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時効とは

このページの最終更新日 2016年7月6日

【目次】

時効制度とは

時効制度の存在理由

〔考察:時効制度の多元的理解〕

時効制度の法的性格

時効の遡及効

問題演習

コメント

▼ 時効制度とは

時効とは、一定の事実状態が一定期間継続した場合に、その事実状態が真実の権利関係に合致するかどうかにかかわらず、その事実状態に権利関係を適合させる制度をいう。

【例①】たとえば、ある者Aがある土地の所有者であるかのような事実状態が一定期間継続した場合、Aがその土地の真の所有者であるかどうかにかかわらず、Aはその土地の所有権を主張することができる。
【例②】また、ある債務者Bの債権者が金銭の支払いを請求しないという(すなわち、Bが金銭債務を負担していないような)事実状態が一定期間継続した場合、真に債権が存在するかどうかにかかわらず、Bはその債権の不存在を主張することができる。

時効には、二つの種類がある。一つは、上述の例①のように、他人の物の占有(事実的支配のこと)を一定期間継続することによってその物に関する権利の取得が認められるものであり、これを取得時効と呼ぶ。もう一つは、例②のように、権利を行使しない状態が一定期間継続することによってその権利の消滅が認められる制度であり、これを消滅時効と呼ぶ。

関連事項

▼ 時効制度の存在理由

法律は、本来、事実状態が権利関係と異なる場合には、権利関係にしたがって事実状態をくつがえすことに努めるものである。ところが、時効という法制度は、これとは逆に、真に正当であるかどうかを問わずに事実状態を正当な権利関係として認める。そこで、このような制度が存在する理由、あるいは時効の正当化根拠が問題となる。

時効制度の存在理由あるいは正当化根拠として、一般に、次の三つが挙げられる。

(1) 法律関係の安定

長い間続いた事実状態の上には、人々がそれを正当であると信頼してさまざまな法律関係が構築されており、それらをすべてくつがえすことは社会生活を著しく混乱させることになる。そこで、法律関係の安定を確保するために、永続した事実状態を法律上も尊重してそのまま正当な権利関係として認めることが要請される。

この理由は、取得時効についてもっともよく妥当する。

(2) 証明困難の救済

長期間継続した事実状態は、真実の権利関係に合致している蓋然性が高い。しかし、長い年月が経過すると、権利関係についての証拠資料が散逸または滅失して権利関係を証明することが困難になることが多い。そこで、権利関係を証明することができない者を救済するために、時効による権利の取得・消滅を認める必要がある。とくに消滅時効においてこの理由が重視される。

(3) 権利の上に眠る者は保護に値しない

権利の行使を長期間にわたり怠っている者は法律で保護するに値しない、という考え方である。権利者の怠慢へのサンクションとして時効を認める。

〔考察〕時効制度の多元的理解

本文に掲げた三つの理由ないし根拠には、いずれも難点がある。

まず、(1)の法律関係の安定という理由であるが、法律関係の形成は時効の要件ではなく、何ら法律関係が形成されていなくても時効によって事実状態が正当化されることを説明することができない。また、時効が法律関係の安定という公益的理由にもとづく制度であるとすると、当事者の意思にかかわらず時効が適用されるべきである。しかし、制度上は当事者の援用が必要とされている。

次に、(2)の証明困難の救済という理由は、事実状態が真実の権利関係と異なることが証拠によって明らかである場合にも、時効によって事実状態どおりの権利関係が認められることを説明できない。

(3)の理由については、権利者が権利の存在を知らず、したがって権利者に怠慢がなかったとしても時効が完成することを説明することができないし、そもそも権利者に権利行使の義務があるのかという疑問が残る。

以上のように、三つの存在理由のいずれによっても、時効制度全体を統一的に説明することはむずかしい。そこで、時効制度を統一的にではなく、多元的に、すなわち、取得時効と短期時効、さらに長期の時効と短期の時効とに分けて理解しようとする立場が有力となっている。この立場では、時効制度の存在理由をそれぞれの時効制度ごとに別々に考えていくことになる。

▼ 時効制度の法的性格

時効制度の法的性格をどのように捉えるべきかについて、実体法説と訴訟法説という二つの異なる立場がある。この点は、時効の援用の法的性質をどう考えるべきかという問題と密接にかかわる。

(1) 実体法説

実体法説は、時効を実体法上の権利の得喪原因であると捉える立場である。つまり、取得時効によって実体法上の権利の取得という効果が発生するのであり、消滅時効によって実体法上の権利の消滅という効果が発生すると考える。

この立場は、前述した時効制度の存在理由のうち、法律関係の安定および「権利の上に眠る者を保護しない」を重視する。

(2) 訴訟法説

訴訟法説は、時効を訴訟法上の法定証拠であると捉える立場である。法定証拠とは裁判官の判断を法的に拘束する証拠であって、時効という法定証拠が提出(援用)されることによって裁判官はそれ以外の判断をすることができなくなる。たとえば、債務者が債権の消滅時効を法定証拠として提出した場合、他の事実・証拠から債務者が弁済していないことが明らかであったとしても、訴訟上は債権が消滅したものとして扱われる。

この立場は、時効制度の存在理由のうち、証明困難の救済を重視する。

実体法説と訴訟法説のいずれの立場が妥当かであるが、一般に実体法説が支持されている。民法の条文上は、権利を「取得する」(162条、163条)、あるいは、権利が「消滅する」(167条以下)と規定されているが、これらは実体法上の権利の得喪を定めたものであると解されているからである。訴訟法説には、これらの法文と抵触するという難点がある。

関連事項

▼ 時効の遡及効

時効の効果は、取得時効にあっては権利の取得であり(162条、163条)、消滅時効にあっては権利の消滅である(167条以下)。

これらの時効の効果は、時効期間の最初(起算日)にさかのぼって発生する(144条)。これを時効の遡及効という。

【例③】ある者Aがある土地をその所有者のつもりで20年間占有(支配)していた場合、取得時効の完成により、20年前の占有開始の時点(取得時効の起算点)にまでさかのぼって、Aにその土地の所有権が認められる(Aが当初から所有者であったことになる)。その結果、時効期間中に生じた土地の果実は全部Aに帰属する。

【例④】ある債務者Bが消滅時効の完成によって債務を免れた場合、Bは当初から債務者でなかったことになる。その結果、Bは時効期間中の利息等を支払う必要がなくなる。

時効の効果は、長期間継続した事実状態に即して権利関係を認めるものであるから、その効力を既往にさかのぼらせても法律関係を混乱させるおそれがない。逆に、遡及効を認めなければ、時効期間中に生じた果実の返還義務や利息の支払義務などが生じてしまい、永続した事実状態の正当化という時効制度の趣旨に反することになる。

関連事項

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(掲載予定)

 正解

(掲載予定)

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