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公序良俗違反

このページの最終更新日 2015年9月29日

【目次】

内容の社会的妥当性

〔解説:一般条項とは〕

〔考察:公序良俗概念〕

公序良俗違反の行為

〔考察:強行規定違反と公序良俗違反の関係〕

動機の不法

公序良俗違反の効果

〔解説:不法原因給付とは〕

問題演習

コメント

▼ 内容の社会的妥当性

法律行為の内容は、反社会的なものであってはならない(社会的妥当性の要件)。民法90条は、「公の秩序又は善良の風俗に反する」内容の法律行為は無効であると定める(同条にいう「目的」は、「内容」という意味である)。公の秩序と善良の風俗は、区別されずに一括して扱われる。二つあわせて公序良俗と呼ぶ。

民法90条は、公序良俗違反、すなわち、反社会的な法律行為を無効とするが、具体的にどのような行為が公序良俗違反に該当するのかは解釈に任されている。

〔解説〕一般条項とは

民法90条のように、抽象度の高い文言によって包括的に要件が定められた規定を一般条項と呼ぶ。一般条項は、その適否を柔軟に決定することができるので、具体的事案に即して妥当な問題解決をはかることができる。しかし、その反面、裁判所の解釈の余地が広いため、法的安定性を害するおそれがある。民法に規定された一般条項としては、90条のほかに、1条2項(信義誠実の原則)、同条3項(権利濫用の禁止)、770条1項5号(婚姻を継続し難い重大な事由)がある。

〔考察〕公序良俗概念

伝統的な学説は、公序良俗概念を社会的妥当性の意味に捉えて、社会的妥当性を欠く行為を絶対無効であるとしてきた。だが、近時は、公序良俗概念を再構成する試みがある。有力な見解として、社会的公序と経済的公序を対比させたり、個人の基本権保護と結び付けて考えたりする学説がある。これらの学説の特徴は、公序良俗に反する行為を類型化することによって、違反の効果を柔軟に判断する点にある。

▼ 公序良俗違反の行為

公序良俗の内容は、時々の政策や時代の風潮によって変化する。公序良俗に違反する行為にはさまざまなものがあるが、判例・学説によって公序良俗違反が問題とされた行為を整理すると次のようになる。

(1) 家族秩序・性道徳に反する行為

めかけ関係を維持するために扶養料を支払う旨の契約(妾契約)は無効である(大判大9.5.28)。売春や私通を目的とする契約も無効である。しかし、婚姻外の性的交渉をやめることを慰謝する目的で金銭を支払う契約(手切金契約)は有効とすべきであると考えられている(大判昭12.4.20)。また、妻子ある男性が不倫関係にあった女性に遺産の3分の1を包括遺贈したのを有効とした判例がある(最判昭61.11.20)。このほか、父と子との間で、子が母と同居しない旨の契約をしたのを無効とした判例がある(大判明32.3.25)。

(2) 自由を極度に制限する行為

かつて、親が置屋おきやから高額の前借金ぜんしゃくきんを受け取り、その返済に充てるため娘を芸者や娼妓しょうぎ(売春婦)として働かせるという契約が存在した。これを芸娼妓げいしょうぎ契約と言うが、その実体は人身売買にほかならない。芸娼妓契約は、前借金契約(金銭消費貸借)と強制稼働契約(娘が働いた分の稼ぎを借金の返済に充て、娘が足抜あしぬきした(逃げた)ときは違約金を支払うという約束)の二つの部分から構成される。戦前の判例には、強制稼働契約部分を無効としながら、前借金契約部分を有効として、貸主は貸金の返還を請求できるとするものがあった。しかし、その後、前借金契約部分も無効であり、貸主は貸金の返還を請求することができないと判示した(最判昭30.10.7)。

現在は、労働基準法によって、保護者が未成年者に代わって労働契約を締結したり、使用者が前借金と賃金を相殺したりすることが禁止されている(同法58条1項・17条)。

なお、集団の規則に共同絶交の制裁を付することを無効とした判例がある(大判昭3.8.3)。

(3) 犯罪にかかわる行為(射倖しゃこう行為)

犯罪をすること、しないことを目的とする契約や、それを助成する行為は無効である。賭博とばくに関係する金銭の貸借について判例がある。賭場開帳の準備資金として金銭を貸す契約は無効である(最判昭61.9.4)。賭博で負けてつくった借金を支払うための金銭を貸すことも無効である(大判昭13.3.30)。

(4) 暴利行為

他人の窮迫・無経験に乗じていちじるしく過当な利益を得る行為(暴利行為)は公序良俗違反により無効である(大判昭9.5.1)。不当に高い利息を要求することや、過大な賠償額の予定、債権額にくらべて不相当に高価な物を直流担保の目的物とすることなどがこれにあたる。

判例はかつて、代物弁済予約において目的不動産の価額が被担保債権額を大幅に上回る場合を90条違反としていた。しかしその後、債権者に清算義務が課され、さらに仮登記担保法が制定されたことによって、90条の問題ではなくなった。

クラブホステスが客の飲食代金債務について経営者に対して保証(立替)責任を負うこと(ホステス保証)が90条違反になるかが問題とされている。判例には、これを有効としたものがある(最判昭61.11.20)。

(5) 不公正な取引方法

相手の無知・軽率につけ込んだ勧誘方法によって取引をした場合、たとえ取引自体の内容が不当でなくても、著しく不公正な方法による取引であるとして無効となる。先物取引についての知識のない主婦に対して、リスクを明確にしないで執拗に金地金の先物取引の委託を勧めた事案で、委託契約を公序良俗に反し無効であるとした判例がある(最判昭61.5.29)。

(6) 公正な競争を阻害する行為

談合(請負入札において価格や落札者を業者間で調整し、落札業者から他の業者に金銭や工事の一部を分配したりすること)は、公正な競争を阻害するものであるから、公序良俗に反し無効である。

(7) 憲法的価値に反する行為

平等権に関して、男女別定年制(就業規則で定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めていた)を90条違反により無効とした判例がある(最判昭56.3.24)。また、入会集団の会則のうち入会権者の資格について男子孫と女子孫とで扱いが異なる部分を90条により無効とした判例がある(最判平18.3.17)。

経済活動の自由を制限する行為(競業禁止契約や専属供給契約など)については、不当に広範囲な制限でないかぎり、90条に違反しないと解されている(大判昭7.10.29―競業禁止契約)。

労働者の権利に関するものとして、ユニオン・ショップ協定の一部を90条により無効とした判例がある(最判平元.12.14)。

(8) 取締規定に反する行為

取締規定に反する行為が、取締規定そのものを根拠にして無効とされるのではなく、90条によって無効とされることがある。たとえば、食品衛生法違反であると知りながら有毒性物質が混入したアラレを製造・販売したという事案において、売買契約を90条違反により無効とした判例がある(最判昭39.1.23)。

〔考察〕強行規定違反と公序良俗違反の関係

通説は、強行規定違反と公序良俗違反とで法律行為を無効とする根拠が異なると考える(それぞれ91条、90条)。この立場は、法令の規定に反する法律行為の効力を、その規定の趣旨・目的によって判断する。これに対して、強行規定違反を公序良俗違反の一場合として扱い、90条違反を無効の根拠とする立場もある。この立場からは、およそ法令違反の行為の効力は、公序良俗に反するか否かによって判断されることになる。

(9) 不当な内容の契約条項

約款における個別の条項が一方的に事業者側に有利であるような場合、その規定を90条違反として無効とすることがある。

関連事項

▼ 動機の不法

たとえば、殺人をする動機でナイフを購入する契約は、その内容(ナイフの購入)そのものは公序良俗違反ではないが、その動機(殺人)において不法(公序良俗違反)であると言える。このような法律行為は、不法な結果を防止するために無効とすべきである。判例も、不法な動機でなされた法律行為を公序良俗違反により無効とする(前掲大判昭13.3.30―賭博による借金返済のための消費貸借)。しかしまた、一方当事者の内心を理由に法律行為を無効とすることは取引の安全を害する。そこで、学説は、相手方が不法な動機を知っていたことを無効の要件としている。

▼ 公序良俗違反の効果

前述したように、公序良俗に反する法律行為は無効である(90条)。法律行為全体が無効となるのが原則であるが(全部無効)、学説は一部のみを無効とすることも認めるべきであるとする(一部無効)。たとえば、過大な損害賠償額の予定が公序良俗違反とされる場合には、相当な賠償額に限定すれば足りるとする。

公序良俗違反の法律行為にもとづく給付は不法原因給付(708条)となり、返還請求をすることができない。たとえば、金銭消費貸借契約が公序良俗違反により無効とされる場合には、貸主は借主に対して貸金の返還を請求することができない(前掲最判昭30.10.7)。

〔解説〕不法原因給付とは

原則として、無効な法律行為にもとづいてなされた給付は、不当利得として返還しなければならない(703条・704条)。しかし、不法な原因にもとづいて給付した者は、その給付した物の返還請求ができない(708条本文)。もっとも、不法な原因が受益者についてのみ存在するときは、返還請求が可能である(同条但書)。

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 食品の製造業者Aが、有害性物質甲の混入した食品の販売を法令が禁止していることを知りながら、あえて甲の混入した食品を製造し、これをその混入の事実を知る販売者Bに継続的に売り渡す契約を締結した場合、この売買契約は無効であるから、BはAに対してその代金支払の義務を負わない。(司法平25-1-2)

 正解

(1) 正

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