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民法上の物

このページの最終更新日 2015年12月30日

【目次】

権利の客体

〔参考:「物」の読み方〕

〔参考:権利の上に成立する物権〕

物としての要件

〔考察:特定性・単一性・独立性は物の要件か〕

有体物

〔参考:電気は物か〕

支配可能性

〔参考:最判昭61.12.16〕

非人格性

〔考察:遺体は誰の物か〕

問題演習

コメント

▼ 権利の客体

権利の客体は、権利の種類によってさまざまである。物権の客体は物、債権の客体は人の行為(給付)、人格権の客体は人格的利益、知的所有権の客体は精神的産物(無体物)というように、有形のものだけでなく、無形のものまである。

民法は、総則編において、人・法人という権利の主体に関する規定(第2章・第3章)に続けて、物に関する規定を置く(第4章)。物は物権の客体であるから、それに関する規定は物権編に置かれるべきであると考えることもできるが、民法はより一般的なルールを扱う総則編のなかにその規定を置いた。しかし、その内容は、すべての権利の客体に共通するルールを定めるものではない。(物に関する解説は物権で取り扱うべき内容であると思うが、民法典の構成に沿うという方針によりここで解説する。)

〔参考〕「物」の読み方

「物」はふつうモノと読むが、法実務上は、「者」「もの」との混同を避けるために、ブツと読むことが多い。

なお、物は物権の客体であるが、物権の客体は物(有体物)だけにかぎられない。たとえば、権利質のように権利の上に成立する物権(下記〔参考〕参照)や、区分地上権(269条の2)のように空間の上に成立する物権もある。

〔参考〕権利の上に成立する物権

民法に規定されているのは、準占有(205条)、転質権(348条)、権利質(362条1項)、地上権・永小作権上の抵当権(369条2項)、転抵当権(376条1項)。

▼ 物としての要件

物権には所有権以外にも種類があるが、所有権以外の物権は所有権の権能の一部をその内容とする。それゆえ、物権は所有権を中心に論じられることになり、ここでも所有権の客体となるに適した物の要件を検討していくことにする。

所有権(物権)の客体としての物は、どのような要件を備えていなければならないか。法の規定あるいは解釈によって物の要件とされているのは、次のとおりである。

【所有権の客体としての物の要件】

① 有体物(85条)

② 支配可能性

③ 非人格性

〔考察〕特定性・単一性・独立性は物の要件か

多くの教科書には、物の要件として上記の要件のほかに、特定性単一性独立性といった要件が挙げられている。特定性とは所有権の対象となる物が特定されていることであり、単一性・独立性とは一つの所有権の対象は単一の・独立した物であるということである。これらの要件は、物自体の客体適格性を示す要件というよりも、所有権の成立に関する要件であると考えたほうが適切であるので、物権に関するページにおいて取り扱うこととする。

▼ 有体物

民法は、「物」を有体物であると定義する(85条)。有体物とは、空間の一部を占めるもの(有形的存在)のことを言う。自然エネルギー(電気・熱・光など)や権利など有体物以外のものは、無体物と呼ばれ区別される。

比較法的には、無体物を「物」の概念の外延とする例も存在する。しかし、現行民法においては、「物」は有体物に限定されている。これは、「物」の概念に権利など無体物が含まれるとすると、「債権に対する所有権」というようなものも認められることになるが、物権と債権を峻別する建前をとる以上、そのような概念を排除するのが適当であると考えられたためである。

しかし、無体物に対する物権(排他的権利)を認めることと物権と債権を峻別することとの間には、とくに論理的な齟齬があるわけではない。民法は権利の上に成立する物権を認めているし、また、物の概念を「法律上の排他的支配の可能性」にまで拡張解釈する学説もある。

〔参考〕電気は「物」か

かつて、物ないし有体物の概念を拡張して電気などのエネルギーについても所有権の成立を認めるべきかが議論された。判例には、刑事事件に関するものではあるが、電気が窃盗罪の客体となりうることを認めたものがある(大判明36.5.21―旧刑法、現行刑法245条参照)。

▼ 支配可能性

物権は排他的権利であるから、その客体である物は人による排他的支配が可能なものでなければならない(支配可能性)。天体のように人間の支配が及ばないものや、大気、海洋のように誰でも自由に使用できるものは、支配可能性がないので物権の客体である物ではない、と説かれるのが一般である。

もっとも、海(海水と海床)については、そのままでは所有権の客体とはならないが、立法によって一定範囲を区画したうえで私人が所有することを認めるのであれば、所有権の客体となりうる(最判昭61.12.16、〔参考〕参照)。

〔参考〕最判昭61.12.16

「海は、社会通念上、海水の表面が最高高潮面に達した時の水際線をもつて陸地から区別されている。そして、海は、古来より自然の状態のままで一般公衆の共同使用に供されてきたところのいわゆる公共用物であつて、国の直接の公法的支配管理に服し、特定人による排他的支配の許されないものであるから、そのままの状態においては、所有権の客体たる土地に当たらないというべきである」

「しかし、海も、およそ人の支配の及ばない深海を除き、その性質上当然に私法上の所有権の客体となりえないというものではなく、国が行政行為などによつて一定範囲を区画し、他の海面から区別してこれに対する排他的支配を可能にした上で、その公用を廃止して私人の所有に帰属させることが不可能であるということはできず、そうするかどうかは立法政策の問題であつて、かかる措置をとつた場合の当該区画部分は所有権の客体たる土地に当たると解することができる」

▼ 非人格性

(1) 生体の場合

近代法は個人の尊厳を基本原理とするから(2条参照)、生きている人間のからだを所有権の客体とすることは許されない(非人格性)。この意味で、物は、「外界の一部」でなければならない。

もっとも、人体の一部分が分離されたときには、所有権の客体となると解されている。たとえば、毛髪を売買契約の目的とすることは有効である。しかし、臓器、血液などを取引の対象とすることは禁じられている(臓器の移植に関する法律11条、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律16条)。配偶子(卵子・精子)についても法律上の問題がある。

(2) 遺体の場合

生体と異なり、人の死体や遺骨は所有権の客体となると解されている。ただし、その所有権は埋葬管理および祭祀供養という目的によって制約されており、所有権の放棄は認められない(大判昭2.5.27)。

近年、死体からの臓器移植や研究目的の寄贈などに関して、その法的構成や、遺族ないし相続人にどのような権利があるのかが議論されている。

〔考察〕遺体は誰の物か

遺体の所有権者となるのは誰か。この点に関して、判例は、遺骨の所有権は相続人に帰属するとしていた(大判大10.7.25)。しかし、戦後、祭祀財産につき祭祀主宰者の特別承継が定められ(897条)、遺骨は祭祀主宰者に帰属するとした判例もあらわれている(最判平元.7.18)。学説上、遺体は相続人に帰属すると主張する説と喪主ないし祭祀主宰者に帰属すると主張する説とに分かれていたが、現在では後者が有力である。(そもそも、人体は生前その人の所有物ではないのであるから、その所有権の相続を考える余地はないと考えることもできる。)

▼ 問題演習

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(掲載予定)

 正解

(掲載予定)

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