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法人の代表

このページの最終更新日 2016年7月6日

【目次】

法人の代表とは

代表の意味/代表者の選任〔参考:表見代表理事・表見代表取締役〕〔参考:理事・取締役以外の法人代表者〕

代表者の権限と義務

代表者の権限〔考察:決議にもとづかない行為の効力〕/代表者の義務

代表権の制限と取引相手方の保護

法人内部における代表権の制限/法令による代表権の制限

代表権の濫用

問題演習

コメント

▼ 法人の代表とは

1 代表の意味

法人の活動は、現実にはその業務執行機関である自然人が担う。法人の業務執行機関は、内部的および対外的に法人の業務を執行する。このうち対外的な業務執行を代表と言い、対外的な関係で業務執行権限を有する者(機関)を法人の代表者代表機関)と言う。

法人と代表者との関係は、対外的に見れば、代表者が法人の機関として第三者との間でした行為の効果が法人に帰属するという関係にある。このような代表の法律関係は、代理の関係に準じて処理される。(一般に、「代表」については代理と同様に考えてよく、両者を厳密に区別する必要はないと考えられている。)

また、法人は、代表者の第三者に対する加害行為について不法行為責任を負うが、これについてはページを改めて述べる。

関連事項

2 代表者の選任

一般社団法人・一般財団法人、株式会社を例にとると、代表者は次のようにして選任される。

(1) 理事・取締役

法人の代表者は、一般社団法人の場合には理事であり、株式会社の場合には取締役である(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、一般法人法)77条1項、会社法349条1項)。理事または取締役が複数いるときは、代表理事または代表取締役が選任された場合を除き、各自が法人(会社)を代表する(一般法人法77条2項、会社法349条2項)。

(2) 代表理事・代表取締役

理事会または取締役会を設置している場合(一般財団法人は理事会が必置)には、その決議によって理事・取締役のなかから代表理事代表取締役を選定しなければならない(一般法人法90条3項・197条、会社法362条3項)。理事会・取締役会を設置していない場合であっても、定款、定款の定めにもとづく理事・取締役の互選または社員総会・株主総会の決議によって、理事・取締役のなかから代表理事・代表取締役を定めることができる(一般法人法77条3項、会社法349条3項)。

代表理事または代表取締役を定めた場合は、その他の理事・取締役は法人(会社)を代表することができない。

〔参考〕表見代表理事・表見代表取締役

代表理事以外の理事、または、代表取締役以外の取締役に対して、理事長や社長、副社長などのように法人を代表する権限を有するものと認められる名称を与えた場合には、その理事または取締役がした行為について、法人は善意の第三者に対してその責任を負う(一般法人法82条・197条、会社法354条)。

(3) 代表執行役

委員会設置会社における代表者は、取締役会において選定された代表執行役である(会社法420条1項)。

〔参考〕理事・取締役以外の法人代表者

法人(会社)内部の訴訟における法人の代表者は、社員総会(株主総会または取締役会)で定めた者、または、監事(監査役等)である(一般法人法81条・104条・197条、会社法353条・364条・386条など)。また、清算法人(清算会社)の代表者は、清算人である(一般法人法214条1項、会社法483条1項)。

関連事項

▼ 代表者の権限と義務

1 代表者の権限

法人の代表者は法人内外の業務を執行するが、対外的な業務を円滑に執行するために広範な代表権を有する。法人の代表者がその機関としてする対外的行為は、法人のためにする代理行為であると考えることができる。

(1) 包括代表権

代表者の代表権の範囲は、原則として法人の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為に及ぶ(一般法人法77条4項・197条、会社法349条4項・599条4項)。代表権はこのように包括的な権限であるだけでなく、後述するように内部的な制限を加えても善意の第三者に対抗できないという意味で不可制限的なものとされている(一般法人法77条5項・197条、会社法349条5項・599条5項)。

包括代表権は、他人を法人の代理人として選任する権限(復任権)を含む。これによって代表者は、特定の行為の代理を他人に委任することができる。もっとも、定款や総会決議によって復任権を制限することも可能である(特定非営利活動促進法17条の2参照)。

〔考察〕決議にもとづかない行為の効力

理事・取締役等の業務執行は、社員総会・株主総会や理事会・取締役会の決議、または、理事・取締役等の多数決にもとづいて行われるのが原則である(一般社団法人76条2項・90条2項・197条、会社法348条2項・362条2項・590条2項)。法人の代表者の対外的行為もこれらの決議にもとづいて行われなければならない。それでは、これらの決議にもとづかずになされた代表者の行為の効力はどうなるか(これは代表権の制限の問題ではない)。この問題に関する規定はなく、解釈に委ねられている。

(2) 単独代表の原則

代表者が複数いる場合でも、各自が単独で法人を代表する。共同代表(数人が共同してのみ法人を代表できる)の定めをすることはできるが、代表権の内部的制限にすぎず、善意の第三者に対抗することはできない(後述)。

関連事項

2 代表者の義務

法人の代表者は、理事・取締役としての一般的な義務を負う。

(1) 善管注意義務(忠実義務)

法人と理事・取締役との法律関係には、委任の規定が適用される(一般法人法64条・172条1項、会社法330条)。したがって、理事・取締役は、その職務を行うに際して善管注意義務を負う(644条)。

また、一般法人法83条(同法197条で準用)や会社法355条は、理事や取締役は、法人(会社)のため忠実にその職務を行わなければならないと定めるが、この忠実義務は通常の委任関係における善管注意義務と同一の義務であると解されている(最大判昭45.6.24)。

理事・取締役は、その任務を怠ったことにより法人に損害を与えたときは、法人に対して損害賠償責任を負う(一般法人法111条1項・198条、会社法423条1項)。

(2) 利益相反行為の制限

次のような取引は、法人と代表者との利益が相反する行為(利益相反行為)であって、代表者が自己または第三者の利益を図って法人の利益を害するおそれが大きい。

① 代表者が自己または第三者のために法人の事業の部類に属する取引をする場合(競業取引)

② 代表者が自己または第三者のために法人と取引するような場合(直接取引)

③ 法人が代表者の債務を保証するなど代表者以外の者との間において法人と代表者との利益が相反する取引をする場合(間接取引)

そのため、これらの取引については、社員総会・株主総会または理事会・取締役会などの事前の承認を得なければならないなどの特別の規制がなされている(一般法人法84条1項・92条1項・197条、会社法356条1項・365条1項・5941項・595条1項)。

代表者が、事前の承認を得ずに、上記②③のような取引(利益相反取引)を行った場合、その取引の効力はどうなるか。

この点に関して、平成18年改正前民法57条は、「法人と理事との利益が相反する事項については、理事は、代理権を有しない」と規定していたので、民法上、利益相反取引は無権代理行為であると解されていた。

しかし、会社法上は、取締役会等の承認を得ない利益相反取引の効力に関する規定はなく、当該取引は無効であるが、会社が第三者に対してその無効を主張するためには、第三者の悪意(承認がないことを知っていること)を立証しなければならない、と解されている(相対的無効)。

関連事項

▼ 代表権の制限と取引相手方の保護

1 法人内部における代表権の制限

(1) 包括代表権の内部的制限

法人も団体としての自律権を有することから、法人内部での取り決め、具体的には定款や社員総会・株主総会の決議によって代表者の包括代表権を制限することが可能である。

たとえば、代表者がある一定の取引を行うに際して理事会の承認決議を必要とする旨の制限を付加することができる。この場合、代表者が理事会の承認を経ずに行った取引の効果は、法人には帰属しない(無権代理)。

(2) 相手方の信頼を保護するための特別規定

代表者の内部制限違反の行為が無権代理行為となる結果、民法の一般原則にしたがって、取引の相手方は善意・無過失のときにだけ、民法110条などの表見代理規定の適用によって保護されることになりそうである。しかしそれでは、相手方は法人の代表者と安心して取引を行うことができないし、ひいては、包括代理権の原則に対する信頼が損なわれることになる。

そこで、法は、特別の規定を設けて、法人が代表者の代表権に加えた制限は善意の第三者(相手方)に対抗することができないとする(一般法人法77条5項・197条、会社法349条5項・599条5項)。上述の例では、法人は、理事会の承認を要するという制限を知らなかった相手方に対して、その制限を理由に無権代理であることを主張することができない。

この特別規定による保護は、包括代表権に対しては相手方に調査義務はないという意味で、相手方の過失の有無を問わない。表見代理と比較して相手方を一層保護している。

なお、善意についての主張・立証責任は相手方にある(後出最判昭60.11.29)。

(3) 民法110条の類推適用

しかし、民法の表見代理規定を適用する余地が完全にないわけではない。一般法人法77条5項等の法人法に特有の第三者保護規定は、第三者(取引の相手方)には代表権の内部制限を調査する義務がないという趣旨であるから、そこでいう「善意」とは、代表権に制限が加えられていることを知らないことを意味する(最判昭60.11.29―平成18年改正前民法54条についての説示)。

そうすると、たとえば、相手方が理事会の承認決議を必要とするという代表権の制限の存在を知っていたが、なんらかの理由でその理事会の承認があったものと信じた場合には、一般法人法77条5項等の適用はないことになる。

判例は、そのような場合において、相手方が、代表者が理事会の承認を得て適法に法人を代表する権限を有するものと信じ、かつ、そう信じるにつき正当の理由があるときには、民法110条を類推適用し、法人は代表者の行為について責任を負うとする(前出最判昭60.11.29)。(類推適用とするのは、法人の代表と通常の代理を一応区別しているからである。)

一般法人法77条5項等の法人法に特有の第三者保護規定と、一般原則である表見代理規定とでは、保護の対象とする信頼がそれぞれ異なる。前者が保護するのは、代表者の包括代理権に対する信頼である。これに対して、後者が保護するのは、個別の行為について代理権が存在することに対する信頼である。

関連事項

2 法令による代表権の制限

代表者の権限が法令によって制限されることがある。

(1) 市長村長の越権行為

たとえば、市町村長は現金を出納(授受)する権限をもたない(会計管理者の専権である。地方自治法149条・170条)。それゆえ、市町村長がその自治体の代表として第三者から金銭を借り受ける合意をしてその交付を受けたとしても、その金銭借入れ(消費貸借)の効果はその自治体には帰属しない(消費貸借契約は金銭等の交付を成立要件とする要物契約であるが(587条)、市町村長には金銭の交付を受ける権限がないからである)。したがって、市町村長の借入れ行為は、無権代理行為となる。

判例は、このような法令による代表権の制限の場合において民法110条の類推適用の可能性を認める(大判昭16.2.28、上例の事案につき最判昭34.7.14)。もっとも、代表者が権限を有しないことが法令の規定上明らかである以上、正当な理由は容易には認められない(110条の類推適用を肯定した例として最判昭39.7.7、最判昭40.12.14)。

なお、法令による代表権の制限には、一般法人法77条5項等を適用する余地がない。なぜなら、法令による制限は代表権の原始的制限であって、法人内部において包括代表権に加えられた制限ではないからである。法令の不知は保護されないということも理由にあげられることがある。

(2) 基本約款上の目的

民法34条の法人の目的による制限を代表権の制限であると解する見解がある。この見解によると、目的の範囲を逸脱した行為は無権代理行為となるから、民法110条の適用によって会社の利益と取引相手方の利益を調整することになりそうである。

しかし、通常の代理におけるのと同じように同条を適用してよいかは問題である。目的による制限は34条を根拠とする外部的制限であることを考慮すると、法令による制限に準じて正当理由の認定を厳しくするべきであると言える。また、ある種の法人においては、目的による制限が法人とその構成員の利益を保護する役割を果たすのであるが、そのような場合にまで法人に責任を負わせてよいかは疑問である。

関連事項

▼ 代表権の濫用

代表権の濫用とは、表面的には代表権の範囲内の行為であるが、代表者が自己または第三者の利益を図る意図で取引をした場合を言う。この場合、代表者がした行為の効力はどうなるか。取引の相手方をどの程度保護すべきかという観点から問題となる。

(1) 相手方に過失がある場合に行為を無効とする立場

判例は、原則として法人に行為の効果が帰属するが、心裡留保に関する民法93条ただし書を類推適用して、取引の相手方が代表者の真意(濫用の意図)を知りまたは知りうべきものであったときは、行為の効力が生じないとする(最判昭38.9.5)。これは代表者の行為がその権限内に属するものであること(有権代理)を前提とする。

学説には、代表者の権限濫用の場合を無権代理として構成するものもある。この見解によれば、善意・無過失の相手方は民法110条の適用ないし類推適用によって保護されることになる。

いずれの見解によっても、過失ある相手方の保護は否定される。

(2) 相手方に過失がある場合にも行為を有効とする立場

過失のある相手方を保護する見解もある。代表権の濫用を有権代理として構成して、相手方が悪意または重過失の場合には、信義則または権利濫用禁止の原則(1条2項3項)によって、法人は相手方に対して行為の無効を主張することができるとする見解がある。

また、代表権の濫用を無権代理として構成して、善意の相手方は内部制限に関する一般法人法77条5項または会社法349条5項等の類推適用により保護されると解する見解もある。

関連事項

▼ 問題演習

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 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 代表理事その他一般社団法人を代表する者を定めていない場合には、各理事は、単独で一般社団法人を代表する。(司法平25-7-ア)

 正解

(1) 正

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