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法律行為の成立と解釈

このページの最終更新日 2015年9月25日

【目次】

法律行為の成立

1 法律行為の成立要件

2 契約の成立に関する意思主義と表示主義

〔考察:事例研究①〕

法律行為の解釈

1 法律行為の解釈とは

〔考察:契約の解釈と単独行為の解釈〕

〔参考:事実問題と法律問題〕

2 法律行為の解釈の基準

〔参考:民法92条と法の適用に関する通則法3条との関係〕

〔参考:解釈規定と補充規定〕

契約の解釈

1 契約の解釈に関する意思主義と表示主義

2 契約の解釈の種類

〔考察:事例研究②〕

〔参考:例文解釈〕

問題演習

コメント

▼ 法律行為の成立

1 法律行為の成立要件

法律行為は、意思表示がなされることによって成立する。契約や合同行為が成立するためには複数人の意思表示がなされることが必要であるが、単独行為は一つの意思表示がなされることで成立する。

もっとも、法律行為のなかには、意思表示のみでは成立しないものもある。たとえば、消費貸借契約の成立には意思表示に加えて目的物の授受が必要であり(587条)、また、遺言(単独行為)は意思表示が一定の方式によってなされることを要する(967条)。

関連事項

2 契約の成立に関する意思主義と表示主義

契約の成立には当事者双方の意思表示が合致することが必要であるが、意思表示はどの程度まで合致していることが必要であるか。意思表示を主観的に解釈すると内心の意思が合致しなければ契約が成立しないことになり、意思表示を客観的に解釈すると表示が合致すれば契約が成立することになる。契約の成立に関して、内心の意思の合致まで要求する立場を意思主義と言い、表示が合致していれば足りるとする立場を表示主義と言う。

この点に関して、内心の意思が合致しなければ契約は成立しないとした判例がある(大判昭19.6.28)。しかし、内心は外部からはわかりにくいので、内心の意思が合致することまで要求してしまうと取引の安全を害する。さらに、意思と表示の不一致が存在するときは、およそ契約が成立しえないことになってしまい、錯誤などに関する規定(93条~95条)が適用される場面がなくなってしまう。こういった理由から、判例の立場(意思主義)は支持されていない。学説上は、表示が客観的に合致していれば契約が成立するというのが一致した見解である(表示主義)。

以上から、法律行為の成立要件としての意思表示は外形上存在すればよく、意思表示自体は有効である必要はない。もっとも、意思表示について無効または取消しとなる事由が存在する場合には、法律行為自体も有効性を欠くことになる。

〔考察〕事例研究①

レストランAで顧客Bが「パスタ」を注文したのに対して、Aの店員がマカロニを出したという事例について考えてみる。この場合において、Bもマカロニの意味で「パスタ」を注文(意思表示)したのであれば、主観的・客観的両面での意思表示の合致があるといえるので契約が成立することに問題はない。しかし、もしBがスパゲティの意味で「パスタ」と表示していたときはどうなるか。意思表示を主観的に解釈するならば、「パスタ」という表示に与えた主観的意味はA(マカロニ)とB(スパゲティ)とで異なるのであるから、意思表示の合致がなくて契約は不成立となる(契約の成立に関する意思主義)。これに対して、意思表示を客観的に解釈すれば、「パスタ」という表示の合致がある以上、契約は成立する(契約の成立に関する表示主義)。あとは、「パスタ」という表示行為の意味の確定(スパゲティかマカロニか)と、AまたはBいずれかの意思表示の錯誤(95条)の問題となる。

関連事項

▼ 法律行為の解釈

1 法律行為の解釈とは

法律行為の内容は、当事者が自由に決定することができる(法律行為自由の原則)。その結果、当事者間になんらかのトラブル(紛争)が生じた場合には、当事者間で定められた内容がその解決の拠りどころとなる。しかし、当事者間の取り決めの内容は、法律の条文のように厳密であったり網羅的であったりするわけではない。そこで、あいまいな表現の意味を明確にしたり、欠けている部分を補ったりする作業が必要になる。この法律行為の内容を確定する作業を法律行為の解釈と呼ぶ。なお、法律行為の解釈という場合には、契約の解釈を前提として論じるのがふつうである。

〔考察〕契約の解釈と単独行為の解釈

同じ法律行為であっても、売買のような契約と遺言のような単独行為とでは、その解釈のしかたが大きく異なる。契約の場合は、当事者間の合意という性格上、相手方の利益にも配慮した客観的な解釈が要求される。これに対して、遺言の場合は、死者の最終的な意思表示であることを考慮して、その真意を探求すべきであるとされる。もっとも、相手方のある単独行為の場合には、契約と同様、客観的な解釈をすべきであると言える。

〔参考〕事実問題と法律問題

法律行為の解釈は事実問題か法律問題か。事実を確定する作業が事実問題であり、確定した事実に法を適用する作業が法律問題である。当事者の言動や行為当時の事情を認定するのは事実問題である。しかし、法律行為の解釈には、認定された事実に解釈基準を適用して法律行為の内容を明らかにする作業も含まれる。この作業は、妥当な解決のためにどのような効果を認めるべきであるかという価値判断がからむことになるから法律問題である。法律問題である場合には、上告受理の申立てをすることができる(民事訴訟法318条)。

2 法律行為の解釈の基準

法律行為の解釈は、当事者がその法律行為によって達しようとした経済的・社会的目的に適合するようになされるべきである。法律行為の解釈にあたっては、まず第一に①当事者の企図する目的が基準となり、続けて、②慣習、③任意規定、④条理・信義則がこの順序で基準となる。

(1) 慣習

当事者の意図が不明である場合、法律行為の行われた場所や当事者の属する職業・業種に慣習が存在するときは、法律の規定に先立ってまず慣習が適用される。民法92条は、「法律行為の当事者がその慣習による意思を有している」ときに限定しているが、とくに当事者が反対の意思表示をしないかぎり、慣習にしたがう意思があるものと推定される(大判大3.10.27―補充的解釈、大判大10.6.2―狭義の契約解釈)。(このように解さなければ、92条は91条と内容的に重複してしまう。)

〔参考〕民法92条と法の適用に関する通則法3条との関係

民法92条は慣習が任意規定に優先する旨を規定しているが、法の適用に関する通則法(法適用法)3条(旧法例2条)は、「慣習は、法令の規定により認められたもの又は法令に規定されていない事項に関するものに限り、法律と同一の効力を有する」と規定しており、慣習が法令の規定に劣後すると定めているように解される。かつての通説は、この矛盾を説明するために、法適用法3条の「慣習」と民法92条の「慣習」とは異なる概念であるとして、それぞれ慣習法事実たる慣習と呼んだ。しかし、この考え方は現在では支持されていない。両規定の関係をどのように考えるべきかという問題は、法例から法適用法への全面改正後も解釈に委ねられたままである。

(2) 任意規定

「公の秩序に関しない規定」を任意規定と言う。任意規定は当事者の合理的な意思を推測して置かれているものであり、したがって、任意規定と異なる当事者の意思表示(特約)が存在する場合にはそれが優先する(91条)。また、任意規定と異なる慣習が存在する場合にも慣習が優先して適用される(92条)。このように、任意規定は、当事者の意思や慣習が不明確・不存在である場合に補充的に適用される。

〔参考〕解釈規定と補充規定

任意規定には、表示の意味が不明確である場合にその意味を確定するための規定と、当事者意思を補充するための規定とがあり、それぞれ解釈規定補充規定と呼ぶ。民法420条3項、557条などが解釈規定の例であり、573条、574条などが補充規定の例である。任意規定のほとんどは補充規定である。

(3) 条理・信義則

条理ないし信義則も、法律行為の解釈の基準とされる。当事者の合理的意思を導いたり、契約内容を妥当な内容に修正したりする際の根拠として援用される。

関連事項

▼ 契約の解釈

1 契約の解釈に関する意思主義と表示主義

契約の解釈に関する基本的な態度として、意思主義表示主義とがある。前者は当事者の内心の意思を探求するものであるのに対して、後者は表示の客観的意味を探求するものである。後者によっても、当事者が表示に対して与えた共通の意味を探求すべきであるとされているから、実質的にみて両態度の違いはそれほど大きくはない。

2 契約の解釈の種類

契約の解釈は、当事者が定めている事項についてだけではなく、当事者が定めていない事項についても行われる。当事者が定めている事項について不明確であることが問題となるときは、これを明確にする作業が必要である((1))。また、当事者が定めていない事項について問題となるときは、契約内容を補う作業が必要となる((2))。そして、当事者が定めている事項であっても、妥当な紛争解決を図るために契約内容を修正してしまうことも解釈の名のもとに行われることがある((3))。以下、順次説明する。

(1) 狭義の契約の解釈

当事者がした表示行為(言語・動作)の意味を明らかにする作業が狭義の契約の解釈である。狭義の解釈においては、まず第一に、当事者が意図した共通の意味(主観的意味)を探求するべきである。それがない場合に表示の客観的意味を探求することになる。

〔考察〕事例研究②

前述したのと同じ事例を素材にしよう(レストランAで顧客Bが「パスタ」を注文したのに対して、Aの店員がマカロニを出した)。もしBが「パスタ」という表示にマカロニの意味を与えていたときは、AとBが共通の意味を付与しているので、(社会一般にはスパゲティの意味で理解されているとしても、)「パスタ」の意味はマカロニで確定する。しかし、Bがスパゲティの意味を与えていたときは、当事者の共通の意味が確定できないので、「パスタ」の意味は社会一般と同じスパゲティで確定することになる。それでは、もしBがラザニアの意味を与えていたときはどうなるか。客観的解釈をすれぱスパゲティで意味が確定するが、両当事者が意図しない意味で契約内容を確定させることは適当でないという見解もある。

(2) 補充的解釈

当事者が表示しない事項が問題となった場合において、契約の内容を補充する作業が補充的解釈である。補充的解釈の基準として、慣習や任意規定、信義則が挙げられることが多い。しかし、近時の学説は、これらの基準に先立って、当事者であればどのような内容の合意をしたであろうかをまず探求すべきであると主張する。判例にも、黙示の意思表示(合意)を認定する方法によって同様の解釈をするものがある(最判昭30.10.4、最判平11.3.11)。

(3) 修正的解釈

契約の内容が明確であったとしても、それをそのまま紛争解決の基準として用いることが適当でない場合がある。そのような場合において妥当な結論を導くために、解釈の名のもとに契約の内容が修正されることがある。これを修正的解釈と呼ぶ。修正的解釈は、契約内容の一部無効と無効となった部分の補充的解釈との二段階の作業からなる。契約内容の一部無効については、公序良俗違反(90条)や信義則違反などが理由とされる。

〔参考〕例文解釈

市販の契約書に記載された条項が一方当事者のみに有利である場合に、その条項は単なる「例文」にすぎないとしてその効力を否定する解釈技術を例文解釈と言う。借地契約・借家契約をめぐる紛争について多くの裁判例がある。例文解釈は、契約条項につき当事者の合意の存在そのものを否定するものであるから厳密には解釈とは言えないが、実質的には契約条項の修正である。

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(掲載予定)

 正解

(掲載予定)

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