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法人とは

このページの最終更新日 2016年7月6日

▼ 法人とは

1 自然人以外の権利主体

法人とは、自然人以外で権利・義務の主体として認められるものを言う。法は、法人とするのが適当であるような実体に対して法人格(権利能力)を付与する。どのような実体に対して法人格が付与されるのかは法政策によるが、現在の法人制度でそのような実体の基礎とされるのが人の集団(社団)または財産(財団)である。

〔考察〕法人の本質論(法人学説)

(1) かつてヨーロッパ大陸において、法人の本質に関して、法人擬制説、法人否認説、法人実在説などの見解が主張された。法人擬制説は、権利の主体となるのは本来自然人にかぎられるが、法人は法がとくに自然人に擬制して権利主体として認めたものであると主張する。法人否認説は、法人擬制説を発展させたものであり、法人という擬制の背後にある実体は自然人や財産にすぎないと主張する。法人実在説は、法人は単なる法の擬制物ではなく、一個の社会的実在であると主張する説である(この見解はさらに、有機体説と組織体説とに分かれる)。

(2) これらの法人の本質に関する学説は、国家による団体禁圧が解かれていく歴史的な過程において、それぞれの時代の政策・価値観を反映して主張されたものである(法人の承認に消極的な立場から擬制説・否認説が主張され、積極的な立場から実在説が主張された。)。このような法人本質論は、実際の法律問題の解決に直結するものではなく、法人が法制度として定着した現代においてはもはや議論をする意味がないものとされている。

(3) そうは言っても、実在説的立場と擬制説的立場のいずれを採るかによって、個々の法律問題において理論的な説明の仕方に違いが生じることがある。たとえば、法人の不法行為責任が問題となる場合において、実在説的立場は法人自身の行為を観念して法人の不法行為能力を肯定するのに対して、擬制説的立場は法人自身の行為という観念を認めず、法人とは別人格の者がした不法行為について法人が特別に負う責任であると考える。

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2 法人法定主義

法人は、法律の規定によらなければ成立しない(33条1項)。立法政策として、法人としての実体があれば当然に法人格を承認する立法主義(自由設立主義)を採用する国もあるが(スイス民法)、日本の法制度においては、法人を設立するためには法律上の根拠が必要である(法人法定主義)。

現在、各種の特別法によってさまざまな種類の法人が認められている。

〔参考〕法人の種類と設立根拠法の例

会社(会社法)、一般社団法人・一般財団法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)、NPO法人(特定非営利活動促進法)、学校法人(私立学校法)、宗教法人(宗教法人法)、医療法人(医療法)、社会福祉法人(社会福祉法)、農業協同組合・生活協同組合・信用金庫等(農業協同組合法・消費生活協同組合法・信用金庫法等)、労働組合(労働組合法)、健康保険組合(健康保険法)、弁護士法人・監査法人・税理士法人等(弁護士法・公認会計士法・税理士法等)、管理組合法人(建物の区分所有等に関する法律)、相続財産法人(民法951条)

〔参考〕法人制度の変遷

法人制度は当初、民法が規律する公益法人と商法が規律する営利法人とに二分されていた。公益法人は公益、すなわち不特定多数人の利益を図ることを目的とし、営利を目的としない法人である。法人格を取得することができるのは公益目的の団体か営利目的の団体にかぎられ、そのどちらでもない団体は(個別法が存在しないかぎり)法人になることができなかった。その空白を埋めるために、平成13年に中間法人法が制定されて、社員に共通する利益を図ることを目的とする非営利団体(業界団体・同窓会・老人会など)も法人格の取得が認められるようになった。さらに、平成18年の公益法人制度改革関連三法の制定により、広く非営利目的の団体一般にも法人格取得の道が開かれるにいたった(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)。同時に、中間法人法が廃止され、民法の公益法人に関する規定も削除された。なお、新しい法人制度の下では、一般社団法人・一般財団法人として設立されたもののうち、行政庁(内閣総理大臣および都道府県知事)による公益認定を受けたもののみが公益法人と呼ばれることになった(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律2条~4条参照)。

民法・中間法人法から一般法人法・公益法人法へ変化
【図】法人法改革

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3 法人とすることの法技術的な意味

法人制度を認めることは、法技術的には次のような意味がある。

(1) 団体名義での活動

団体そのものに法人格が認められることによって、団体の名前ですべての行為をすることが可能になる。法人格のない団体であっても、団体名義で銀行口座を開設することや訴訟上の当事者(原告・被告)となること(民事訴訟法29条)などは可能であるが、不動産登記のように団体名義では行うことができない場合もある(最判昭47.6.2)。団体そのものを法主体と認めることができれば、団体名義による不動産登記も可能となる。

〔参考〕地縁による団体

自治会や町内会のような地域住民の地縁にもとづいて形成された団体が、集会施設のように地域的な共同活動のための不動産を保有することがある。そのような団体(地縁による団体)であっても、市町村長の認可を受けることによって(認可地縁団体)、その規約に定める目的の範囲内において法人格が認められ(地方自治法260条の2)、団体名義での不動産登記ができるようになる。

(2) 責任財産の分離

団体の財産が個々の構成員の(共同)所有にとどまるときは、構成員の債権者によって差し押さえられる可能性がある。団体に法人格を認めることによって団体の財産を団体自身に帰属させ、構成員の個人財産から分離独立させることができれば、団体は構成員の債務についての責任を負わなくてすむ。

〔考察〕構成員の有限責任

以上のほかに、団体の債務を団体自身に帰属させることで、構成員は団体の債権者に対して(出資以外の)責任を負わないということが挙げられることがある。これを有限責任という。しかし、構成員の有限責任はすべての法人について認められるわけではなく(例、合名会社の社員・合資会社の無限責任社員―会社法580条)、また、法人格のない団体であっても構成員の有限責任を認めることが可能である(最判昭48.10.9参照)。

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▼ 法人の分類

法人は、いくつかの観点から分類することができる。

(1) 社団法人と財団法人

法人の実体的基礎による分類である。一定の目的のもとに結合した人の集団(社団)を基礎とする法人を社団法人と言い、一定の目的のために提供された財産の集合体(財団)を基礎とする法人を財団法人と言う。社団法人にはその構成員である社員が存在するが、財団法人には社員が存在しない。

社団法人の例として一般社団法人や会社などがあり、財団法人の例として一般財団法人や学校法人などがある。

〔考察〕社団の定義

従来、法人(社団法人)は社団としての実体を有する団体であるとされ、組合との対比から、社団とは何かについて論じられてきた。そこでの「社団」は組合よりも団体的性格の強い団体を主に想定しているが、社団と組合とのはっきりとした区別の基準を示すことは難しいと指摘されている。なお、会社も社団であると言われているが(改正前商法52条には会社が社団である旨の規定があったが、会社法になって削除された。)、会社のなかには合名会社のように組合的な実体を有する団体も存在するのであって、会社は上述の意味での社団性を必ずしも要求しているわけではない。したがって、「会社は社団である」という場合の「社団」とは、単に人の集団という意味で理解したほうが適切である。

〔参考〕社員・社員権

日常用語としての社員は会社の従業員を指すが、法人法でいう社員は法人という団体の構成員を指す。株式会社の社員をとくに株主と呼ぶ。団体に帰属する社員は、団体に対して多種多様な権利を有する。このような社員としての地位を社員権株主権)と言う。

〔参考〕信託制度

財団法人と機能的に類似する制度として信託制度がある。信託制度とは、ある者が特定の者(受託者)に自己の財産(信託財産)を移転・処分し、受託者が一定の目的に従って信託財産の管理・処分をすべき義務を負う制度である(信託法3条参照)。

(2) 営利法人と非営利法人

事業により得た経済的利益を構成員に分配することを営利と言う。営利を目的とする法人を営利法人と呼び、営利を目的としない法人を非営利法人と呼ぶ。

営利法人の典型例は株式会社などの会社である。非営利法人の例としては、一般社団法人やNPO法人などがある。

〔考察〕営利法人と非営利法人の区別

営利法人か非営利法人かの区別は、経済的利益を構成員へ分配するかどうかによって決まるのであって、法人がその事業目的に経済的利益の獲得を含むかどうかによって決まるのではない。非営利法人であっても、その経済的基盤を確立するための収益事業を営むことは可能である。なお、財団法人は、利益を分配する構成員がいないのであるから、必然的に非営利法人である。

〔参考〕営利性・非営利性の根拠条文

一般社団法人が非営利法人であること、および、会社が営利法人であることを直截的に定めた条文はない。しかし、一般法人法11条2項が「社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは、その効力を有しない」と規定し、また、同法35条3項が「社員総会は、社員に剰余金を分配する旨の決議をすることができない」と規定していることから、一般社団法人の非営利性を知ることができる。また、会社の営利性に関しては、会社法105条2項が株式会社について、剰余金配当請求権および残余財産分配請求権のいずれも与えない旨の定款の定めは無効であると定めるが、持分会社については会社法上、そのような内容の規定は存在しない(会社法621条・666条参照)。なお、NPO法人においては非営利性が明記されている(特定非営利活動促進法2条2項1号)。

(3) 公法人と私法人

公法と私法のいずれに準拠して設立されたかによって公法人私法人とに区別されることがある。公法人には、特定の行政目的のために設立された法人のほか、広義では国や地方公共団体も含まれる。

公法人・私法人の区別は、そもそも公法・私法の区別があいまいである上に、両者を区別する実益もないとされる。なお、国や地方公共団体などであっても、私法上の法律関係においては私人と対等の立場に立ち、私法の適用を受ける(35条参照)。

(4) 内国法人と外国法人

日本法と外国法のいずれに準拠して設立されたかによって内国法人外国法人とに区別される(税法上の区別とは異なる。)。外国法人のうち、法人格が承認(認許)されたものは、同種の内国法人と同一の権利能力を有する。ただし、外国人に対するのと同様の制限などがある(35条)。外国法人が日本国内に事務所を設けたときは、登記をしなければならない(36条・37条)。

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▼ 法人格否認の法理

法律上、法人とその構成員とは別個の法主体として扱われる。しかし、法人格が全くの形骸にすぎない場合や不正な目的のために濫用されているような場合にまで、法人という法形式の利用を認めることは適当ではない。

たとえば、会社という形態をとってはいるものの、その実質が個人企業にすぎず、会社という法形式が代表者の単なるわら人形にすぎないような企業体が現実に存在する。このような企業体が行う取引は、会社としてしたのか、それとも代表者個人としてしたのかが判然としないことが多く、それゆえ、取引の相手方の利益を害するおそれがある。

そこで、そのような場合に、問題となる法律関係に関するかぎりにおいて、法人という法形式を無視し、法人と背後の利用者である構成員(自然人または法人)とを同一視して扱おうとする考え方がある。これを法人格否認の法理と呼ぶ。法律上明文の規定はないが、判例によって確立されている法理である(最判昭44.2.27―ある会社Yが実質的に代表取締役Aの個人企業であると認められる場合において、Aが個人名義でなした和解をYの行為と解した)。

法人と構成員とが同一視される結果、法人の債権者は構成員に対して責任を追及することができ、または、構成員名義でなされた行為を法人がした行為として扱うことができる。(「法人格の否認」といっても、法人格が否定されて法人としてなした行為が無効になるわけではない。)

問題演習(国家試験過去問題)

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 選択問題

法人の剰余金又は残余財産に関する次の1から5までの各記述のうち、誤っているものはどれか。(平成21年司法試験短答式民事系第2問)

1.株主に剰余金の配当を受ける権利及び残余財産の分配を受ける権利の全部を与えない旨の株式会社の定款の定めは、その効力を有しない。

2.社員に残余財産の分配を受ける権利を与える旨の一般社団法人の定款の定めは、その効力を有しない。

3.一般社団法人の社員総会は、社員に剰余金を分配する旨の決議をすることができない。

4.解散をして清算をすることになった一般社団法人の残余財産の帰属が定款で定まらない場合において、その一般社団法人の社員総会は、その残余財産を社員に分配する旨の決議をすることができない。

5.設立者に残余財産の分配を受ける権利を与える旨の一般財団法人の定款の定めは、その効力を有しない。

 正解

民法総則のカテゴリー

法人法律行為意思表示代理無効と取消し条件と期限期間時効

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