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権利能力なき社団

このページの最終更新日 2016年7月6日

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問題演習

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▼ 法人格のない団体の法律関係

団体は、法人だけに限られない。法人格(権利能力)を有しない団体であっても、社会の構成単位として活動している団体は存在する。問題は、そのような法人格を有しない団体をめぐる法律関係がどのようにして処理されるかである。

団体関係を規律する民法上の規定としては、法人に関する規定のほかには組合に関する規定(667条~688条)しか存在しない。しかし、民法上の組合は当事者間の契約としての性格が強い団体を想定しているから、法人格のない団体すべてに組合に関する規定を一律に適用することは妥当でない。

法人格のない団体のなかには社団法人と同様の実体を有する団体も存在するのであり、そのような団体についてはできるかぎり社団法人に準じた扱いをするのが公平上適切である(端的に権利能力を認めるべきとする見解もある)。判例も、ある団体が「権利能力なき社団」と言える場合について、社団法人に準じた処理を認めている。

〔考察〕法人格のない団体の存在理由

(1) かつての法人制度においては、①公益法人と営利法人の二類型しか用意されていなかったので、学会・同窓会のように公益目的でも営利目的でもない団体は、特別の法規定のないかぎり、法人格を取得することができなかった。また、②公益法人となるためには主務官庁の許可を必要とするため、その事実上の前提である先行実績や財産的基礎のない団体は公益法人となることが難しかった。そこで、①②のような理由によって法人となれない団体をめぐる法律関係をどのように処理すべきかについて議論が活発になされた。それが「権利能力なき社団」と呼ばれる問題である。

(2) しかし、平成13年の中間法人法の制定、さらには平成18年の公益法人制度改革によって一般社団法人の設立が認められたことにより、①②の理由によって法人となれなかった団体についても、法人となる道が開かれることとなった。このようにして従来の議論が前提としていた状態が解消された結果、団体が法人格を有しない理由としては、③団体があえて法人格を取得しない場合や、④法人となるために設立中の団体である場合だけしか考えられなくなった。このうち、④設立中の団体については、法人の設立に関する規定が整備されている以上、法人格の欠如をことさら問題にする必要はない。したがって、現在、「権利能力なき社団」として問題とされるのは、もっぱら③のような団体にかぎられる。

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▼ 権利能力なき社団の判例法理

1 権利能力なき社団とは

法人格のない団体のうち、ある種の団体については社団法人に準じた法的取扱いをすべきであると考えられており、判例や学説は、そのような団体を権利能力なき社団と呼んで、その他の団体と区別する。権利能力なき社団とは、どのような要件を満たす団体であるのかが問題となる。

判例によれぱ、ある団体が権利能力なき社団と言えるには、その団体が次の要件を満たしていることが必要である。すなわち、権利能力なき社団とは、「①団体としての組織をそなえ、②そこには多数決の原則が行なわれ、③構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、④しかしてその組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているもの」を指す(最判昭39.10.15)。

もっとも、実際に判例において権利能力なき社団として認定された例を見ると、これら四つの要件が権利能力なき社団であるための必要十分条件であるとは言い切れない。要件の一部を認定していない例や、他の事情を考慮していると考えられる例もある(たとえば、最判昭49.9.30―②の要件を認定していない)。

〔参考〕権利能力なき財団

判例は、個人財産から分離独立した基本財産を有し、かつ、その運営のための組織を有しているものを権利能力なき財団であると認定する。そのうえで、権利能力なき財団の代表者として行った取引については、その代表者は個人的責任を負わないと判示している(最判昭44.6.26、最判昭44.11.4)。

2 権利能力なき社団の効果

ある団体が権利能力なき社団であると認定されることによって、具体的にどのような効果が生じるのか。判例によって認められた効果として、次のようなものがある。

① 権利能力なき社団の財産は構成員に総有的に帰属する(前掲最判昭39.10.15、最判昭32.11.14など)。

② 不動産登記について、社団は登記請求権を有せず、代表者個人の名義による登記のみが認められる(最判昭47.6.2)。

③ 社団の債務について、社団(構成員全員)の総有財産だけが責任財産となり、構成員各自は直接には責任を負わない(有限責任、最判昭48.10.9)。

(1) 団体財産の帰属と構成員の権利

社団の財産は構成員の個人財産と区別されるべきであるが、社団に権利能力がないため、誰にどのような形で帰属するのかが問題となる。この点に関して判例は、構成員全員の総有という理論構成をとる(上記①)。総有という構成をとる帰結として、社団の構成員は、当然には、社団財産の上に持分権や分割請求権を有しない(上掲最判昭32.11.14)。

(2) 団体の対外的行為と構成員の責任

社団の代表者が社団の名において行った取引の効果は、その社団の構成員全員に総有的に帰属する(上掲最判昭39.10.15、上掲最判昭48.10.9)。したがって、社団の債務についても構成員に総有的に帰属する。権利能力なき社団の権利義務について総有的帰属という構成をとるのは、実質的に団体自身に権利義務が帰属するのと同様の結論を導くためである。

また、判例は、社団の債務に対する構成員の責任を有限責任であるとする(上記③)。(報償責任の観点から、営利団体の場合には構成員の無限責任を認めるべきであるとする有力説がある。)

(3) 団体名義での不動産登記の可否

形式的には、権利能力なき社団の不動産は構成員全員に総有的に帰属し、社団自身は不動産についての権利主体となることはできないから、権利能力なき社団は登記請求権を有せず、不動産の登記名義人になることは認められない。構成員全員の共有名義で登記をする方法もあるが、社団の構成員は変動することが予定されているから現実には困難である。

そこで、社団構成員の総有に属する不動産を信託的に代表者個人の所有として、代表者が個人の名義で登記をする方法が認められている(上記②)。

なお、社団の代表者である旨の肩書をつけた登記(たとえば、「A社団代表理事B」)をする方法も考えられるが、実質上、社団を権利者とする登記であって不動産登記法の趣旨に反するから認められない(上掲最判昭48.10.9)。

〔考察〕法の不備

代表者名義での登記が認められる結果、当該不動産が代表者の個人財産であるのか社団財産であるのかの判別が外形上つかなくなる。そのため、代表者が社団の不動産を自己の所有物として事情を知らない第三者に売却したり、あるいは、代表者の債権者が当該不動産を差し押さえたりしたときに、真実の権利者である社団と代表者名義の登記を信頼した第三者や債権者のいずれを保護すべきかという難しい問題が生じる。社団不動産の保護を優先すると第三者や債権者の利益を害することになるし、反対に第三者・債権者保護を認めると社団と代表者個人の責任財産の分離を貫徹することができない。

〔参考〕その他の権利能力なき社団の効果

上述した以外の権利能力なき社団の効果として、判例には、平成18年改正前民法56条を類推適用して裁判所による仮理事の選任を認めたものがある(最判昭55.2.8)。また、学説は、権利能力なき社団についても、法人の不法行為責任に関する規定(改正前民法44条、現在は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条)を類推適用すべきであるとする。

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▼ 社団と組合

1 社団と組合の二分法

伝統的な考え方によれば、およそ団体は法人となるのにふさわしい団体である社団と、そうでない団体である組合とに二分される。そして、ある団体が社団であれば社団法人に関する規定を適用(類推適用)し、組合であるならば組合の規定を適用すべきものとされる(改正前民法の法人法の規定を法人格を前提とするものと社団に関するものとに分けて、後者を社団としての実体を有する団体に適用すべきであるとした)。

このような社団と組合の二分法については、①社団と組合を区別する明確な基準が存在しない、②団体に関する法の規定が社団と組合の峻別を前提としていない(組合契約によっても社団的な団体を設立することが可能である)、③法人格付与の条件として組合と対比される意味での社団であることが必ずしも要求されていない、といった批判がある。

そこで、ある団体が社団と組合のいずれであるかを二者択一的に判断していずれかの規定のみを一括して適用するのではなく、団体の実態にあわせて社団・組合の規定を選択的あるいは混合的に適用すべきであるとする考え方も有力に主張されている。

2 社団と組合との比較

上述のように、伝統的な考え方によれば、およそ団体は社団と組合のいずれかに区分される。伝統的な二分法において想定される社団・組合という団体は、どのような団体であるかについて以下、簡単にそのモデルを対比してみる。両者は、団体の基本的性格や財産の帰属形態において重要な相違がみられる。

(1) 団体の基本的性格

社団は、団体そのものが個々の構成員から独立して存在しているような団体である。そこでは、個々の構成員は団体との間の社員関係によって間接的に結合しており、はじめから構成員が変動することを予定している。社団においては、団体の組織(定款)変更や解散は、多数決によって行われる。このように、社団においては個々の構成員の個性を無視できるので、人数が多い団体に向いている。

これに対して、組合は、当事者間で共同事業を営むことを合意することによって成立する団体である(667条1項)。各構成員(組合員)は、共同の目的のために、契約によって相互に義務づけあう関係にある。したがって、団体組織(規約)の変更、新たな組合員の加入や団体の存続には、組合員全員の同意が必要である(組合員は解散請求権を有する―683条)。このように、組合は個々の構成員の個性が重視される団体であり、比較的少人数の団体を想定しているといえる。

〔参考〕「組合」という名の社団

法人には、各種協同組合や労働組合と呼ばれるものがある。これらは法律上「組合」という名称を用いており紛らわしいが、その実体は社団である。

(2) 財産関係

組合、社団のいずれも団体財産は構成員全員に共同的に帰属するが(668条参照)、通常の財産関係とは異なり、団体的制約を受ける。通説的見解によると、組合、社団の財産の帰属形態はそれぞれ合有、総有であると解されている。合有関係においては、各構成員は持分権を有するものの、その持分の処分や財産の分割請求をすることは制限される(676条)。総有関係においては、各構成員は持分権を持たず、したがって、持分処分権や分割請求権もない(前出最判昭32.11.14参照)。

団体の債務について、組合の場合は、組合財産だけでなく、構成員の個人財産もその責任を負う(無限責任、674条・675条)。これに対して、社団の場合は、団体財産だけが責任財産となり、各構成員は団体債権者に対して直接には責任を負わない(有限責任、前出最判昭48.10.9参照)。

組合においては脱退すれば持分の払戻しを受けることができるが(681条)、社団では原則として持分の払戻しがない。

〔参考〕団体構成員の持分の差押え

一般的な理解によれば、構成員の債権者は、個々の団体財産を直接に差し押さえることはできない。しかし、脱退の際に払戻しが認められる団体については、構成員の持分を差し押さえた後、その構成員を脱退させることによって払戻しを受けることは可能であるとされる。払戻しが認められない団体では、持分の差押えはできない。

(3) 対外関係

社団の代表者が社団の名において行った取引の効果は、その社団の構成員全員に総有的に帰属する(前出最判昭39.10.15、前出最判昭48.10.9参照)。組合の場合も、各組合員または業務執行組合員が組合の名においてした行為の効果は、組合員全員に帰属する(組合代理)。なお、社団、組合のいずれも訴訟上の当事者能力を有する(民事訴訟法29条参照)。

▼ 問題演習

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 選択問題

権利能力なき社団に関する次の1から5までの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを2個選びなさい。(平成20年司法試験短答式民事系第4問)

1.権利能力なき社団の成立要件は、団体としての組織を備え、多数決の原理が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることである。

2.権利能力なき社団が取得した不動産については、権利能力なき社団名義で所有権の登記をすることはできず、権利能力なき社団の代表者たる肩書を付した代表者名義で所有権の登記をすることができるにすぎない。

3.代表者の定めのある権利能力なき社団は、その名において訴え、又は訴えられることができる。

4.権利能力なき社団の財産は、その構成員に総有的に帰属するから、構成員の一人に対して金銭債権を有する債権者は、当該構成員の有する総有持分に限りこれを差し押さえることができる。

5.権利能力なき社団はその代表者により社団の名で取引をすることができるが、その取引により社団が負担した債務については、構成員各自は取引の相手方に対して直接には個人的債務ないし責任を負わない。

 正解

2、4

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