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消滅時効の適用範囲

このページの最終更新日 2016年9月30日

【目次】

消滅時効とは

消滅時効の適用範囲

抗弁権の永久性

見出し

問題演習

コメント

▼ 消滅時効とは

消滅時効とは、権利不行使の状態が一定期間継続したときに権利消滅の効果を認める制度を言う。

たとえば、ある者AがBに対して金銭を貸し付けたが、その後、Aが貸金債権の請求を10年間怠っていた場合、Aの債権はBが消滅時効の成立を主張することによって消滅する。

消滅時効は権利不行使の事実状態を基礎として成立するが、どの程度の期間その事実状態が継続することを要するかについては、権利の種類に応じて異なる。債権一般について言えば、その消滅時効期間は10年と定められている(167条1項)。

消滅時効と似てはいるが異なる制度として除斥期間がある。ある条文に定められた権利行使の期間制限が消滅時効と除斥期間のいずれであるかが問題となることが多い。

関連事項

▼ 消滅時効の適用範囲

すべての権利が消滅時効にかかるわけではない。消滅時効にかかる権利は、①債権(167条1項)と、②債権または所有権以外の財産権(同条2項)である。後者の例として、用益物権(地上権、永小作権、地役権)がある。

(1) 所有権

所有権は、消滅時効にかからない(167条2項参照)。これは、所有権絶対の原則のあらわれである。もっとも他人が所有権を時効取得した場合には原権利者の所有権は消滅することになるが、これは取得時効の反射的な効果であって、所有権が消滅時効にかかったことによるものではない。

(2) 物権から派生する権利

所有権が消滅時効にかからないことの帰結として、所有権にもとづく物権的請求権や、所有権にもとづく登記請求権、共有物分割請求権(256条)、相隣権(209条以下)といった所有権から派生する権利も消滅時効にかからないと解されている(大判大5.6.23―登記請求権、大判大11.8.21―物権的請求権)。

制限物権にもとづく物権的請求権についても、本体である物権とは独立に消滅時効にかかることはない。

(3) 担保物権

担保物権は、債権を担保するための権利であるから、被担保債権とは独立に消滅時効にかかることはない(被担保債権の時効消滅によって抵当権も当然に消滅する、つまり援用は不要である)。

なお、抵当権の消滅時効に関する民法396条を反対解釈すると、抵当不動産の第三取得者(債務者または抵当権設定者でない者)との関係では抵当権も消滅時効(167条2項の20年)にかかるようにも思える。判例は抵当権の消滅時効を肯定するが(大判昭15.11.26)、学説は賛否両論がある。

(4) 占有権・留置権

占有権留置権は、占有という事実状態にもとづいて認められる権利であって、占有の喪失によって消滅する(203条本文、302条本文)。したがって、権利不行使により消滅時効にかかる余地がない。

(5) 形成権

形成権が消滅時効にかかるかどうかについては争いがある。形成権については、権利者の一方的な意思表示によってその権利内容を実現することができるのではあるから時効の中断ということがありえず、一見、消滅時効を論じる余地がないように思われる。しかし、判例は形成権の消滅時効を肯定する(債権に準じて10年の時効にかかる)。

学説では、形成権についての期間制限の性質を除斥期間であると解したり、形成権の行使によって発生する請求権と一緒に消滅時効にかかると解したりするものが有力である。

関連事項

▼ 抗弁権の永久性

契約の取消権は、場面に応じてその実際的な機能のしかたが異なりうる。以下、二つの事例を素材にして検討してみたい。

【例①】AとBとの間で売買契約が締結され、買主Aが売主Bに対して目的物の代金を支払ったが、その後、その売買がBの詐欺によるものであることにAが気づいた。

上の事例の場合、AはBの詐欺を理由に売買契約を取り消すことができる(96条1項)。AがBに対して支払った代金を取り返すためには、積極的に売買契約を取り消してBに対して代金の返還請求をしなければならない。しかも、取消権の行使には5年の期間制限が定められているので(126条)、追認可能時から5年を経過すると、もはやAはBから代金を取り返すことができなくなる。

【例②】AとBとの間で売買契約が締結された後、すぐにAは売買がBの詐欺によるものであることに気づいた。その後、Bから代金支払いの請求がなされなかったためにAが売買を取り消さずに放置していたところ、5年あまり経過した後、BがAに対して代金の支払いを請求してきた。

この事例に民法126条を適用すると、Bが代金支払いを請求してきた時にはすでに取消権を行使可能な期間を過ぎているので、Aはもはや売買契約を取り消すことができず、Bに対して代金を支払わなければならなくなる。

しかし、これが妥当な結論であるかは問題である。取消権者であるAの立場からすれば、まだ代金を支払っていない以上、契約を積極的に取り消す動機に乏しい。もし相手方Bが債務の履行を請求してきたなら、そのときに取消権を行使すれば足りると考えるのが自然である。事例①の場合と異なり、Aに積極的な取消権の行使を期待することはできない。

そこで、Bの請求に対してAがその履行を拒絶するために取消権を主張する場合には、取消権は期間制限に服さず、いつでも主張することができるとする考え方が提唱されている。このように解するほうが、法律関係の安定という民法126条の趣旨にも合致すると考えることもできる。

このように、権利が現状維持的に防御(抗弁)として主張される場合には期間制限に服さない(つまり永久に主張できる)、とする考え方を抗弁権の永久性と呼ぶ。抗弁権の永久性を認めるべきか否かについては議論がある。

関連事項

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) AがBから土地を買い受け、所有権移転登記をしないまま20年が経過してから、AがBに対して所有権に基づき移転登記手続を請求した場合、Bは、その登記請求権の消滅時効を援用することができる。(司法平18-21-5)

 正解

(1) 誤

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