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法律行為とは

このページの最終更新日 2015年12月31日

▼ 法律要件と法律効果

法律的に意味のある一定の事実が生じると、その結果として、権利が発生したり消滅したりする。これを権利(私権)の変動と呼ぶ。たとえば、ある物を売る買うという合意がなされることによって、買主・売主それぞれに、目的物を引き渡すことを要求する権利や、代金を支払うことを要求する権利が発生する。この権利の発生・消滅原因である事実を法律要件と呼び、権利の発生・消滅という結果を法律効果という。これから説明する法律行為は、いくつかある法律要件の種類の一つである。

法律要件・法律効果
【図】法律要件・法律効果

〔参考〕法律要件を構成する要素を法律事実という。たとえば、相続の法律要件は人の死亡という一つの法律事実で構成され、また、契約という法律要件は申込みと承諾の意思表示という二つの法律事実から構成されている。法律事実は、人の死亡や時の経過といった自然的事実から、意思表示などの人の行為、内心の状態(知・不知や不注意)にいたるまでさまざまである。具体的にどのような法律事実が備わった場合にどのような内容の権利変動が生じるかについては、民法の各条文に規定されている。

▼ 法律行為と法律行為自由の原則

● 意思内容どおりの効果を生じさせる法律要件

法律行為は、当事者がした意思表示の内容どおりの法律効果を発生させる法律要件である。たとえば、ある物を「売りたい」という意思表示と、それを「買いたい」という意思表示が合致することによって売買の合意が成立し、その合意にもとづいて代金請求権と目的物の引渡請求権が発生する。すなわち、「目的物を引き渡す代わりに代金を受け取りたい」「代金を支払う代わりに目的物を引き渡してほしい」という意思表示(合意)に対して、その内容どおりの法律効果(権利・義務)が発生する。

法律行為の概念図
【図】法律行為の概念図

このように、一定の法律効果の発生を意欲する意思を表示することにより、その欲した内容どおりの効果が生じる制度が法律行為である。法律行為の特徴は、この意思表示を不可欠の要素とする点にあり、この点で他の法律要件と異なっている。

なお、ふつう「法律行為」という場合には、後述する「契約」を想定していることがほとんどである。したがって、とくに断りがないかぎり、法律行為を契約に置き換えて考えてよい。

● 法律行為自由の原則

法律行為は、当事者が自由に行うことができる。すなわち、法律行為を行うか否か、相手方を誰にするか、どのような権利・義務の内容にするか、どのような方式で行うかといったことは、当事者が自由に決定することができる事柄であって、外部からの干渉を受けないのが原則である。これを法律行為自由の原則(契約自由の原則)と呼ぶ。

個人はその自由な意思にもとづいて権利・義務の関係(法律関係)を形成することができるという思想を、私的自治の原則と呼ぶ。法律行為自由の原則とは、この私的自治の原則を、法律行為という法技術的概念を用いて言い改めたものである。

〔考察〕普通取引約款  今日の経済取引は、大量かつ頻繁になされることを特徴とする。そこでは効率的・画一的な処理が要求されるから、取引の内容も必然的に定型的なものになる。すなわち、一方当事者である企業があらかじめ作成した契約条項群を前提に、他方当事者である一般市民がそれを包括的に承認するという形で取引が行われる。このような取引における契約条項を普通取引約款、あるいは単に約款という。企業の相手方には約款に従うか拒絶するかの自由があるだけであり、個々の条項についての交渉や合意がなされているわけではなく、相手方がその存在・内容を知っているとも限らない。それにもかかわらず、約款は拘束力をもつと考えられているが、その拘束力の根拠についてさまざまな学説が提唱されている。

▼ 準法律行為

法律行為と似ているが区別すべきものとして準法律行為がある。準法律行為は、なんらかの意思的要素をともなう行為であるが、法律行為とは異なり、意思内容どおりの効果ではなく、法律によって定められた効果が発生する行為である。

たとえば、売買契約において当事者の一方が相手方に対して義務の履行を催告すると契約解除権が発生する(541条)。催告は「履行の催促」という意思の表現からなる法律要件であるが、それによって発生する法律効果は「解除権」であり、法律要件と法律効果が内容的に対応していない。つまり、催告という準法律行為によって生じる効果は、その意思内容の実現ではなく、法律によってあらかじめ定められた内容であるにすぎない。

準法律行為には、意思の通知(例、催告、受領拒否)と観念の通知(例、債務承認、債権譲渡の通知)とがある。(さらに、現行民法にはないが、感情の表示も準法律行為の一種である。)

〔参考〕意思の通知や観念の通知は意思の表現をともなう行為であるが、これに加えて、さらに、無主物先占(239条)や遺失物拾得(240条)、事務管理などの意思の表現をともなわない行為を準法律行為の外延に含めることもある。

▼ 法律行為の種類

● 契約・単独行為・合同行為

法律行為は意思表示を要素とするが、意思表示の数や結合のしかたによって次のように分類される。とくに契約と単独行為は、民法を学ぶうえで基本となる概念である。

(1) 契約

契約とは、相対する二つ以上の意思表示が合致することにより成立する法律行為を言う。たとえば、「売りたい」という意思表示(申込み)に対し、「買いたい」という意思表示(承諾)がなされることによって、売買契約という一つの法律行為が成立する。民法は、13種類のタイプの契約について規定を設けている(民法第三編第二章「契約」参照)。しかし、民法その他の法律に規定されていないタイプの契約を締結することも当事者の自由である(契約自由の原則)。

(2) 単独行為

単独行為とは、一つの意思表示によって成立する法律行為を言う。単独行為には、取消し(120条・123条)のように相手方の意思表示の受領を必要とするものと、遺言のように相手方の意思表示の受領を必要としないものとがある。前者を相手方のある単独行為と呼び、後者を相手方のない単独行為と呼ぶ。

〔参考〕単独行為の例  相手方のある単独行為の例として、取消し、追認(122条)、本人の追認・追認拒絶(113条)、時効の援用、時効の利益の放棄、選択債権の選択、相殺、債務の免除、解除、買戻しなどがある。相手方のない単独行為の例として、所有権の放棄、相続の放棄、遺言などがある。

(3) 合同行為

合同行為は、同方向に向けられた複数の意思表示の合致により成立する法律行為である。契約と同じく複数の意思表示からなる法律行為であるが、意思表示の向けられた方向が相対せずに同じである点が契約と異なると説明される。合同行為の例として、社団法人設立行為や総会決議が挙げられる。

契約・単独行為・合同行為
【図】契約・単独行為・合同行為

〔考察〕法律行為概念の有用性  法律行為という概念は、契約、単独行為、合同行為の概念の共通項(意思表示を要素とする法律要件)を抽出して構成された上位概念である。法律行為は民法典に規定されている概念であるが、解釈技術的にこのような概念を立てることの有用性が疑問視されている。

● 要式行為と不要式行為

法律行為の要件として一定の方式(書面の作成や届出など)が必要とされるか否かによる分類である。必要とされるものを要式行為と言い、不要とされるものを不要式行為と言う。

法律行為自由の原則はその内容として方式の自由をも含むから、法律行為の方式をどのようにするかは当事者が自由に決定できるのが原則である。しかし、さまざまな理由から、一定の方式が要求される行為もある。たとえば、婚姻や縁組のような身分行為は、それを公示する必要などから、届出が要求されている。また、保証契約は、保証人となる者に慎重な考慮を促すために、書面の作成を要する(446条2項)。

〔参考〕要式行為の例  要式行為の例として、保証契約や定款の作成、婚姻、養子縁組、認知、遺言、任意後見契約、手形の振出し、定期借地借家契約などがある。

● 物権行為・債権行為

物権の変動を目的(内容)とする法律行為を物権行為と呼び、債権関係の発生を目的とする法律行為を債権行為と呼ぶ。前者の例として抵当権設定契約があり、後者の例として売買契約や賃貸借契約がある。物権行為は、債権譲渡のような物権以外の権利の変動を目的とする行為とあわせて処分行為と呼ばれることがある。

● 財産行為・身分行為

売買契約や抵当権設定契約などのように財産法上の効果が発生する行為を財産行為と言い、婚姻や養子縁組などのように身分法上の効果が発生する行為を身分行為と言う。身分行為に対しては、民法総則の規定を適用すべきではない場合が多い。

問題演習(国家試験過去問題)

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 債権者が債務者に対してあらかじめ弁済の受領を拒絶する旨を表示することは、法律行為に当たる。(司法平27-1-ウ)

(2) 債務の消滅時効が完成する前に、債務者が債権者に対してその債務の承認をする旨を表示することは、法律行為に当たる。(司法平27-1-オ)

(3) 代理権を有しない者が本人のためにすることを示して契約を締結した場合、本人がその契約の相手方に対して追認を拒絶する旨を表示することは、法律行為に当たる。(司法平27-1-ア)

(4) 2人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときに、債務者の一方が相手方に対してその対当額について相殺をする旨を表示することは、法律行為に当たる。(司法平27-1-エ)

(5) 債権者が債務者に対してその債務を免除する旨を表示することは、法律行為に当たる。(司法平27-1-イ)

 正解

(1) 誤  (2) 誤  (3) 正  (4) 正  (5) 正

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