表示を発信した後、相手方に到達する前に、表意者が死亡したり、行為能力を喪失したりした場合であっても、意思表示の効力はそれによって妨げられない(97条2項)。表意者が生存し、または行為能力を有する時に意思表示が成立しているからである。

申込みの意思表示については、これについての特則がある。すなわち、申込者が反対の(効力を失うとする)意思表示をした場合、または、相手方が申込者の死亡や行為能力喪失を知っていた場合には、97条2項は適用されない(525条)。申込みだけでは契約の効果は生じないので、申込みを失効させても不都合はないからである。

▼ 公示による意思表示

表意者が相手方またはその所在を知ることができないときは、相手方に意思表示を到達させることができないから、意思表示の効力を生じさせることができないことになりそうである。しかし、それでは表意者にとって不都合であるので、民法は公示による意思表示という方法を用意している(98条1項)。

公示による意思表示は、裁判所の公示手続きを踏むことによって、意思表示が相手方に到達したものとみなす制度である。表意者において相手方またはその所在が不明であることについて過失があったときは、到達の効力が生じない。(以上、同条3項)

〔参考〕民法98条の定める手続き

(1) 意思表示は、公示送達に関する手続き(民事訴訟法110条以下)にしたがって裁判所で掲示し、かつ、その旨を官報に掲載する方法によって公示される(同条2項本文)。裁判所は、官報への掲載に代えて市区役所等での掲示を命ずることもできる(同条同項但書)。

(2) 意思表示は、最後の官報掲載日(または掲載に代わる掲示の開始日)から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなされる(同条3項本文)。

(3) 裁判所の管轄・公示に関する費用について98条4項5項参照。

▼ 意思表示の受領能力

意思表示の内容を理解する能力を意思表示の受領能力と言う。相手の意思表示を受領するための知的能力は、自らが意思表示をする場合よりも程度の低い能力で十分である。それゆえ、民法は未成年者成年被後見人について受領能力を認めていないが(98条の2)、比較的能力の高い被保佐人被補助人については受領能力を有するものと解されている(同条の反対解釈)。

受領能力のない未成年者や成年被後見人に対して意思表示をしても、これらの者に対しては意思表示の効力を主張(対抗)することができない(未成年者・成年被後見人側からの主張は可能である)。ただし、これらの者の法定代理人が意思表示を知った後であれば主張できる。(以上、同条)

関連事項

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 隔地者に対する解除の意思表示は、相手方が了知したときにその効力を生ずる。(司法平19-1-1)

(2) 判例によれば、Aに対する意思表示が記載された書面がAの事務所兼自宅に発送され、その書面が配達された時にAが買物に出掛けていてたまたま不在であっても、Aと同居している内縁の妻が受領した場合、意思表示の効力は生ずる。(司法平23-2-ウ)

(3) 意思表示の効力は、相手方に到達した時に生ずるので、隔地者間の契約が成立するのは、承諾の意思表示が相手方に到達した時である。(司法平23-2-ア)

(4) 契約の申込みに対し承諾の意思表示を発した後、到達前に承諾者が死亡した場合、相手方が承諾者死亡の事実を知っていれば契約は成立しない。(司法平23-2-エ)

(5) 買主が売主との売買契約を解除する旨の意思表示は、公示の方法によってすることができるが、買主が売主の所在を知らないことについて過失があったときは、公示による意思表示は到達の効力を生じない。(司法平22-2-ウ改)

 正解

(1) 誤  (2) 正  (3) 誤  (4) 誤  (5) 正

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