ホーム > 民法総則 >  > 物の分類

物の分類

このページの最終更新日 2015年1月4日

▼ 不動産と動産

● 不動産は土地とその定着物

物は、可動性の有無によって不動産と動産に区別される。物は法律上さまざまな視点から分類されるが、不動産・動産の分類はとりわけ重要である。

(1) 不動産とは

不動産は、土地およびその定着物ていちゃくぶつであると定義される(86条1項)。

(2) 土地とは

土地には地面のほか、湖沼や河川も含まれる。海は、そのままでは土地に当たらないが、立法的措置によって土地とすることは可能である(最判昭61.12.16)。地中の岩石や土砂は、土地の構成部分であって独立の物ではない(大判大7.3.13)。また、石垣、敷石、砕石、アスファルトなどのように土地に付合してしまった物も、土地の構成部分となる。

土地は自然には連続しているが、人為的に区分されて「ひつ」という単位で登記される。人為的な区分であるから、一筆いっぴつの土地(1個の土地)を分割して複数筆の土地にしたり(分筆ぶんぴつと言う)、逆に、隣接する複数筆の土地を合わせて一筆の土地としたりする(合筆がっぴつと言う)ことも可能である。

〔考察〕一筆の土地の一部を時効取得することは可能である(大連判大13.10.7)。また、一筆の土地の一部を分筆登記前に譲渡することも可能である(大連判大13.10.7、最判昭30.6.24)

(3) 土地の定着物とは

土地の定着物とは、具体的には、建物、立木、地盤に据え付けられた機械などがこれに当たる。仮植中の草木のように一時的に土地に付着させた物は、土地の定着物ではなく、動産である(大判大10.8.10)。

〔参考〕定着物の概念はわかりにくい。「現に土地に固定されており、取引観念上土地に固定されて使用されるもの」と定義されることが多い。この定義どおりだと、土地(すくなくとも地盤)と定着物とは互いに区別されるはずである。それにもかかわらず、同時に、土地の構成部分(岩石・石垣など)も土地の定着物であると説明したりする。ことばが使われる文脈によって、不動産の範囲を決定する基準であったり、土地所有権の客体を決定する基準であったりする。

● 建物・立木・未分離果実

ある物が土地の定着物であるということは、その物が不動産であることを意味する。しかし、それが土地の所有権を構成するかどうかはまた別問題である。原則として、定着物の所有権は土地の所有権に吸収され、あるいは土地の処分の効力が及ぶ(242条・370条参照)。しかし、建物、樹木のように定着物でありながら土地とは独立に取引の対象とされる物もある。

(1) 建物

建物は、つねに土地とは別個独立の不動産として扱われる。条文上このことを明記したものはないが、不動産登記制度が土地と建物を区別して取り扱っていることから、互いに独立した取引の対象であることは明白である(なお、民法370条参照)。

建物が不動産とされるにはどの程度まで完成していればよいか。判例は、建物は登記できる状態になったときに動産から不動産になるとし、そのためには屋根と周壁を有していれば足り、床や天井はまだ備えていなくてもよいとする(大判昭10.10.1)。

(2) 樹木

樹木は、原則として、土地の処分(譲渡・抵当権設定)にしたがう。樹木は植栽されたままの状態で土地とは独立に譲渡することが可能であるが、それを第三者に対抗するには公示方法を具備する必要がある。公示方法には、集団・個々の樹木についての明認方法と樹木の集団(立木りゅうぼく)についての立木登記(立木ニ関スル法律1条)がある。立木への抵当権設定は、立木登記を受けたときは可能であるが、明認方法では技術的に不可能であるとされる。

(3) 未分離の果実

果実は、未分離の状態で土地・樹木とは独立に取引の対象とすることが可能である。その場合、明認方法が対抗要件となる。(大判大5.9.20―みかん、大判大9.5.5―桑葉、大判昭13.9.28―稲立毛)。なお、判例は、未分離の果実を動産であるとする。

● 動産は不動産以外の物

(1) 動産とは

不動産以外の物は、すべて動産である(86条2項)。土地に接着していても、定着物と言えない物は動産として扱われる。(建前や未分離果実のように、動産であるか不動産であるかが判然としないものもある。)

(2) 無記名債権

無記名債権は、動産とみなされる(86条3項)。無記名債権とは、名前の記載がない証券(紙片)があり、その証券の所持人に対して弁済するような債権を言う。たとえば、商品券、乗車券、入場券などがこれに当たる。

〔考察〕無記名債権を動産とみなすことの意味は、その流通や権利行使を簡便にするために、動産である証券の所有権者をもって債権者とみなすということである(証券の正当な所持人でない者に対する弁済は、債権の準占有者に対する弁済として保護される。478条)。通常の債権と比べると、証券の引渡しが権利譲渡の対抗要件であり(178条)、権利の即時取得(192条)も認められるので、権利の流通をより簡単・安全に行うことができる。しかし、同じく証券化された債権として有価証券があり、有価証券においては動産取引よりも取引の安全が図られている。それゆえ、無記名債権も有価証券に準じて扱うべきだとする見解も有力である。

(3) 金銭

金銭(貨幣)は、動産の一種であるが、流通手段としての機能を有することから、特別の取扱いを受ける。すなわち、金銭を占有する者は、その原因を問わず、その所有者であるとされる(最判昭39.1.24、刑事事件に関する最判昭29.11.5)。したがって、金銭の個性が問題となるような特別な場合を除いて、即時取得の規定(192条)は適用されないと解されている。

〔考察〕価値返還請求権  たとえば、AがBに預けた金銭をBが債務の履行としてCに支払ったという場合に、AはBに対して債権的な返還請求権を有するのみで、直接の取引関係がないCに対しては金銭の返還を請求することができない。これは、金銭については物権的返還請求権が認められないことの帰結である。しかし、もし目的物が金銭ではなく金銭以外の動産であったならば、(即時取得が成立しないかぎりにおいて)Cに対して物権的返還請求権を行使できていたのであるから、金銭の場合にCに対する返還請求をまったく認めないとする結論は、C保護に偏りすぎていて不当であると考えることもできる。そこで、金銭の場合にも、金銭以外の動産と同様に、Cに対する返還請求を認めるために、価値の返還請求権を提唱する学説がある。

● 不動産と動産の法的取扱いの違い

近代法はすべての財貨を商品として扱っており、不動産についても例外ではない。しかし、不動産と動産の間には自然的性質や経済的価値において基本的な差異がある。そのため、両者の法的な取扱いについても次のように重要な違いが生ずる。

(1) 行為能力・権限の違い

不動産取引につき、被保佐人の行為能力の制限(13条1項3号)や後見監督人の同意権(864条)がある。

(2) 公示方法

不動産は登記(177条)、動産は引渡し(178条)である。ただし、動産であっても、自動車など大型の動産には登録・登記制度(道路運送車両法5条1項)があり、また、法人の動産には動産譲渡登記制度(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律3条1項)があって、民法の特例として対抗要件が認められている。不動産についても、引渡しが対抗要件となる場合がある(借地借家法31条1項)。

〔解説〕公示方法  取引の安全のためには、権利の変動を外部から認識できるようにしなければならない。そのための手段が公示方法である。

(3) 公信力の有無

動産引渡しには公信力(公示に対する信頼の保護)がある(192条、即時取得制度)。これに対して、不動産の登記には公信力がない。もっとも、実際には94条2項類推適用によって不実登記の信頼保護が図られている。

(4) 無主物の取扱い(239条)

動産は所有の意思をもって占有した者に帰属し(1項)、不動産は国庫に帰属する(2項)。

(5) 成立する権利の違い

抵当権や用益物権は、不動産の上にしか成立しない。

(6) その他の違い

以上に述べた民法その他の実体法上の取扱いの違いのほか、手続法・税法上の取扱いの違いがある。たとえば、裁判管轄(民事訴訟法5条12号)、強制執行・担保権実行、損益通算など。

▼ 主物と従物

● 主物と従物の関係

ある物の継続的使用に役立たせるために他の物をそれに附属させたとき、前者を主物と言い、後者を従物と言う(87条1項)。たとえば、家屋を日常的に使用できるようにするために畳を敷いて建具(障子・ふすま等)を取り付けたときに、家屋と畳建具は主物と従物の関係にある。

「従物は、主物の処分に従う」(同条2項)。二つの物の間に経済的な主従関係が存在するときに、当事者の通常の意思を推測して従物を主物の法律的運命に従わせることとした規定であり、任意規定である。したがって、たとえば、家屋(主物)を売却した場合には、当事者が従物を処分の対象から外す旨の意思表示をしないかぎり、家屋の処分(所有権移転)の効力は従物である畳建具にも及ぶことになる。なお、従物のみの処分も可能である。

〔考察〕民法370条との関係  87条と似たような規定に370条がある。370条は、抵当権の効力は目的不動産に付加して一体となっている物に及ぶと規定しているが、付加一体物には従物も含まれると解するのが通説である。抵当権設定に関しては87条ではなく、もっぱら370条が適用されることになる。370条を適用するときには、抵当権設定後に附属させた物であっても抵当権の効力が及ぶ。このような理解に対して、370条の付加一体物は従物を含まないと解する見解もある。この論点は、抵当権に関する箇所で扱われる。

〔考察〕従たる権利  権利であっても、従物に準じた扱いをするのが適当なものもある(87条の類推適用)。借地上の建物の売却は、借地権の譲渡をともなうと考えるべきである(最判昭47.3.9)。また、借地上の建物に抵当権が設定されたとき、抵当権は敷地の賃借権に及ぶ(最判昭40.5.4)。

● 従物の要件

ある物が従物であるとされるための要件は次のとおり(87条1項)。

(1) 独立性

従物は、主物とは独立の物(所有権の客体)でなければならない。独立の物かどうかは、単にその物が取り外し可能かどうかだけでなく、取引上の効用も考え合わせて判断する必要がある(大判昭5.12.18)。たとえば、自転車のサドルは、取り外し可能であるが、独立の物であるとは言えない(自転車の構成部分である)。

〔参考〕建物に備え付けられた畳や障子のように、取り外しが自由であるものは独立した物であると言える。しかし、取り外し可能な建具であっても、雨戸や入口の扉のように建物の内外を遮断する効用を果たすものは、壁と同じように建物の一部を構成し、独立の物ではない(前掲大判昭5.12.18)。

(2) 主物の常用に供されること

社会観念上、主物の経済的効用を継続的に助けるものであることが必要である。たとえば、営業目的の建物における営業用器具設備は、建物の従物となりうる。

(3) 場所的近接性

従物は、必ずしも主物に接着している必要はなく、主物の常用に供すると言えるような場所的関係にあればよい。たとえば、家屋(母屋)と物置。

〔参考〕ガソリンスタンド店舗用建物に地下タンクや洗車機などの諸設備が附属して使用されている場合、これらの諸設備は建物の従物である(最判平2.4.19)。

(4) 主物と同一の所有者に帰属すること

主物と従物とがともに同一の所有者に帰属することが必要であると解されている。これは、87条の法文や当事者の意思の推測という趣旨に適合的な解釈である。学説には、87条の実質的根拠を当事者の意思を離れた社会経済上の必要に求める立場から、従物が他人所有の場合であっても本条の適用を認める見解も有力である。(従物に関しては他人物売買となり、取引の相手方は従物の所有者の追認を得るか、または即時取得の要件を満たすことによって従物の所有権を取得する。)

▼ 元物と果実

● 天然果実と法定果実

物が収益を生ずるとき、元の物を元物げんぶつと言い、収益である物を果実と言う。果実には、天然果実と法定果実の2種類がある。

(1) 天然果実

天然果実とは、元物から産出される物であって、元物の経済的利用法にしたがって収取することができる物を言う(88条1項)。農産物、鉱物、計画的に伐採される材木などがこれにあたる。(台風によって倒れた樹木などは、元物の経済的用法にしたがって収取した物ではないので果実ではない。)

(2) 法定果実

法定果実とは、元物を他人に使用させたときにその対価として収受する金銭その他の物を言う(88条2項)。たとえば、家賃・地代(不動産使用の対価)、レンタル料(動産使用の対価)、利子(元本使用の対価)がこれに当たる。

● 果実の帰属

元物の権利者が交代するとき、果実を収取することができるのは誰か。

(1) 天然果実の帰属

天然果実は、元物から分離する時に収取する権利を有する者に帰属する(89条1項)。収取権者は、元物の所有者または元物所有者から収取権を与えられた者である(所有権は果実収取権を含む)。たとえば、妊娠した犬を買い取った後にその親犬から子犬が生まれた場合、子犬の所有権は前主である売主にではなく現在の所有者である買主に帰属する。

(2) 法定果実の帰属

法定果実は、天然果実と異なり、分割することができる。したがって、前後の収取権者(所有者)が各々の収取権の存続期間に応じて日割り計算によって天然果実を取得する(89条2項)。たとえば、賃貸中のアパートが売買された場合において、売買の当事者間で賃料(法定果実)の帰属について取り決めがなかったときには、賃料は売主・買主それぞれの果実収取権者(所有者)であった日数によって分けられる。(もっとも、賃料の請求権は一方のみに帰属する。)

▼ その他の物の分類

物は、民法が規定する分類以外にも、さまざまな観点から分類される。

(1) 可分物・不可分物

物の性質・価値を損なわずに分割できるものを可分物と言い、そうでないものを不可分物と言う。たとえば、金銭や土地は可分物であり、動物や自動車は不可分物である。

共有物の分割や多数当事者の債権関係など、一つの物に対して複数の者が権利を有する関係で意味を持つ区別である。

(2) 代替物・不代替物

取引上物の個性が重要でなく、同種の他の物をもって代えることができるものを代替物と言い、物の個性が重要視されて他の物で代えられないものを不代替物と言う。たとえば、金銭や大量生産される商品は代替物であり、不動産や芸術品は不代替物である。

区別の実益は、消費貸借(587条)・消費寄託(666条)は、代替物を目的物とする点にある。

(3) 特定物・不特定物

当事者が取引の際に物の個性を重要視したときのその物を特定物と言い、そうでない物を不特定物と言う。たとえば、当事者が取引の際に「この車」と指示したときは特定物であるが、「車10台」というときは不特定物である。代替物・不代替物の区別と似ているが、代替物・不代替物の区別は物の性質に着目した客観的区別であるのに対し、特定物・不特定物は当事者の意思にもとづく主観的区別である点で異なる。

特定物の給付を目的とする債権と不特定物の給付を目的とする債権では取り扱いが異なるので、この区別は重要である。

問題演習(国家試験過去問題)

国家試験過去問題のなかから理解度チェックに役立つ良問を掲載しています。

 正誤問題

(司法平18-1-1 → 平成18年司法試験民事系第1問選択肢1)

(1) 判例によれば、建物は、屋根瓦を葺き荒壁を塗り床及び天井を張る等して初めて独立した不動産となる。(司法平19-7-1)

(2) Aが、Cに賃料毎月月末支払の約定で賃貸している家屋を、月の途中でBに贈与した場合、AB間に特段の合意がなければ、当該月の賃料は日割りによってA及びBに分配される。(司法平21-3-5)

 正解

(1) 誤  (2) 正

民法総則のカテゴリー

法人法律行為意思表示代理無効と取消し条件と期限期間時効

「物」コンテンツ一覧

民法上の物/物の分類

コメント

 ご意見・ご感想は、掲示板をご利用ください。

サイト内検索

条文・判例リンク

スポンサードリンク

更新情報(Twitter)