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法人の不法行為責任

このページの最終更新日 2016年7月6日

【目次】

法人の不法行為責任の根拠

〔考察:一般法人法78条等と民法715条の比較〕

代表者の行為による法人の不法行為責任

1 一般法人法78条等の適用要件

〔考察:法人の不法行為責任の捉え方〕

2 「職務を行うについて」の意味―外形理論

3 取引的不法行為―民法110条の責任との関係

〔参考:市町村長の越権行為〕

機関個人の不法行為責任

1 代表者個人の不法行為責任

〔考察:機関個人の不法行為責任の位置づけ〕

2 役員等の第三者に対する不法行為責任

法人自体の過失責任

問題演習

コメント

▼ 法人の不法行為責任の根拠

法人も不法行為責任を負うが、その法的根拠ごとに責任の発生の態様が異なる。

(1) 代表者の行為による不法行為責任

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、一般法人法)78条は、「一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定する(同法197条により、一般財団法人について準用)。会社についても同様の規定が存在する(会社法350条・600条)。

(2) 被用者の行為による不法行為責任(使用者責任)

民法715条1項は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定する。法人の機関でない者(従業員)がした不法行為については、同条によって法人もその責任を負う。

(3) 法人が直接に負う不法行為責任

民法717条は土地の工作物の瑕疵について所有者が責任を負う旨定めており(土地工作物責任)、法人が所有者である場合には、同条によって法人が直接に(代表者や被用者の行為を介さずに)不法行為責任を負う。また、製造物の欠陥についてもその製造業者である法人が直接に責任を負う(製造物責任法3条)。民法709条による法人自体の過失責任については、後述する。

〔考察〕一般法人法78条等と民法715条の比較

法人は、代表者と被用者(従業員)のいずれであっても、その行為によって他人に損害を生じさせた場合には賠償責任を負う。加害行為者が代表者であるときは一般法人法78条等の規定が適用され、被用者であるときは民法715条が適用される。両規定の違いは、免責規定の有無にある。民法715条には使用者を免責する旨の規定があるが(1項但書)、一般法人法78条等には法人の免責規定が存在しない。しかし、民法715条の免責は事実上認められていないので、実際上の違いはないに等しい。いずれも加害行為者と法人とは連帯して責任を負い、また、法人は加害行為者に求償することができる(被用者に関して同条3項)。報償責任の原理が責任の実質的根拠とされる点も同じである。なお、民法715条は法人にかぎらず、使用者一般に適用される規定である。

▼ 代表者の行為による法人の不法行為責任

1 一般法人法78条等の適用要件

代表者の行為によって法人に不法行為責任が発生するための要件は、次のとおりである(一般法人法78条・197条、会社法350条・600条)。

 代表理事その他の「代表者」の行為であること

 「職務を行うについて」第三者に損害が発生したこと

 代表者の行為が不法行為の一般的要件(709条以下)を満たすこと

一般法人法78条等の規定は、法人の代表者、すなわち、理事・取締役などの代表権を有する機関がした行為についてのみ適用がある。法人の従業員(支配人や任意代理人など)の行為については、同条ではなく、民法715条が適用される。

〔考察〕法人の不法行為責任の捉え方

法人の不法行為責任を法的にどう捉えるかは、法人実在説と法人擬制説とで異なる。法人実在説は機関を法人の手足とみる立場であり、代表者の行為による不法行為責任は法人自体の不法行為(法人の不法行為能力)を認めたものであると説明する。この立場からは、一般法人法78条等は当然のことを規定したものにすぎない。これに対して、法人擬制説は法人とその機関とを別個の法主体とみる立場であり、代表者の行為による不法行為責任は、民法715条の使用者責任と同様に、他人(代表者)の不法行為について法人がその責任を負うもの(代位責任)であると理解する。他人の行為について責任を負わされる理由として、一般に、他人の行為によって利益を得ているのであるから、それによる不利益も負うべきであるとする考え方(報償責任の原理)が挙げられる。

関連事項

・法人の代表者とは  法人の代表

・法人実在説と法人擬制説との違い  法人とは

2 「職務を行うについて」の意味―外形理論

法人が代表者の不法行為について責任を負うのは、代表者がその「職務を行うについて」第三者に損害を発生させた場合にかぎられる。そこで、代表者の加害行為が「職務を行うについて」のものかどうかを判断する基準が問題となる。

この点に関して、判例・学説は、加害行為が「職務を行うについて」の範囲に含まれるかどうかを、行為者の主観的意図にかかわりなく、行為の外形からみて客観的に判断すべきであると解している。これを外形理論と言う。民法715条1項の「事業の執行について」という要件も、「職務を行うについて」と同じ意味であると解されている。

判例は、当初、職務または事業の執行であると言えるには、現に職務または事業の執行としてなすべきことが存在しなければならないとしていた(大判大7.3.27―穴戸倉庫玄米空渡し事件)。しかし、民法715条に関する大判大15.10.13以降の判例において外形理論が採用されるようになった。

判例の外形理論は、取引行為による不法行為を念頭に、取引の相手方の信頼を保護することを目的として形成されてきたものである。そうすると、事実行為については被害者の信頼は問題とならないのであるから、事実的不法行為について外形理論が妥当するかは問題である。

3 取引的不法行為―民法110条の責任との関係

(1) 取引的不法行為と法人の責任

不法行為には、事実行為によるもの(事実的不法行為)と取引行為によるもの(取引的不法行為)とがある。後者は、代表者がその職務を逸脱ないしは濫用して取引を行うような場合であるが、判例はこのような場合に、外形理論によって、法人の不法行為責任を肯定する(最判昭41.6.21―市長の越権行為について市の不法行為責任を肯定)。

〔参考〕市町村長の越権行為

取引的不法行為が問題となった事案の多くは、地方自治体の長(市町村長)の越権行為に関するものである。一般の法人においては、代表者が内部的制限を逸脱して取引しても、旧(平成18年改正前)民法54条(現在の一般法人法77条5項等)の適用によって法人は取引に関する責任を負うので、あえて法人の不法行為責任を問題とする必要はない。これに対して、自治体における市町村長の代表権の制限は法令による原始的制限であって、法人内部の制限ではないため、自治体には旧54条を適用することができなかった。そこで、旧民法44条(現在の一般法人法78条等)の適用(類推適用)によって自治体(法人)の不法行為責任を追及することが行われた(大判昭15.2.27など)。

(2) 民法110条との関係

ところで、代表者(被用者)がその職務権限を逸脱して取引した場合には、法人(使用者)が民法110条の表見代理責任を負うことがある。そこで、一般法人法78条等と民法110条との適用順序が問題となる。相手方保護という観点からすれば、まずは取引行為を有効にすべきであるという理由から、民法110条を優先的に適用すべきであるとする見解が有力である。

しかし、より重要な問題は、代表者の取引行為について民法110条の表見代理責任が否定された場合にもなお、一般法人法78条等の法人の不法行為責任が成立する余地を認めるべきかどうかである。

表見代理責任の規定は、取引の相手方保護のために認められたものである。一方、法人の不法行為責任の規定に関する外形理論の趣旨も、取引行為に関するかぎりで行為の外形に対する相手方の信頼を保護することにある。とすれば、双方の規定の間であまりに適用要件が異なってしまうのは、制度間のバランスを欠くものと言える。表見代理とのバランスを考慮するのであれば、法人の不法行為責任についても相手方の主観的事情を要件とすべきことになろう。

そこで、判例は、代表者のした行為が、その外形上、職務行為に属するものと認められる場合であっても、相手方がその行為が職務行為に属さないことを知っていたか(悪意)、または知らないことについて重大な過失のあったときは、法人は相手方に対して責任を負わないとする(最判昭50.7.14―町長の越権行為による手形裏書行為について相手方の重過失を理由に法人の責任を否定)。(判例のこの要件では、相手方に過失があるために表見代理が成立しない場合であっても、相手方が重過失でないかぎり、法人の不法行為責任が成立する余地がある。)

もっとも、政策的な観点からみて、表見代理の効果(権利義務の帰属)は認められないが、法人の不法行為責任(損害賠償責任)であるならば認めうるという場合もある。株券の偽造がその適例としてよくあげられる。

関連事項

・代表権の制限と取引相手方の保護について  法人の代表

・権限外の行為の表見代理(民法110条)について  権限外の行為の表見代理

▼ 機関個人の不法行為責任

1 代表者個人の不法行為責任

(1) 一般法人法78条等が適用される場合

一般法人法78条等によって法人が代表者の行為について不法行為責任を負う場合には、代表者個人も民法709条によって不法行為責任を負う(大判昭7.5.27)。

これとは対照的に、公権力の行使について国または公共団体が責任を負う場合(国家賠償法1条)には公務員個人は責任を負わないとされている(最判昭30.4.19)。

このような違いは、両者において政策的な考え方が異なることにもとづく。すなわち、公務員の場合には個人的責任の追及を認めると職務の執行に消極的になるおそれがあると考えるのに対して、法人の機関の場合にはむしろ個人的責任の追及は不法行為を抑止する機能が大きいと考えるのである。

法人の不法行為責任と代表者個人との不法行為責任とは、不真正連帯の関係に立つと解されている。

〔考察〕機関個人の不法行為責任の位置づけ

擬制説の立場からは、法人の不法行為責任は被害者保護のために認められた特別の責任であるから、まず代表者個人が責任を負うのは当然であるといえる。実在説の立場からは、代表機関の行為は法人自身の行為として観念されるのであるから、機関個人の不法行為責任を認めることは論理的でないと考えることもできる。しかし、実在説に立っても、機関の行為は法人としての行為の面と機関個人としての行為の面の二面性をもつのであって、機関個人の不法行為責任は後者の側面にもとづくものとして肯定することができる。

(2) 一般法人法78条等が適用されない場合

代表者の行為がその「職務を行うについて」の範囲外であると認められる場合は、代表者は個人的な不法行為責任(709条)を負うが、法人は責任を負わない。この場合、その行為に関与した他の機関も連帯して責任を負う(共同不法行為、719条)。

関連事項

・法人実在説と法人擬制説との違い  法人とは

2 役員等の第三者に対する不法行為責任

代表者以外の理事、取締役、監事、監査役、会計監査人などの役員等はどのような責任を負うか。

法人の役員等がその職務を行うについて悪意または重大な過失があり、それによって第三者に損害を与えたときは、その役員等は第三者に対して損害賠償責任を負う(一般法人法117条1項・197条、会社法429条1項・597条)。複数人が責任を負うときは連帯責任となる(一般法人法118条、会社法430条など)。

この責任は、役員等の任務懈怠について悪意(故意)または重過失があるときには、第三者との関係での故意または過失があるか否かにかかわらず認められる責任であって、民法709条の適用を排除するものではない。第三者に対する関係で故意または過失が認められる場合には、民法709条が適用されうる。

関連事項

・法人の組織・機関について  法人の設立・組織・公示

▼ 法人自体の過失責任

法人は、民法709条によって直接に不法行為責任を負うこともあるとする考え方が主張されている。

たとえば、公害事件において、公害の原因となる事業を行う企業に対してその責任を追及したいときに、企業内部の事情に疎い被害者側が特定の被用者の過失を立証しなければならないとするのは被害者側に酷であり、けっして公平であるとはいえない。

そこで、被害者側が過失を証明するときの負担を軽減するため、企業組織全体を一個の加害者としてとらえて企業(法人)自体の過失を認めようとするのである。

▼ 問題演習

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 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 一般社団法人は、代表者でない者が職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負うことはない。(司法平25-7-イ)

 正解

(1) 誤

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