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法人の能力(目的の範囲)

このページの最終更新日 2016年7月6日

▼ 法人の権利能力の制限

法人も自然人と同じく権利能力を有するが、自然人と異なり、法人の権利能力には次のような制限が存在する。

(1) 性質による制限

法人はその性質上、身分上の権利や労働者の地位などのように自然人が生命・肉体を基礎として享有する権利を享有することができない。しかし、法人も社会の構成単位である以上、名称権や名誉権(最判昭39.1.28)のような人格権は認められる。

〔参考〕法人の名称

法は、他人が、不正の目的をもって、ある法人の名称あるいはその法人と誤認されるような名称・商号を使用することを禁止している。法人は、他人に名称を不正利用されることによって利益を侵害され、または侵害されるおそれがあるときは、その者に対して侵害の停止または予防を請求することができる(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、一般法人法と略称)7条、会社法8条)。

(2) 法令による制限

法人は法によって権利能力を与えられるものであるから、法によってその権利能力を制限することも可能である(34条)。たとえば、法人は、一般社団法人・一般財団法人の役員や株式会社の取締役になることができないとされている(一般法人法65条1項1号・177条、会社法331条1項1号)。なお、法人であっても無限責任社員となることは可能である。

(3) 基本約款上の目的による制限

法人は、定款などの基本約款において、その事業内容である目的を定めなければならない(一般法人法11条1項1号・153条1項1号、会社法27条1号など)。そして、民法34条は、法人は、「定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」と規定する。これは、文言を素直に読めば、法人の権利能力を基本約款上の目的によって制限したものと解することができ、判例もまたそのように解している。

しかし、学説上は、次に述べるように、目的によって制限されるものが何であるかについて見解が対立している。

〔参考〕民法34条の営利法人への適用

民法34条(平成18年改正前民法43条)は、イギリス法の制度であるウルトラ・ヴァイレースの法理に由来する。平成18年改正前は、法人に対する後見的保護の不当性や取引の安全を理由として、会社などの営利法人に対しては本条の適用(類推適用)はないとする見解が商法学者によって主張されていた。しかし、同改正によって、本条は営利法人にも適用されることが明記された(33条2項)。なお、実務上、会社の定款は事業目的を広く列挙してかつ包括的に定めるのがふつうであり、そのような会社において目的による制限が問題となることはまずない。

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▼ 目的による制限の意味

民法34条は法人の目的による制限について規定するが、目的によって制限されるものが何であるかについて、次のように見解が分かれる。

いずれの見解によっても、目的の範囲外とされた行為の効果は法人に帰属しない。しかし、追認によって効果を帰属させる余地があるかないかという点に違いが生じる。

(1) 権利能力制限説(判例)

民法34条は法人の権利能力に関する制限について定めた規定であると解する見解であり、起草者および判例の立場である。法人はその目的を実現するために法人格を与えられる以上、法人の権利能力もその目的の範囲内で認めれば足りると考える。

この見解によると、目的の範囲外とされる行為はすべて無効となり、追認によって有効とする余地はない。

この見解に対しては、①ある行為が目的の範囲内であるかどうかの判断は必ずしも容易であるとはかぎらないので、目的の範囲外の行為をすべて無効とすることは取引の安全を害するおそれがある、②不法行為をすることが法人の目的の範囲内とされることは通常ありえないから、法人が不法行為責任を負うことの説明が困難である、といった批判がなされている。

(2) 代表権制限説

法人の権利能力が目的によって制限されることと、法人自身が不法行為責任を負うことは、理論的に整合しない。そこで、民法34条は、法人の権利能力ではなく、代表者の代理権代表権)を制限したものであるとする見解が主張されている。

この見解による場合、目的の範囲外とされる行為は無権代理行為となり、追認によってその効果を法人に帰属させる余地が生ずる。また、表見代理によって法人が責任を負うことも考えられる。

この説に対しては、次のような批判がある。①法人の追認を認めることは実質的に法人の目的の変更を認めるに等しく、基本約款上に目的を定めさせてその変更に特別の要件を課していること(一般法人法49条2項4号、会社法309条2項11号)が無意味となる。(この点に配慮して、追認の要件として基本約款の変更と同様の要件を課す見解もある。)また、②法人に追認するかどうかの選択権を認めることによって、法人は自己に有利な行為のみを引き受け、不利な効果をもたらす行為を拒むことができることになるが、これは法人の利益を不当に保護するものである。

〔考察〕法人の行為能力

民法34条を法人の行為能力の制限を定めた規定であると解する見解もある。法人の行為能力という概念は、法人自身の行為という観念を肯定する立場から認められるものであるが、法制度上の概念ではなく、法人の行為能力を制限することによってどのような効果が生じるのかは明確でない。目的の範囲外の行為を追認によって有効とする余地を認めるのであれば、代表権制限説に対するのと同様の批判が成り立つ。もっとも、法人の活動が代表者の代理によってなされるものであることを考えると、法人の行為能力の制限という問題は、代表権の範囲の制限問題に解消すべきであると考えることもできる。

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▼ 目的の範囲の判断

1 営利法人の場合

上述のとおり、法人の活動は基本約款上の目的の範囲内に制限される。そこで、目的の範囲内か否かをどのような基準によって判断すべきかが問題となる。

判例は、営利法人の目的の範囲を広く解する一方、非営利法人の目的の範囲については比較的厳格に解する傾向がある。

(1) 判例の判断

判例は当初、営利法人(会社)についての目的の範囲を厳格に解していた。しかし、その後の判例で、会社の目的を遂行するうえで必要な行為はすべて目的の範囲内の行為であるとし、目的遂行に必要か否かはその行為を客観的、抽象的に観察して判断すべきものとされるようになった(最判昭27.2.15など)。

判例は、このような一般的基準を示しながら、目的による制限を事実上認めないと評されるほどに目的の範囲を広く解している(たとえば、最大判昭45.6.24―政党への政治資金の寄付を会社の目的の範囲内の行為であると判示した)。

〔参考〕最判昭45.6.24(八幡製鉄政治献金事件)

「会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するわけであるが、目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに包含されるものと解するのを相当とする。そして必要なりや否やは、当該行為が目的遂行上現実に必要であつたかどうかをもつてこれを決すべきではなく、行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断されなければならないのである」「会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎりにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げない」

(2) 判例の評価

営利法人の事業活動は最終的には利益追求のための活動であって、基本約款上の事業目的は利益追求を実現するための一手段にすぎない。それゆえ、営利法人に関するかぎりにおいて、基本約款上の目的によってその活動を制限することに合理的な理由はない。また、目的による制限を認めることによって、法人が取引をした後になって目的の範囲外であることを理由に責任を逃れることを許すことになるが、これは取引の相手方の信頼を害する。

以上の考慮から、営利法人の場合には目的による制限を極力認めるべきではなく、判例の判断は一般に支持されている。

なお、非営利法人であっても、一般社団法人などは営利法人と同様の経済的機能を営むことができるのであって、そのような法人の場合には、営利法人と同様に目的による制限を認めるべきではないだろう。

2 非営利法人の場合

営利法人と異なり、非営利法人においては、法によって法人の事業目的が定められており、また、法人の行うことができる事業ないし業務が限定されていることがある(農業協同組合法10条、医療法42条など)。この法政策上の違いから、非営利法人の場合には目的の範囲を比較的厳格に解する必要がある。

判例は、非営利法人の目的の範囲についても、営利法人の場合と同一の判断基準を示している(最判昭44.4.3、最判昭45.7.2―ともに協同組合の手形行為に関するもの)。しかし、実際には、行為の必要性については客観的・抽象的というよりも、法人の種類ごとに特有の事情を考慮しつつ具体的に判断している。

(1) 協同組合の場合

法が政策的見地から法人の事業ないし業務を限定している場合には、その範囲を逸脱する行為の効力が否定されることがある。

たとえば、協同組合においては、「組合員の事業又は生活に必要な資金の貸付け」(農業協同組合法10条1項2号)や、「会員に対する資金の貸付け」(労働金庫法58条1項2号)がその事業ないし業務の一つとして定められているが、これとの関係上、員外貸付(組合員・会員以外の者に対する金銭の貸付け)の効力が問題となる。

判例は、員外貸付を目的の範囲外の行為であるとして無効とする(農業協同組合に関する最判昭41.4.26、労働金庫に関する最判昭44.7.4)。

〔参考〕員外貸付を有効とした例

もっとも、判例のなかには、法人(農業協同組合)がその経済的基礎を確立するために事業(リンゴの委託販売)を計画し、その取引業者(非組合員であるリンゴ移出業者)に対して事業遂行のために必要な資金を貸し付けたという事案において、その員外貸付は附帯事業(農業協同組合法10条1項15号参照)の範囲内に属すると判示したものもある(最判昭33.9.18)。

(2) 公益法人の場合

法人の財産がその事業目的を維持するために必要である場合には、それを処分する行為が無効となることがある。

たとえば、病院経営を目的とする財団法人が目的外の新規事業のために病院設備を売却した事案において、その売買契約を無効とした判例がある(最判51.4.23)。

〔参考〕信義則による無効主張の制限

取引行為が目的外であるために無効とされる場合であっても、無効の主張が信義則によって制限されることがある(上掲最判昭44.7.4―法人と取引した者からの無効の主張を制限、上掲最判昭51.4.23―法人からの無効の主張を制限)。

(3) 強制加入団体の場合

税理士会は、税理士としての登録を受けた者が当然に会員となる団体であって(税理士法49条の6参照)、税理士でない者は税理士業務を行ってはならないと定められている(同法52条)。したがって、税理士会は、実質的には脱退の自由のない、いわゆる強制加入団体である。

税理士会の強制加入団体という性格上、その構成員である会員にはさまざまの思想・信条を有する者が当然に予定されている。それゆえ、その目的の範囲を判断するに当たっては、会員の思想・信条の自由を害することのないように特別な配慮が必要となる。

同様のことは、弁護士会や司法書士会のようなその他の強制加入団体に関しても言える。

税理士会のような強制加入団体である法人に関する判例として、他団体への寄付が目的の範囲に属すると言えるかどうか、また、そのための金銭負担を会員に義務付けることができるかどうかが問題となったものがある。

① 最判平8.3.19(南九州税理士会事件)

政治資金規正法上の政治団体に政治資金を寄付する目的で会員から特別会費を徴収する旨の税理士会の決議の効力が問題となった判例である。

「税理士会が政党など規正法上の政治団体に金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するためのものであっても、法〔税理士法〕49条2項〔現同条6項〕で定められた税理士会の目的の範囲外の行為であり、右寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効である」と判示した。

その理由として、政治団体に対して寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏をなすものとして会員各人が市民としての立場に立って自主的に決定すべき事柄であり、公的な性格を有する税理士会が、このような事柄を多数決原理によって団体の意思として決定し、構成員にその協力を義務づけることはできない旨を述べている。

② 最判平14.4.25(群馬司法書士会事件)

被災地の司法書士会に復興支援拠出金を寄付する目的で会員から復興支援特別負担金の徴収を行う旨の司法書士会の決議の効力が問題となった判例である。

拠出金の寄付を司法書士会の権利能力の範囲内にあると認定し、負担金の徴収は会員の政治的または宗教的立場や思想信条の自由を害するものではなく、その旨の決議は有効であると判示した。

①の事件と異なり、寄付の目的が被災した同業友会に対する経済的支援であることに注意する必要がある。

問題演習(国家試験過去問題)

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(掲載予定)

 正解

(掲載予定)

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