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時効類似の制度(除斥期間)

このページの最終更新日 2016年10月3日

【目次】

除斥期間とは

〔考察:権利の法定存続期間〕

消滅時効と除斥期間の判別

権利失効の原則

問題演習

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▼ 除斥期間とは

除斥期間は、ある権利について法律が定めた存続期間である。権利を行使しないままにその期間が経過すると、その権利は法律上当然に消滅する。除斥期間の目的は、権利関係を速やかに確定させることにある。

(1) 除斥期間と消滅時効との相違点

除斥期間は、一定期間が経過した後に権利が消滅するという点において消滅時効と類似する。しかし、それ以外の諸点において消滅時効とは異なっている。

① 時効のような中断がない。

② 当事者の援用がなくても裁判所は権利消滅の判断をしなければならない。(当事者は利益を放棄することもできない。)

③ 起算点は、権利が発生した時である。

④ 権利消滅の効果は遡及しない。

中断がない(①)のは権利関係の早期確定を目的としているからであって、中断のある時効とは存在理由を異にする。援用が不要である(②)のも同様の理由にもとづく。起算点や効果に関しても、消滅時効の起算点が権利を行使することができる時とされていること(166条1項)や、時効には遡及効がある(144条)のとは異なっている。

(2) 除斥期間と停止

以上とは異なり、停止については除斥期間にも認めるべきであると主張する見解が有力である。たしかに、権利行使が不可能な状況にあるのにもかかわらず、単に一定期間を経過したというだけで権利の行使を一切認めないとするのは、権利者に酷であると言える。

判例も、不法行為にもとづく損害賠償請求権の20年の期間(724条後段)に関して、それを除斥期間であるとしたうえで、民法158条や160条の「法意に照らし」、除斥期間の効果が制限されることを認めている(最判平10.6.12、最判平21.4.28―いずれの判決も、権利行使が不可能となる原因を作った加害者が20年経過によって損害賠償義務を免れるということが、著しく正義・公平の理念に反するものであることを指摘する)。

〔考察〕権利の法定存続期間

除斥期間は権利の法定存続期間(厳密には権利行使期間)であるが、これを生き物にたとえて言うならば、除斥期間とは権利に予定された寿命であると言える。寿命は権利が誕生した時からスタートし(③)、寿命が尽きた時点で権利が死滅する(②)。寿命であるから途中でリセットすることはできず(①)、死んだとしてもはじめから存在しなかったことになるわけではない(④)。ただし、停止という延命措置をすることはできる。

関連事項

→ 時効の中断について解説

→ 時効の援用について解説

→ 消滅時効の起算点について

→ 時効の停止について解説

▼ 消滅時効と除斥期間の判別

個々の権利ごとに条文に定められた期間制限が消滅時効と除斥期間のいずれであるかが問題となる。それについて、立法者は「時効によって」という文言の有無によって決まるとした。だが、現在の学説は、法文にとらわれずに権利の性質や規定の趣旨によって実質的に判断すべきであるとしている。

(1) 形成権について期間の定めがある場合

形成権は、権利の性質上、権利者の一方的な意思表示によってその内容を実現することができ、中断の余地がない。それゆえ、通説は、形成権についての期間制限を除斥期間であると解する。

これに対して、判例は、民法126条(取消権―5年・20年)や426条前段(詐害行為取消権―2年)の期間制限について法文どおりに消滅時効であると解する。その一方で、566条3項(解除権―1年)の期間制限については除斥期間であると解している(最判平4.10.20)。

(2) 請求権について短期の期間の定めがある場合

請求権を短期の期間制限にかからせる規定がある。民法193条(2年)、195条(1か月)、201条1項・3項(1年)、566条3項・570条(1年)、600条・621条(1年)、637条(1年)など。

このように請求権を短期の期間制限にかからせる規定は権利関係を速やかに確定させる趣旨であるから、その期間制限は除斥期間であると解される(通説)。

(3) 長短二つの期間の定めがある場合

同一の権利について長期と短期の2種類の期間制限にかからせることを定めた規定がある。民法126条(取消権―5年・20年)、426条(詐害行為取消権―2年・20年)、724条(損害賠償請求権―3年・20年)、884条(相続回復請求権―5年・20年)、1024条(遺留分減殺請求権―1年・10年)、製造物責任法5条1項(損害賠償請求権―3年・10年)、消費者契約法7条1項(取消権―6か月・5年)といった規定がそれである。

長短二重期間の規定は、法文の形式上、短期の期間については「時効によって消滅する」とし、長期の期間については「同様とする」と定められている。このように法文上は、長期の期間制限の性質は消滅時効であるように読める。

しかし、通説は、長期の期間制限の性質を除斥期間であると解している。長期の期間については、法律関係を確定させるための権利の行使期間を定めたものと解するのが適当であることを理由とする。

判例も、同様の理由から、民法724条後段の長期(20年)の期間についてその性質を除斥期間であると解する(最判平元.12.21―加害者側が724条後段の期間経過による権利消滅を主張するのは信義則違反または権利濫用であるとする被害者側の主張を「失当」であるとした)。しかし、その他の長短二重期間の規定の長期期間については、消滅時効期間と解する傾向がある(884条後段の20年に関する最判昭23.11.6)。

関連事項

→ 消滅時効の適用範囲について

→ 権利の二段階行使の場合について

▼ 権利失効の原則

消滅時効や除斥期間によることなく、時の経過に関連して権利の効力を失わせる考え方が提唱されている。

権利者が権利を行使しない状態が永く続くと、相手方においてもはや権利の行使はないという期待ないし信頼をいだくようになる。そのような信頼が生じた以上、その信頼を裏切って権利を行使することは信義則に反して許されない、という考え方である。これを権利失効の原則と呼ぶ。

権利失効の原則を認めると、消滅時効期間や除斥期間が経過する前、あるいは、期間制限にかからない権利(物権的請求権など)であっても、権利の行使を阻止することができるようになる。しかし、法律上はあくまで消滅時効や除斥期間で処理するのが原則であるとして、この原則の採用に対しては反対も強い。

判例は、一般論としてこの原則の内容を認めているが(最判昭30.11.22)、実際にこの原則の適用により権利行使を阻止した例はまだ存在しない。

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▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

◎ 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(掲載予定)

◎ 正解

(掲載予定)

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